45 お邪魔します。
買い物から帰ると、ジャックがちゃんと三人を回収したらしく、みんな揃っていた。
部屋は女部屋、男部屋その一、その二に分かれていた。
俺はオーランドと同室だ。
荷物を移して部屋を掃除して、キッチンに行くと、女子二人がキャッキャウフフと料理をしていた。
そりゃあ見ちゃうよね。
目の保養だよ。
ウフフ。
「え?!なにそれ?!デイジーめっちゃ皮剥き上手くない?!」
「孤児院でいつもやってたから」
芋の皮剥きを、あっという間に幾つもやってしまうデイジーに、レジーナが驚いている。
照れた様に笑いながら、手の動きは止めず、皮剥きが必要な野菜類はほぼ全て一人で終わらせてしまう。
ちなみにレジーナはまだ三個目の芋を剥いている所だ。
小振とはいえナイフで皮を剥くのは難しい様で、分厚くぶちぶち切れている。
コレはピーラーさんの出番か?片刃になるだけでだいぶやり易いと思うんだよね。
親父さんに作ってもらえるかな?聞いてみよう。
え?俺は何してるかって?キッチンの隅で邪魔にならない様に2人を眺めてるよ。
野菜を水魔法で洗ったりしながら。
大変に可愛らしい。
眼福。
ご馳走様です。
剥ききった野菜の皮も捨てずに、千切りにして炒めると美味しいらしい。
コレまたあっという間に、デイジーが切って作ってしまった。
醤油と砂糖と胡麻と乾燥輪切り唐辛子があれば、俺だって金平がつくれるんだけどね。
あとはたっぷりの油で、かき揚げとかかな?ここでは砂糖も油も材料が贅沢品だから作れないけどね。
醤油にはお目にかかった事はないが、ヤンスさんが言うには、エドミッツという国では造られているらしい。
食事はとても美味く、デイジーは素敵なお嫁さんになれるね、と褒めると真っ赤になって照れてしまった。
「アタシだって作ったんだけど!」とレジーナからツッコミが来たのでレジーナが作ったスープの味も好みだ、と褒めておいた。
賑やかで楽しい食事が終わったら、お待ちかねのフーロータイム!
風呂掃除とお湯張りはまかせて!完璧に仕上げるから。
時間が遅いこともあって二人ずつで入ることになった。
女性はレジーナとデイジーが二人で、エレオノーレさんは一人で入ることに。(ジャックと二人で入るかって聞いたらほっぺがビロンビロンになるまで引っ張られてしまった)
浴室からはしゃぐ声が聞こえてくる。
うーん、最高。
風呂上がりに、冷たいフルーツ牛乳を渡したら目を白黒させながら一気飲みして、口元についた牛乳ヒゲに二人で笑い合っていた。
尊い。
その後質問責めにされ、目の前で再現させられたけどね。
案の定、お風呂から上がったエレオノーレさんにも食いつかれ、結局もう一度作る事に。
「まずは空気の膜を作って中身が溢れない様にします。まあ、丈夫なピッチャーとかでも良いですけど」
そしてその中に甘味の強いフルーツの皮を剥いて、小さく切って放り込む。
蜜柑とかの柑橘系は牛乳が凝固しちゃうからやめておいた方が良いよ。
「で、次に蓋をして、ウインドカッターの応用で回転させて切り刻みます。牛乳を足して、温度を奪えば冷たいフルーツ牛乳の出来上がり」
要はミキサーと冷蔵庫を魔法で解決しましたってだけだけどね。
いつもの要領でコップに注ぎ入れて完成。
はいどうぞ、と渡すと「魔法の無駄使い!」と怒鳴られた。
フルーツ牛乳を飲み切って口に牛乳ヒゲ付けたまま文句言われても怖くない。
魔法があるならどんどん活用するべきじゃないか。
むしろ細やかなコントロールの練習になっていいんじゃないの?
結局、風呂上りのみんな分作らされて、関係ない親父さんの分まで作らされて、その晩はへとへとに疲れてすぐに寝てしまった。




