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オーランドのパーティと合流


 キャンプのテントと思しき天幕が三つ並んで、焚き火に照らされている。

 その焚き火の前にはでっかい熊がいた。

 どうやらオーランドが作った晩飯を狙っているらしく、大きな手で鍋の蓋を器用に開けている。


「オーランドさん!やばい!熊に晩飯狙われてる!」


 慌ててオーランドの袖を引くと大笑いされた。

 何と熊、もとい彼はオーランドのパーティメンバーだそうだ。

 まんま熊の獣人との事で、膂力と忍耐力があり、意外にも手先が器用で料理上手なのだとか。

 しかもしかもしかも!

 なんと紅一点のメンバーの旦那さんだそうだ!

 それだけでも目ん玉零れ落ちそうだったのに、その女性メンバーがクォーターエルフと聞いた時にはもう……。

 思わずガックリと両手と膝をつき、世の中の不条理を嘆いたよ。


 お名前はジャック。

 三十一歳。

 ちなみにオーランドは二十四歳。

 なんと三つも歳上だった。

 明るくて人懐っこい感じが幼く見せているようだ。

 二人とも敬称をつけず名前で呼んでくれ、とのことだった。

 もちろん俺も同じ様にお願いした。


 ちなみになんと俺は十四、五歳に見られていたことが発覚。

 まぁ、そうでなくてもここのみんなは俺より歳上だけどさ。

 いくらなんでもそれはないだろ……。

 エルフもドワーフも混じってません。

 混じりっけなしの日本人です。

 コラ!オーランド!信じられないって顔するな!


「よろしく、キリト」


 挨拶をすると立ち上がって握手してくれ、歓迎してくれたのだけれど、こう、手をクシャッと握り潰されそうで怖いなって思ったのは内緒だ。

 身長は二メートルは確実に超えている。

 横幅や厚みがあるから遠近感が狂う。

 絶対絵に描きたくない。

 俺の技術じゃパースが崩れる。

 焦茶色の短い癖のある髪から熊耳が飛び出ている。

 どうしても気になって触らせてもらったのでわかった事だが、この世界の獣人さんは四つ耳ではないらしく、本来耳がある辺りは髪の毛が生えていた。

 綺麗に整えられた口髭と、優しそうなアーモンド色の瞳がチャームポイントだ。

 太い首には不思議な感じのする刺青が入っているオシャレさんだ。

 ジャックは寡黙なタイプで単語で話をする。

 自己紹介と設営と晩飯の調理と他のまだ来ていない二人の説明を受けている間に着々と夕闇が迫ってきた。


「ただいま〜なんとか追加で二匹は獲れたわよ〜」

「アイツらほんっとにすばしっこいわ!マジ無い!キチーーー!」


 月が昇り始めた頃、その二人が帰ってきた。

 一人は薄い金髪に薄青の瞳の男性。

 青いバンダナを幅広めにオデコに巻いて、短く刈り込んだ髪の毛がツンツン立ち上がっている。

 革鎧、というよりちょっと丈夫な革のベストを着込んでいて、あちこちにポケットやベルトで小瓶やナイフなどが括り付けられている。

 ウエストポーチも使い込まれていて、ポケットがたくさんだ。

 左腕には簡易的な折りたたみボウガンっぽいアームガードが付いている。

 二匹のグリーンフライフォックスを手に下げている彼が、斥候のヤンスさん、二十五歳。


 もう一人はエレオノーレ=ルクスさん。

 家名持ちでわかる通り、貴族の娘さんだそうだ。

 元、が付くらしいけど。

 ゆったりとウェーブのある青みがかった銀髪に金色の瞳。

 少し吊り目がちなぱっちりとしたアーモンド型の目を長くて重そうな睫毛が縁取っている。

 二十八歳って聞いたけどどう見ても十代後半に見える。

 四分の一混じったエルフの成せる技だろうか……?

 ただし、ある一点を見なければ、の話だ。

 そう、バインバインな胸元だ。

 え?あれどんなサイズなの?ってくらいにたわわな夢の果実が実ってる。

 そのくせして手脚もスラッと長くてウエストなんかもきゅきゅきゅーっと締まってる。

 なのにお尻はグッと上向きで、柔らかな丸みを帯びた、わがままボディ。

 薄い布を何枚も重ねたローブを纏っていて、ウエストをコルセットで締めているものだから布が引っ張られて上も下も大渓谷を作っている。

 ありがたやありがたや。

 超絶美人で、さっきの熊のジャックさんの奥さんである。

 うっかり呪詛が溢れそうになるね。


「え?誰々〜?オーランド誰〜?」


 斥候職なだけあって警戒心が強そうなヤンスさん。

 ふざけている様に見せて目が笑ってない。

 ニコニコしつつ手がいつでもナイフを取れる様な位置にある。

 こっわ!


