30 今度こそダンジョン!
食材の確認が終わったら、貰ったアイテムの確認だ。
作業用のテーブルは、四人掛けくらいの大きめのテーブルだ。
足元に高さ調節が付いていて、多少凸凹していても、大体水平で作業ができる優れ物である。
まだ商品化していない物らしく、帰り道で良いから、是非使い心地を教えてほしいとの事だった。
次は、小さな折り畳みタイプの椅子が人数分。
釣りをするおっさんが使っていたりする感じの、クロスしたパイプが二つ並んでその上に丈夫な布が張ってあるだけで、背もたれも何も無いやつ。
だけど、コレがあるだけで地面に直接座らなくても良いし、丸太を用意しなくても良いからめっちゃ助かる。
コレもまだ、商品化していない物だそう。
俺達がテスターみたいだ。
折角なので、早速使わせてもらう。
うむ問題ない。
ただ、ジャックは壊れそうだ、と困った顔で椅子に座らず、こちらに渡してきた。
身体の大きな人には、もう少し大きくて丈夫なやつの方が、良いかもしれないな。
後背もたれがあると尚嬉しい。
そっとメモを取っておく。
食器は木製の大皿に小皿、丁度サラダを入れるのに良いくらいのボウル、スプーンにフォーク、カップが人数分。
フライパンやミルクパン(陶器製の小さい蓋付きの鍋)、大鍋と土鍋、木ベラに、泡立て器、ボウルが各サイズ。
あとミニ竈。
普通に考えたら、ハンターがこの辺の大物を貰っても、喜ばないよな。多分俺が【アイテムボックス】持ちだって事も、知られてたんだろうな。
沢山の薪と炭に、炭焼き台(アウトドアとかで使うバーベキュー台みたいなやつ)これはバーベキューでもしろって事?炭焼き台はサイズが大きいし、使い所が無いからって、ヤンスさんが断ろうとしてたのを、ジャックが止めて有難く戴いてきてた。
【アイテムボックス】があれば、持ち運びは問題ないよ。
作業用の、でっかいナイフと小型のナイフ、軽量の投げナイフなんかも、かなりの量を戴いた。
投げナイフは、オーランドとヤンスさんが、ニコニコ身に付けていた。
エレオノーレさんも、服の下のあちこちに隠していた。
かなり際どい場所に付けたりしていて、慌てて視線を逸らした。
俺も一本頂いたが、うまく使える自信はない。
漫画知識では、棒手裏剣的に“肩で打ち出す様に”って言うけど、打ち出すってどうやるんだろうね。
後で教えてもらおう。
てか、本当にこんなに沢山良いのかな?
毛皮が取れたらお土産って感じで、タダで渡したらダメかな?
後でオーランドに聞いてみよう。
はあ、知らないことだらけだ。
ざっくり描いたダンジョンの地図と、よく採れる場所の情報。
コレに関しては、地図の価値の高さよ!
ヤンスさんの言いくるめ方も凄かったけど。
口頭で説明された場所が解りにくいから地面に描いてよ、と。
そうして俺には、ジャックの陰でその地図を描き写せ、と。
しかも世間話の体をとって、更に詳細に説明させるのだ。
あり得ない。
価格に見合わない、とオーランドに話したら、これは本当にそこにあれば謝礼って形で、帰りに支払えば良いそうだ。
そうか、嘘の場合もあるのか。
その地図を確認しながら、どう進むか道筋を決めていく。
今回、俺はエレオノーレさんに教わりながら、マッピングをする事になった。
ダンジョンの中では、隊列を組んで歩いて進む。
先頭を斥候のヤンスさん、次にアタッカーのオーランド、そして魔法使い枠の俺と、エレオノーレさん、殿のバックアタック対応のジャックだ。
まずは、聞いた情報通りに進んで、採掘ポイントを確認する。
基本的に、下の階層の方が質が良いアイテムが、手に入り易いそうだ。
なので、採掘が上手くいかなければ、下の階に降りていくそう。
俺の【アイテムボックス】があるので、蛍石でなくても、価値のある鉱石であれば、逐一回収していく予定だ。
基本の移動は隊列を組んでから。
採掘ポイントでは、警戒一人、三人が採掘、俺が【鑑定】&収納の配置だ。
セーフティゾーンのあるダンジョンらしいので、夜にはセーフティゾーンに移動、いつもと同じ様に、一人が見張りに立つ。
俺はまだまだ、オーランドと一緒だけどな。
一人は流石に心許ない。
いろいろ話し合っていると、あっという間に日が暮れてきた。
慌てて晩御飯の準備を始める。
保存食作りは、話し合いの間にジャックがちょこちょこやっていたけれど、今食べる分はまだ作っていなかった。
ざくざく野菜を切って、鍋に放り込む。
お肉は保存食のついでに下味を付けていてくれたので、串に刺していくだけでオッケー。
時間経過のないアイテムボックスなのでパンもほんのり温かい。
「ステータス」
折角なのでステータスを開いてみる。
キリト Lv.4 男 【状態異常:呪い(強)】
ジョブ 異世界人・ポーター・魔法使い
スキル 【言語対応】
【アイテムボックス】
【鑑定】
【魔法】
【マナーブック】
【幸運】
【禍転じて福となす】
加護 大上神の加護
神候補者5名の加護
おお!レベルが上がってる!
