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78 ダンジョンアタックには準備が必要

 時は少し遡り、毎度おなじみいつもの農村。


 帝都から半月掛けて歩いてきた。

 ただいま夏真っ盛り。

 真っ青に澄んだ空とモックモクの入道雲(こちらでは山雲と言うらしい)のコントラストがとても美しく、めちゃくちゃ暑いし眩しい。

 多分8月くらいかな?日本みたいにじっとり蒸し暑くないだけマシなんだけど、こまめに水分補給しないと乾涸びそうになる。


 ダンジョンアタックを決めたのは良いけれど、食事に不安が残るとの事で、先に食材を確保しにやってきた。

 帝都で紙やインク、小麦粉や調味料にスパイスなんかは充分に購入しているが、野菜や肉、乳製品はこちら(農村)の方が安くて新鮮だ。


 目の前には目にも鮮やかな緑の畑が広がっている。

 水分を多く含んだスイカとかトマトとかキュウリとか、艶々と輝いていて、どれもめちゃくちゃ美味そうだ。

 【アイテムボックス】に入れていれば腐る事も無いから安心していっぱい買える。


 丁度手入れしていたおじさんのご厚意でトマトを味見させてもらった。


「(甘味はちょっと少ないけど)ジューシーで美味い!」

「だろう?」


 思わず漏れた感想にニッカリと笑って追加を渡してくれた。

 塩をパラリと振り掛けて丸齧りすると、耳の後ろがキュンってなる。

 時折突き抜ける様な酸味を持つやつに出会ってしまうのも楽しみの内だ。


 「ほらこっちも食べてご覧」と渡されたきゅうりも、記憶にある物よりも少し厚くて固い皮をバリッと歯で破ると青い匂いと果肉が姿を現す。

 多めに掛けた塩が咀嚼と共に程よくなり、ごくりと飲み下せばもう次の一口が欲しくなる。


(コレは一本漬けにしたら絶対美味いヤツ…っ!白出汁!俺に白出汁とzipなビニール袋をくれ!)


 きゅうり片手に悶絶している俺を、ヤンスさんが変なモノを見る目で見ている。

 美味しいんだから仕方なくない?

 スイカも少し青臭いけれど、寧ろそれが良いってくらいに味がぎゅっと詰まっていて、行儀悪くも腕に垂れた汁まで舐め取ってしまう程だ。


 きゅうりもトマトもスイカもナスもアスパラも木箱にたっぷりと詰めた物を何箱も購入したら、皆とても良い笑顔で対応してくれた。

 

「アンタ達、こんな辺鄙なとこによく何度も来るねー」


 滅多に外の人間はやって来ない辺鄙な農村だ。

 それが短いスパンで何度もやってくるし、少なくないお金も落としていくとあれば、覚えられていてもおかしくはない。


「ここの村の食べ物が美味しいのがいけないんですよー?チーズとか他の所では買えない身体にされてしまいましたからね?責任取って沢山売ってください」

「まったアンタは口が良く回ること!」


 キャタキャタ笑いながらおばちゃん達がアレも持っていけ、コレも持っていけと色んなものを渡してくれる。

 人によっては(あからさまな)商品のアピールもあったりして、俺たちは笑いながら色々頂いたり、追加で買わせてもらったりした。


 村長の家に挨拶に向かうと、穴熊亭での話がここまで届いていて、どうかこの村にも風呂を作ってくれないか?と依頼されてしまった。

 ヤンスさんに相談したところ、各家に作るのは時間も魔力も掛かって大変だし、代表者の家にっていうのも変な力関係が生まれそうでよろしくないとの事なので、公衆浴場を作る事に。


 それは村人達も考えていたらしく、村の外れに大きく切り開かれた場所があり、既に小さな掘立小屋が2つもあった。

 コレ幸いと、男湯女湯の2つに分けて、大きめの五右衛門風呂を作った。

 小屋の外、釜の下に火がきてお湯を沸かす事が出来るようにして、湯船の水を捨てるための排水溝を作る。

 側溝くらいの溝を川に流れ出るように引いて、子供が落ちたりしないように木の板で蓋を作ってもらう。


 俺は学習していた。

 ちゃんと鍵とすのこは自分達で作ってね?って先制攻撃しておいたのだ。

 タオルや石鹸、洗面器や風呂椅子などあると便利な物は先に伝えて量産してもらう。


 利用する人数が多いと順番待ちしてもらう事になるから、その為の小屋もあると良いなぁ。

 あ、待ってる間、足湯があると良いかもね。

 待合小屋の予定地に、足湯用の浅い堀の様な湯船を作った。

 お湯はセルフでお願いします。


 ヤンスさんはこれからダンジョンアタックで、行程が遅れるのは困ると作るのを渋り、それでもなんとか、と頼み込む村長に高額な報酬をふっかけまくった。

 最終的に大銀貨九枚と小銀貨八枚という、とんでもない価格で引き受けていたよ。

 じゃらりと重たい革袋を見て、にやにやと笑み崩れていた事をここに記しておく。

 それ、俺のお金ではない?あ、パーティのお金ですか。

 ハイ。


 俺たちがこの村に来た時は、如何なる場合でも無料で使用出来る様に交渉し、一晩村長宅で過ごして、笑顔で見送られながら農村を後にした。


 午前中にはダンジョンに着く。

 手早く、しかし確実に装備のチェックを終えたら早速ダンジョンアタックだ。

 待ってろよ、ダンジョン!

 いつもブックマーク、いいね、評価ありがとうございます!

 第二章本格始動となります。

 ダンジョン編と言いつつダンジョンに行き着けませんでした……申し訳ありません。

 キリトの行動範囲にお風呂は必須なので、どうしても行く先々でお風呂を作ることになってしまいます 笑

 来週こそはダンジョン編スタートとなります。

 よろしくお願いします。

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