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68 プリンを作るぞ。

 ガチでプリンしか作りません。

 飛ばしてもらってなんら問題の無い回です。

 無駄に長めです。


「で、キリトそろそろ“ぷりん”作れそうか?」

「へ?」


 良い笑顔で振り返ったオーランドの言葉に唖然とする。

 今日は妙に甲斐甲斐しくて、優しいなぁと思っていたら、そうか、下心か。

 顔に「早く食べたい」と書いてある食事前の犬……じゃなかった、オーランドにキッチンまで抱えて運ばれた。

 俺を椅子に座らせると、必要な道具を書き出させて、道具や材料を準備し始めた。


「ボウルと泡立て器に、小鍋とヘラ、蓋付き耐熱性の陶器の小さな入れ物……」

「陶器なんてコレしかありませんよぅ」


 オーランドは置いてある場所がわからないのでほとんどはデイジーが用意しているが、やっぱり高価な陶器はそんなに無くて、縁の欠けた大きなボウルを悲しそうに見せてきた。

 コレで作って小皿に取り分けても良いかもしれないが、均等に火が入るか自信がない。

 そう告げると、あっけらかんとした答えが返ってきた。


「よし、買ってくるか」

「今から?」


 グイッと腕まくりをして舌舐めずりすると、我らのリーダー様は財布がわりの麻袋を掴んで、あっという間に出ていってしまった。

 あまりの素早さにデイジーと二人で呆然と見送った。


 とりあえず先にメープルシロップを作ってしまおうということになり、小鍋にたっぷりゾンマーホルンの樹液を入れて火にかける。

 味見で少し舐めてみたけれど、サラリとしてうっすら甘く、風邪の時に飲みたくなる様な味だった。


「甘いですー!幸せの味ですー!」


 一緒に味見したデイジーはスプーンを咥えて手をブンブン振って喜んでいた。

 この味でここまで喜ぶとしたら、プリンはもしかしたら麻薬みたいになってしまうのでは?と少し心配になる。


 強火にかけて沸騰直前までいったら一度火から下ろして、薪を数本減らして火の調節をする。

 弱火になったら再度火にかけてくつくつと根気強く水分を蒸発させる。

 水嵩が半分くらいに減るととろみが出てき始めた。

 焦がさない様に常にかき混ぜる。

 やばい、腕がしんどい。

 デイジーと交代しながらかき混ぜ続け、五分の一くらいになったところでとろりとした琥珀色の見覚えのある状態になった。

 スプーンで掬って舐めると独特の風味と濃い甘みがすぅっと抜けていく。

 甘さが強いわりに後味がさっぱりしていてとても美味い。


「〜〜〜〜っ!!!!!」


 味見したデイジーが言葉にならないくらいに悶えているので成功と言って良いだろう。

 これだけ時間と体力を使って小瓶一個分くらいしか出来ていなくてこの後の作業を思うと気が重くなる。


(子供達の分も考えるとこの十倍は要るよなー……パッとおとぎ話の魔法みたいに出せないものかね。……待てよ?魔法?)


 ふと、魔法で水分を抜く事はできないか、と思い付いた。

 今出来ている分は熱いうちに小瓶に移して、ザッと洗った小鍋に新しい樹液を注ぐ。


(水分を少しずつ抜いていくイメージで……)


 鍋に手をかざして蒸発をイメージしながら水分を抜いていく。

 あっという間に嵩が減った樹液は黄金色のとろりとしたシロップになった。

 味は先程作った物よりも雑味の無い真っ直ぐな味で、ちょっと思ってたものとは違ったけどこれはこれでめちゃくちゃ美味い。

 入口から覗いていた小さな子供達にも味見をさせた。

 小鳥の雛の様に口を開けて待っている姿に負けてひと匙ずつ入れていった。

 何故か最後尾に同じ様に口を開けて待つエレオノーレさんが居た。


 もっともっとと騒ぐエレオノーレさんと子供達を締め出して、大量の樹液をサクサク魔法で水分を飛ばしてシロップを量産する。

 慣れてくるとあっという間だ。


 さて、材料も揃った事だし、ちゃっちゃと作ろう。

 沢山もらった卵と牛乳を取り出したらまずは卵割りからだ。

 普段はマグカップに卵を一個だけど、大人数分を作らなくてはならないので大きなボウルに十個ずつ割っていく。

 デイジーはパカパカ割っていけるけど、俺は二回に一回はグシャってなってしまうので別の深皿に必ず入れて、殻を取り除いてからボウルに入れる。


 覗きにきたジャックが見るに見かねてパカパカ割ってくれた。

 流石お料理上手熊さん。

 大きな手で器用に割っている。

 合計三十個の卵をとにかく丁寧にかき混ぜて、それぞれ大匙四杯ずつメープルシロップを入れていく。

 マグカップなら五グラムのスティックシュガー三本分だ。

 綺麗に混ざったら、あとは大体同じくらいの量の牛乳を入れてしっかり混ぜてレンジでチンなんだが、そんな便利なものはないので蒸し器の準備をお願いする。


 タイミングよくオーランドが大量の陶器のカップを買って帰ってきたので、皿洗いの魔法で綺麗にして、プリン液を流し込んでいく。

 折角なので茶漉しを使って漉してみた。

 面倒だけどこれをすると滑らかになると料理上手な妹が言っていた。


 出来たものを四つだけ蒸し器に並べて蒸していく。

 四角い蒸篭の様な、年季の入った木の蒸し器だった。

 電子レンジは二百ワットで五分ぐらいなのだけど、蒸し器だとどんくらいかわからないのでこまめに確認する。

 大体十分くらいで見た目は完璧に仕上がった。

 味見の為にサクッと魔法で冷やしていざ実食。

 レンジで作った時よりも滑らかでプルッとしていて美味い。

 多分素材が良いのもあると思う。


「!」

「なんて美味いんだ!甘くて、ぷるっとしてすぐ無くなったぞ?!うおおお止まんねーーーっ!」

「おいしいですーーーっ!あまーい!しあわせーーーーっ!」


 一口食べるとジャックは目を丸くしてプリンを見つめて、オーランドは雄叫びを上げつつあっという間に掻き込んでいく。

 デイジーは一口食べる毎に感想を叫びながらチビチビと食べ進めている。


 試食が終わったので子供達の分も含め、大量のプリンを作って配ったら、大盛況だった。

 ギラッギラに光る目で、作り置きをオーランドとエレオノーレさん、デイジーから強請(ねだ)られて、子供達が食べ終わった容器でもう一回転作ることになったのは、余談である。

 電子レンジで作りたてのあったかいプリンも乙です。

 最近は絞るだけの生クリームも売っているので、上に生クリーム絞って食べてもありです。


 カラメルはちょっとのお水と五グラムのお砂糖をレンジでチンして卵液を入れればオッケーですよ。

 ぜひお試しください⭐︎

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― 新着の感想 ―
こう言うエピソードも好き
[一言] 強請られてのところ前回のおばさんはゆすられてでもいいですが、今回はあいてがかわいいのでねだられてのルビで違いを表現するのもありかも?
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