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出来ることと出来ないこと


 晩飯である。


 一応不安だったので食材を一通り鑑定してみたが、全て無毒であった。

 一安心だ。

 オーランドが作っていたスープを改良して、大きなクマさんことジャックが腕によりをかけて作ってくれたキノコ汁と野草サラダと焼きキノコだ。


 塩気の強い干し肉とナメコみたいなトロミのあるキノコのおかげで、とろっと熱々。

 このキノコ汁は出汁が滲み出ていてマジでご馳走だった。

 噛めば噛む程、こりこり、じゅわ〜っと旨みが溢れ出て、夢中でかき込んでしまった。

 野草サラダはジャックオリジナルのハーブドレッシングで苦味すらアクセントになる美味しさだ。

 シャキシャキした歯応えもふわりと鼻に抜けるハーブの香りも絶品だった。


「すごい!ジャックすごいうまい!うまい!語彙力喪失する美味さ!」

「そう言えばキリトは無詠唱で魔法使ってたよな?【鑑定】だけじゃなく普通のや「なぁんですってぇ?!!!」


 ジャックの料理を褒めつつ、焼きキノコをハグハグ夢中でかじっていると、オーランドが変なことを言ったらしい。

 言い終わる前にすごい表情のエレオノーレさんが叫んだ。

 ぐるり!と首だけこちらを向いて居るからちょっぴりホラーだ。

 焼きキノコが喉に詰まって死んだらエレオノーレさんの所為だからな。

 ごっくん。

 詰まりかけた少し大きめなカケラを頑張って飲み込んで、説明する。

 元々魔法っていうのは作り話でしか知らない事や、イメージが大切なこと、イメージ次第では無詠唱でいけること、ステータス表示はなんでかできないこと等思いつくままに話していく。


「たしかに、たーしーかーに!イメージは大切よ?でもイメージするって言ってもそう簡単にはいかないでしょ?金属を燃やし尽くす炎とか、空中に浮く水とか。それに無詠唱っていうのは何十年も使い続けた魔法を一つか二つ、よっぽどのベテランの魔法使いが行うものなのよ」


 木製のスプーンをピコピコと振りながら怒った口調で説明してくれた。

 目が据わっててとても怖い。

 美人が睨むと迫力がハンパない。

 とはいえ、そんなこと言われても出来るものは出来るんだから仕方ない。

 だって魔法だもの。

 魔力さえあれば大抵はどんなことだってできちゃうでしょ?

 浪漫だよな。


「あと、ステータスは魔法ではないの。だからじゃないかしら?魔法が使えないオーランドでも唱えたら使えるもの」

「そうなんですね」


 なるほど、魔法ではないから発動ワードがいるのか。

 その辺はシステムくさいなぁ……。

 でもたしかにステータス見れる人と見れない人がいると困っちゃうだろうしね。


「それよりあなたはどうやってその魔法を知ったの?今まで魔法のない世界にいたんでしょ?」


 グイッと身を乗り出してくるエレオノーレさん。

 前傾姿勢でまさかのグラビアポーズだ。

 たゆんっと夢の果実が……。

 うおおおぉぉっ!

 た、谷間が!

 大渓谷が!

 どうしても視線が吸い寄せられる。

 が、近くには大きなクマのジャックさん(旦那さん)がいる。

 くしゃっとされない様に、頑張って顔ごと視線を逸らす。

 顔が熱い!