やったぜ!
ブラックウルフの襲撃のせいかな?
まだちょっとモヤつくけど、レベルアップは単純に嬉しいな!
んでもって、スキル【アイテムボックス】を【鑑定】っと。
スキル【アイテムボックス】
神候補により付与されたスキル。
時間経過無し。ソート機能あり。容量無限。
使用時の魔力は最小限。
うっわ……便利な事この上ないけど、コレ、やばくない?
また、エレオノーレさんに、理不尽に怒られるやつじゃない?
案の定、パンに触れたエレオノーレさんに詰め寄られた。
それとなく聞いてみたら、やっぱり、ブッ壊れスキル扱いされた。
普通は、沢山入れたら入れただけ、魔力の使用量が増えるし、あまり沢山は入らないんだそう。
とは言え、ちっさい倉庫一個分くらいは入るらしいから【アイテムボックス】持ちは、引く手数多らしいけどね。
大きな商会とかは、必ず、何人か雇っているらしい。
もちろん時間経過ありです。
【アイテムボックス】内で腐ったりするらしいよ。
エレオノーレさんに「ずるい!」「理不尽極まりないっ」「女神様のばかー!」等、散々八つ当たりされたものの、あまり気軽にぽんぽん使わない方が良いという事が分かっただけ良しとしよう。
昨日今日と、色々大変だったけど、今はしっかり休んで明日に備えよう。
途中見張りで起きて短い時間だけどまた寝て、爽やかな寝起きの本日。
早速ダンジョンにアタックだ!
きゃっほい!
毎朝のルーチンを手早く終わらせて、天幕やバックパックなどの、不要な荷物は【アイテムボックス】へ。
例の杖を取り出して、準備は万端だ。
オーランドとヤンスさんが準備運動をしている。
エレオノーレさんとジャックは、薬草やポーションの最終確認をしているようだ。
「さてと、行きますか!キリトちゃん待望のダンジョンアタック」
皆の準備が整った事を確認したヤンスさんが、俺を揶揄う。
他の皆は笑っているだけだ。
ひどいけど、事実だから何にも言えない。
出来ることといえば、無言でスルーするだけだ。
入ってすぐの場所に、あからさまなトラップが仕込まれていた。
ピットホール。
つまり落とし穴だ。
そこの土だけ色が違うし、村の人達が行ったのであろうロープと石で『罠がありますよ』と囲ってあった。
さすがにいくら俺でも引っかからないよふふん。
ちょろいちょろい。
罠を見ながら、横を通り抜ける。
「キリトッ!」
ーーードスン
調子に乗って前方不注意だった俺に、何かが前からぶつかってきた。
妙に切羽詰まった、オーランドの声が、印象的だった。
いつも『俺不運』を読んで下さってありがとうございます!
お陰様で、PV3000突破しました!
うっかり本気で二度見してしまいました。
これからも頑張って書いて参りますので、霧斗達『飛竜の庇護』達のゆるめな冒険をよろしくお願いします!