「“迷い人”だよ。さっきそこの森で会った。俺が毒キノコ採取しそうになったのを止めてくれたんだ」

「へぇ、毒キノコを……」


 視線がより剣呑な色味を帯びてくる。

 やばいやばいやばい。

 なんか余計誤解されている気がする!

 初めてくる世界でなんでそこのキノコが毒キノコかどうかなんてわかるわけないじゃんってやつ。

 俺もそう思います!


「霧斗って言います。今日ここに飛ばされて来たばっかりです。毒キノコは【鑑定】のスキルがあるからわかったんですよっ。俺もはじめ採ろうとしてたから」

「ああ、それであんなにじっと眺めてたんだな!キノコと睨めっこしてたのかと思った」


 バッと手を挙げて(何故だ)自己紹介と言い訳を急いでする。

 背中から嫌な汗がダラダラ流れてる。

 空気がピリピリ痛いよ!

 何にも考えずにカラカラと笑うオーランドと目を丸くするヤンスさんとエレオノーレさん。

 ジャックさんはなんだか困った様子だ。


「か、【鑑定】……?」


 え?おかしな事ないよな?

 レアスキルではあるけどそこそこ持ってる人いるってマナーブックに書いてあったし、大きな街に1人は必ず居るはずだろ?


「あの…俺のスキルがどうかされましたか?」

「この世界じゃ百年くらい前に、神が与えるのをやめたスキルよ」


 恐る恐る聞いてみると、噛み付く様にエレオノーレさんが答えてくれた。

 心なしか目付きがギラギラしている様に見える。

 曰く、二百年前から急激に取得者が減り始め、百年程前に隣国の王子が得たのを最後に失われてしまったスキルらしい。

 ええええ!そんなのどこにも書いてなかったぞ?!!

 どういう事っ?!


「なぁなぁなぁなぁ、じゃあコレ、【鑑定】してみてくんない?こないだ買ったマジックアイテムなんだけどさ〜」


 慌てる俺にヤンスさんがニコニコしながら小さな指輪を見せてくる。

 エレオノーレさんも目から何かビーム的なモノが出てきそうなくらいの目力で見つめている。

 あ、コレあれだろ?

 ちゃんと【鑑定】持ってるか確認したいやつ!

 よし、じゃあきっちり見てやる!

 怪しいやつじゃないって証明しないと。

 意識しながらじっと指輪を見つめる。

 細目のリングに薄青い、ヤンスさんの瞳のような小さな石がついていた。

 繊細な模様が彫り込まれていて、一目で高額な指輪だとわかるデザインだ。

 ヒュンとウィンドウが現れた。



 一族守りの指輪(効果半壊)

  永く一族に伝わる指輪。親から子へ、子から

  孫へと伝わる事で力が増幅する様になってい

  る。現在その守りの力を使い切っている。

  これから力を蓄えるにはまた長い年月が必

  要。現在の登録者はアンドレア=ペルクマン

  テ。他者が持っていても効果を発揮しない。


「あー……マジックアイテムなのは間違いないですね。『一族守りの指輪』ってなってます。でも守りの力は使い切られてるみたいで半壊状態です。しかも別の人が登録者になってるみたいでヤンスさんが持ってても効果ないみたいですよ?」

「……っ!?」


 騙されたな、かわいそうに。

 よっぽど高いアイテムだったのか、驚き、困惑するヤンスさん。

 登録者の名前を聞かれたから答えると誰も知らない名前だった。

 名前の雰囲気から、よその国の貴族なのかもしれないとの事。

 ヤンスさんはじっと指輪を見つめて大切そうにポーチの奥の方にしまう。

 後で登録者書き換えができないか調べてみよう。


「すげぇな本物の【鑑定】持ちだ…」

「しかも今、無詠唱じゃなかった?【鑑定】は詠唱、いらないのかしら?」


 深い溜息を吐きながら右手で顔を覆うヤンスさん。

 そして腕組みしてブツブツ呟くエレオノーレさん。

 ほっそりした華奢な腕にたっぷりと乗っかった胸が大変けしからんです。

 ハイ。


 兎にも角にも、俺が今回のクエストが終わるまで一緒に居る事は許可されて、終わり次第街まで案内、護衛してくれるそうだ。

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― 新着の感想 ―
[気になる点] ヤンスさんに、なにげなく、「なあペルクマンテ」って呼び掛けてみたいですね。
[一言] 変な箇所で改行されてて読み難いかな。 ほとんどの読者はスマホで読むから、投稿するときは読み易さを意識した方が良い。
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