 それでもちろりと目がそちらを向かうとするのは男の性だ。


「エリー、はしたない」

「あら、ごめんなさいね」


 ジャックさんに静かな声で嗜められて、エレオノーレさんがホホホ、と誤魔化す様に笑う。


 そこで改めてどうやってこちらに来たのかを詳しく話した。

 神様候補者達のおふざけに巻き込まれて死んだ。

 転移させて復活させたげる。

 ちょっとオマケで色々あげるね。

 地上に降り立つ。

 【マナーブック】で色々お勉強。

 などなど。


 少し長くなった話を聞き終わったみんなは、深い深いため息をついた。


「お前、ほんっと運が無いのな?」

「うぅ…っ、生き返れて良かったねぇ」


 肩を組んで頭を撫でてくるオーランド。

 おい、子供扱いするんじゃない。

 エレオノーレさんも涙目だ。

 ハンカチ片手にぐすぐすいっている。

 ジャックはエレオノーレさんの肩を抱き寄せつつ、気の毒そうにこちらを見ている。

 唯一面白そうにこちらを見ているのがヤンスさんだ。


「まあ、これからは好きに生きたら良いさ。だから今は、だーれも持ってない【鑑定】を持ってんだな」

「はい、そうですね。神様候補からの祝福で頂きました」

「じゃあ悪いけどコレの毛皮の質とか見れるか?お貴族様のコートに使うんだけどいけると思う?」

「わかりました」


 コレ、と差し出して来た緑色の毛皮。

 グリーンフライフォックスの毛皮だ。

 うお、頭落としてあるとはいえまんまの姿でちょっとグロい……。


 グリーンフライフォックス(一歳)の毛皮(傷み有り)

  柔らかく保温性に優れた毛皮。

  魔力を帯びている為、魔術具作成の媒介に最

  適。

  ただし、剥ぎ取りが雑な為毛が途中で切れて

  いたり、皮に穴がある箇所がある。

  また、小柄な個体の為、コート等を作るのに

  は向かない。


「ーーとの事です」

「だあああっ!だめかー!」

「だから言ったじゃないギルドで解体してもらおうって」

「解体料金十五匹分って地味にいてーんだよ!パーティの資金やりくりしてる身になれってんだ!」


 頭を抱えるヤンスさん。

 パーティのお財布担当らしい。

 確かによく見ると小さな穴がぷすぷす空いていた。

 慣れてないとこうなるんだなぁ……。

 あれ?なんだっけ?

 どっかの漫画で見た気がする……。

 六十三度のお湯掛けてから剥ぐんだっけ?

 数字が中途半端すぎて覚えてた。

 タイトルは覚えてないけどな!

 たしかジビエが注目され始めた頃に出た漫画だったはず。


「すみません、小さい個体一匹お借りしても良いですか?上手くいかなかったら買い取りますので……」

「ん?なんだ?皮剥ぎ出来るのか?」

「いえ、漫画で……あちらの本で読んだことがあって……」


 モノは試しとばかりに一匹借りる。

 オーランドが一番小さい個体を選んでみんなに目で確認しつつ俺に渡してくれた。

 お湯を沢山使うので、周りがびちゃびちゃにならない様に少し離れた場所で解体布と呼ばれる布を借りて敷いた。

 耐水加工のされてる革?みたいで、触り心地がペタッとしたビニールっぽい何かだ。

 そこにグリーンフライフォックスを横たえて、手を合わせる。


(あなたの命を無駄にはしません。成仏して下さい。ナンマイダー!)


 ビビリと言わないで。

 獣の怨みは恐ろしいって聞くし!

 お祈りの一つや二つしても構わないでしょ!(適当だけど!)


 さて、気を取り直して、魔法で水球(お湯:六十三度)をイメージする。

 多分いっぱい使うから両手で丸を作ったくらいの大きさにして、そこから蛇口で出てくるみたいに使いたいし、冷めても困るから魔法瓶の要領で真空の層で包む。

 一部に穴を開けて、そこからお湯が出てくるイメージ。


 むむむむむむ……


 するりと魔力が減る。

 目を開けると想像した通りの水球が出来ていた。

 お湯が出てくる箇所はなんとなくわかる。

 ふおぉ、魔法ってしゅごい。


 奥でエレオノーレさんが解せないとか、おかしいとか散々に喚いてるけどスルーだ。

 話し始めたら終わらない。


 さて、では解体だ。

 まずは首から肛門にかけて切れ目を入れて剥いでいくんだったよな。(うろ覚え知識)

