表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
56/252

54 種明かしと学習

「え?!あんた達あの盗賊達に気付いてたのかよ!」


 夕食の、焼き鳥に齧り付きながら、ペーターが叫ぶ。


 結局、襲撃の後そのままこの広場で一夜を明かすことになった。

 此方に何の被害も無かったが、改めて出発するには微妙な時間だった。

 陽のあるうちには、次の野営広場には着かないし、かと言って長い旅の初日から、馬達に無理をさせる訳にもいかない。

 無理に出発しても良いことはない、と『飛竜の庇護(ウチ)』もエーミールさん達も、結論付けて設営を始めた。

 そして、まるで現代のキャンプ場にでも来たかの様な、立派な野営施設が出来上がっていた。


 休むには少し早いから、とエレオノーレさんとジャックが、エーミールさんの許可を取って狩りに出かけた。

 山の幸と肉確保の為だ。

 程なくして帰ってきた二人は、山菜と鶏肉の他、三人の盗賊達を連れて戻った。

 幾つかの貴金属まで携えて。


 様子を見に来ていた盗賊達には、エレオノーレさんもオーランドも気が付いていたらしい。

 狩りに出ると報告して後をつけたのだそう。

 そのまま盗賊の拠点を叩いて、残っていた三人をぶちのめしたらしい。


 二人がそうやって戦っている間に、野営地に残った俺達は見張りと夕飯作りをしていた。

 俺だけは小間使いのペーターと一緒に勉強会だ。

 御者の一人であるムキムキマッチョな青年ライナーさん、二十二歳が先生である。

 ペーターは、親と一緒に田舎から出てきたらしく、まだ字が少ししか読めないそうだ。

 地頭は良いらしく、計算はすぐに覚えたそうなのだが、文字は興味が薄く、難航している。

 今も不服そうに書き取りを行なっている。

 これでは覚えるのはいつの事やら、というものだ。

 書こうと思えば勝手に出てはくるけれど、一度キチンと学んでおきたかったし、常識ってやつはこういう時にしか教えてもらえないから、『迷い人』である事を明かしてお金を支払って一緒に受けさせてもらった。


 結果から言うと、とても有意義であった。

 基本文字があり、それを組み合わせて意味を作る英語的な感じだったとわかる。

 文法なんかも教えてもらえた。

 不思議なのが、文法はほぼ日本語と同じで、「何がどうしてどうなった」な文章だった。

 単語さえ覚えてしまえば、ほぼ日本語と同じ様に使用できた。


 ペーターは15歳で【身体強化】持ちらしい。

 勉強に飽きた彼にスキルの効果を見せてもらったけれど教師役のムキムキマッチョなライナーさんを片手でヒョイっと持ち上げていた。


「すげぇ!俺も【身体強化】欲しかったぁ!」

「キリトはすっげえ【魔法】に【アイテムボックス】だってあるだろ?」


 俺の言葉に鼻を膨らましながらペーターが答える。

 口の端がふよふよ上がっていて実に嬉しそうだ。

 弟みたいでなんか可愛く見えてくる。

 そんな会話をしているとエレオノーレさん達が戻って来た。

 山菜と鳥は調理を担当しているデイジーと寡黙そうな商会員に渡して、盗賊の残党を俺の前に連れてくる。

 目だけで会話して、三人を【鑑定】する。

 武器になりそうなものを片っ端から剥ぎ取っていく。

 一人は魔法が使えるらしいので、エレオノーレさんに相談して猿轡を噛ませる。

 べりべりと遠慮なく剥ぎ取る俺にペーターとライナーさんがドン引きしていた。


 ジャックは武装解除した盗賊を仲間の所へ放り投げると(本当に文字通りに“放り投げた”)報告系はエレオノーレさんに任せて、いそいそと調理班に混ざりにいく。

 ニコニコ笑み崩れていて、なんだか可愛い。

 熊のオッサンなのに不思議だ。


 そして食事の時間となり、冒頭の発言に戻る。

 そう。

 実は、俺達は結構前からあの盗賊達に気付いていた。

 具体的には奴等が偵察に来た辺りから。

 依頼主であるエーミールさん達に怪我をさせずに盗賊を一掃する為に、この場所まで何食わぬ顔をして歩いてきたのだ。


 その説明をオーランドがすると商会員は大盛り上がりで、うちのメンバーを叩いたり褒め称えたりした。

 「根こそぎ捕まえるのは偵察を数人捕まえるよりも手早く、今後の道中も安全だから」と説明していたが、理由の大部分はオーランドの「盗賊殲滅したい」が占める。

 おばあちゃんっ子なオーランドは、息をする様に人助けをする。

 そんな彼にとって「人に迷惑を掛けて生きる盗賊やそれに類する奴等」が理解できないし、許せないみたいだ。


 盗賊達があまり大きなグループではない事、気配の消し方からそこまで強い人が居ない事など、最初に決めていたハンドサインでやりとりして、細かい所をヤンスさんが雑談の体を装って補っていく。

 初めての捕物ではあったけれど、無事終わって良かった。

 あと、皆には言えないけど、盗賊を含めて誰も死ななくて良かったし、殺さなくて済んだ事にも心底ホッとしてる。


 その日の夜は、いつもとは違い、二人見張りを立てて周囲と盗賊達を見張った。

 俺とオーランドの時は大人しかったけれど、ヤンスさんとデイジーの時に脱走しようと、ひと騒動あったみたいだ。

 翌朝、ヤンスさんが盗賊達に目をやると直立不動で固まっていた。

 何したんだあの人。


 いつも俺不運読んでくださってありがとうございます。

 ブックマークいただき大変感謝しています。


 ちょっと登場人物が多いので商人達をざっくり紹介します。

 ↓

 武器商人達【武器商店 グリフォンの嘴】

  ・エーミール(三代目のボンボン)

    調子が良くて、小心者。

    箔をつける為に顎髭を生やしているが似合わない。

  ・ニクラス(ベテラン商会員)

    厳しい顔つき。

    子供好き。孫の話になると止まらない。

    でも商売の話になると急に冷徹な商売人の顔になる。

    イメージはスリムなラ●バ・ラル。

  ・ヴィルマー

    真面目な青年。

    最近仕事の流れがわかってきて仕事が楽しい。

  ・ティモ

    最初に霧斗と同じ御者席に座っていた商会員。

    話好き。酒が入ると下ネタが止まらなくなる。

    焦茶の髪に焦茶の瞳。

  ・テオ

    お調子者のムードメーカー。

    引くべき所ではちゃんと引ける男。

    エーミールとは幼なじみ。悪ガキ仲間。

  ・ザシャ

    寡黙で無言実行タイプ。酒が入ると能弁になる。

  ・ライナー

    見るからに力持ち。ペーターの教育に悩んでる。

  ・ペーター(小間使い)

    15才成人したばかり。

    本人は知らなかったが【アイテムボックス】スキルを持ってる。

    【身体強化】持ちでめっちゃ役に立つのに小間使いから卒業出来なくて拗ねている。


 こんな感じです。

 まあ、今後そんなに重要な人達では無いはずなので、ただの蛇足です。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[良い点] ヤンスさんはつい猿顔のシーフを思い出す [気になる点] 盗賊の留守番が3人って…少ないような ピンポイントで武装解除したら、またバレるような [一言] ラン●・ラルって、35なんだぜ
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