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57 帝都 エーアストベルク

 なんだかんだあったけれど結果だけ見ると、盗賊一組と大ブレーダーマウスが一度出ただけで、半月掛けての道程はほぼ問題無く、帝都に到着した。

 “帝都”と言うだけあって見上げる様な高い壁がずーっと続いていて、視界を遮っている。

 二日前からこの壁自体は見えていたのに、進めど、進めど、辿り着かなくて俺は若干心が折れていた。

 到着した感動よりもやっと着いた、という疲労感の方が大きい。

 武骨なイメージの壁だったが、近くで見ると細やかな蔦模様が入っていたり、実際に蔦が這っていたりと、とても美しい。

 ちょっとスケッチさせてほしいくらいだ。


 門番に、身分証明書と、目的を提示する為一度馬車から全員降りる。

 簡単なボディチェックを受けて、ここまで連れてきた盗賊達を引き渡し、討伐報酬を貰う。

 お金の入った革袋が一つ渡され、全員のハンターカードに魔石と思われる青く光る石でできたハンコみたいな物で押印された。

 ハンターカードには薄く光る青いマークが浮き出て、すぅっと消えていく。


「何だ坊主知らないのか?これは俺達兵士が盗賊を受け取った証でな、ハンターギルドに行って見せると、俺達からの報告と照らし合わせて評価ポイントとして登録されるらしいぜ。但し、反映には少々お時間をいただきますってな」


 俺が興味津々に見ていたのに気付いた壮年の兵士が、笑いながら教えてくれた。

 何故だか頭を撫でられるオプション付きである。

 納得いかない。


 そうして、帝都に入ろうとしたら若い兵士から俺だけ声を掛けられた。

 壮年の兵士と話していて、一番後ろになってしまったので、皆は一足先に帝都に入っていってしまった。

 振り返ると、手に縄をかけられた盗賊達が一列に並んでいた。


「黒髪の少年、ありがとう。人の優しさに何年振りかに触れた。これからきちんと己の罪を償ってくる」


 頭目(仮)がそう言って頭を下げると、他の男達も頭を下げた。

 全く何の事だかわからない。

 驚いている俺に、声を掛けてきた若い兵士が教えてくれる。


「君、アイツ等に生命維持以外に食事や水をあげてたんだろ?それに対して感謝してるみたいだよ。『お礼を一言言いたい』って皆して動かないんだぜ?」

「……!」


 驚いて言葉にならないとはこの事だ。

 やっすいチーズとピクルスだけでとんでもない感謝度合いだ。

 彼等は俺の言葉を待たずにサッサと歩いて行ってしまった。


 そんな彼等の背中を見届けてから、街に入る。

 しっかりした石畳とモノトーンに統一された街並みが飛び込んできた。

 黒い木枠と石を積んで漆喰で固めた質実剛健そのものな家屋が並んでいる。

 黒い鉄っぽい柵があったり、看板もお洒落なデザインだったりと城下町然としている。


「おおおおおっ!」


 言葉にできない感動に思わず声が出る。

 周りの人達の生あったかい視線は気にしないことにする。

 先に入っていたオーランド達や商会員の人達には笑われていた。

 ヤンスさんだけは何かを疑う様にこちらをじっとり睨んでいたけど、スルーだ。


「ようこそ、エーアストベルクへ」


 街側に立っていた門番が歓迎してくれた。

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