 ムン、と気合いを入れたものの、ナイフを刺す事に躊躇して行ったり来たり……。


「……もしかして剥ぎ方がわからない、とか?」

「う……ハイ……」


 オーランドが頭を掻きながら呆れた様に聞いてきた。

 あとそれだけじゃなくてナイフを突き立てる勇気と根性がありませんでした。

 ハイ。

 お願い、お前本当に大丈夫か?みたいな目で見ないで……。


「実はこのお湯掛けて剥げば綺麗に剥げるはずなんですけど、血とかそういうのがどうにも苦手で……」

「おれ、やる」


 ジャックさんが腕まくりしながらこちらに来た。

 大きな身体を小さく丸めて繊細で素早い動きで皮を切っていく。


「今から、剥ぐ、が……?」


 つぶらな瞳が俺にここからどうする?と聞いている。

 俺は慎重に操作してお湯を切れ目から肉と皮の間目掛けてゆっくりと掛けていく。

 これでいけるはずなのだけど……。

 コクリと頷いて合図を送る。


 スルスルスル


「「「「おお……!」」」」


 びっくりするくらいスムーズに剥げている。

 みかんの皮みたいな感じ。

 で、この後皮に付いた脂肪とかをこそげ取らないと腐ったりするんだったよな。

 でもそれが難しいって書いてあったはず。

 なんかこう、便利な方法ないかな……。


 ウンウン唸りつつ悩んでいる俺の横で悲鳴が上がった。

 半分程剥いだあたりで、毛が抜けてしまったらしい。

 ボソボソに抜けてハゲ散らかしている。

 お湯を掛けるやり方は毛皮ではなく革を剥ぐ為の方法だったのだろうか?


「すすすすすすみ、すみませーーーん!」

「まぁ、うまくいったら、程度のつもりだったから……。……うん。気にしないでくれ」


 がっくりと肩を落としたオーランドが俺の肩を叩く。

 あわわわわっこれはヤバい!

 ヤンスさんとエレオノーレさんの視線が恐ろしい事になっている!

 とりあえずまだ無事な半身分を残してズタボロな毛皮を途中でカットした。

 値段を聞いて銀貨を一枚お支払いする。

 

 ちなみにグリーンフライフォックスのお肉は毒があるらしく、食べられないので魔石だけを抜いて、穴を掘って埋めてしまうのだそうだ。

 骨も素材にならないことはないけど嵩張るので今回は見送るそう。

 魔石は魔石入れって呼ばれる小さな革袋に纏めていた。

 魔力を遮断する革を使用しているので、魔力漏れを防ぐのだとか。


 それより今は毛皮を綺麗に剥ぎ取る方法だ。

 うーん……表面の毛皮だけ【アイテムボックス】に入れるとか?

 脂肪部分は除いて、綺麗に剥ぎ取りたい。

 そんな事出来るかな?

 こう、断面図をイメージする。

 毛があって、それが生えてる皮があって、その下に脂肪の層がある。

 あ、皮よりも肉だけを【アイテムボックス】に放り入れた方が良い気がする。


 毛皮と皮下脂肪の境目ををシュッとカットして肉を丸ごと【アイテムボックス】に刈り取る感じで……。


 目の前の半分剥いだグリーンフライフォックスを睨みつつえいっ!とやってみたらなんと言う事でしょう。

 綺麗に毛皮だけになったではありませんかーー♪(某ビフォーアフター風)

 【アイテムボックス】から取り出そうと思えばグリーンフライフォックスの死体がある。

 そこから表面にある脂肪だけ取り出すとぐずぐずペラペラな脂肪が目の前にぺとぺと積み上がった。

 コレはこれで獣脂とかで灯りとかに使えるんじゃないかな?


「出来た!」

「ちょっ!今……い、ま……何……っ!?」


 お湯を使って皮を剥ぐ方法は毛を毟って革を剥ぐやり方だったので、修正しました。

 大筋は変わりませんが、なろうでよくあるアイテムボックスでの解体に変更しました。

 ご指摘ありがとうございます。

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― 新着の感想 ―
[気になる点] ・脂肪を剥ぎ取る方法だ。 ・うーん……表面の脂肪だけ【アイテムボックス】に入れるとか? ・そんな事出来るかな? ・こう、断面図をイメージする。 ・毛があって、それが生えてる皮があって、…
[気になる点] 63度の湯をかけるのって、毛皮を剥ぐのではなく、毛を皮からむしり取るための手段なんだけど。 毛皮全部丸ハゲにしてどうすんの。
[一言] 皮剥ぎ、63度と36度どっちが正解なんですか?
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