29 いざ!ダンジョ、ン?
毛皮が採れたらまた交換してね!と村人達に笑顔で見送られて、採掘場へ向かう。
それにしても、沢山の物が手に入った。
時間が無いし、物が多くて嵩張るからと、一旦俺の【アイテムボックス】に全部突っ込んである。
休憩の時に皆でしっかり確認しよう。
何に使う物なのかとか、気になるし、食材の使用の優先順位とかありそうだよな。
一番お金になりそうな牙付きヘッドと、ブラックウルフリーダーの毛皮はそのままだから問題ないそうだけど、むしろ問題大有りなんじゃないの?
高額すぎない?
大丈夫?
少し心配しつつ歩いていくものの、その不安は長くは続かない。
何故って?
だって採掘場になっているとはいえ、初ダンジョンだよ?
緊張と興奮で昂ぶる気持ちを隠せないに決まってるじゃないか。
「キリトちゃんニヤついててきも〜い♪」
「キモくて結構です〜♪」
ヤンスさんがニヤニヤして弄ってくるが、それすら笑顔で流してしまえる。
ダンジョン、ダンジョン♪
スキップだけはしない様に気をつけて歩く。
油断した隙に顔に鳥の糞が落ちてきた。
ぐぬぬ……腹立つ。
オーランドとヤンスさんが呼吸困難になりそうなくらいに笑っていた。
チクショウ。
即クリーン魔法を掛けて無かったことにする。
魔法ですぐに綺麗にできるだけ、こちらの世界の方が不運度はマシである。
だが、それによって少し冷静になれた。
いかんいかんダンジョンは危険な場所だ。
浮かれていると落とし穴に落っこちる。
気を引き締めていこう。
……ダンジョン、ダンジョン♪
気持ちも新たに、周りを見回しながら歩くと、開けた場所が見えてきた。
ダンジョンの周りは草木が生えず、野生動物や魔物も居ないそうだ。
理由はダンジョンが魔素を吸収してしまう為らしいのだが、魔素が無いと植物も生えなくなるとか不思議だ。
「今日は、ここで野営しよう。んで、明日の朝イチにアタックだ」
出発が遅くなってしまったので、微妙な時間になってしまったらしい。
このままダンジョンアタックするには遅すぎるけれど、野営するには早すぎる時間だ。
さっき手に入れたアイテムの確認と、採取の流れの最終確認をするそうだ。
小銀貨も半分をパーティとしてのお金、残り半分を頭割りで各自持つことに。
パーティとしての小銀貨三十三枚は枚数が多い為、改めて俺の【アイテムボックス】で預かることに。
人数分で割り切れない端数は全部パーティの費用になるそうだ。
それなら喧嘩にならなくて良いね。
「いやー、良い商売だったわー!」
「みんな、喜んでくれてましたもんね」
お財布に頬擦りしながら、ヤンスさんはニコニコしている。
オーランドと、ジャックは少し困った顔だ。
不思議に思っていると、エレオノーレさんが呆れた様にため息を吐く。
「違うわよキリト、ヤンスは店売りの定価で販売したのよ。未加工の毛皮をね。ぼったくりもいいところよ」
「え?」
詳しく話を聞くと、普段ハンターギルドに販売すると、一頭分が大体小銀貨三枚、傷ありが小銀貨一枚程度になるのだそう。(時期や状況によって多少価格の増減はある)
それを商人が銅貨数枚程上乗せして購入、加工して店に並べる時に大体今回売った販売価格になるのだそう。
「えええーー……」
「なんだよ、ちゃんと説明したじゃん。ギルドに睨まれる恐れがあるから定価で売るって。それに納得して買ってるんだから文句言われる筋合いは無いからな?」
とんでもないぼったくりだ!とヤンスさんを見ると、口を尖らせて財布を抱き締める。
いや、流石に「ぼったくり価格でした、すみません。お金返します」なんて言わないよ?
「まぁ、ヤンスのした事が、完璧悪いこととは言い切れないんだよ。この辺まで毛皮を運んでくる行商人なんかは、本当に質の悪い物や、売れ残って古くなった物を、高値で売ったりもするんだ。だからまだ良心的な値段なんだよ」
「逆に、相手方の買取り金額は仲買価格にしたのは、やりすぎだと思うけどね」
困った顔のまま、オーランドが説明する。
成程そうなのか、と納得しそうになったところで、エレオノーレさんがまた爆弾発言をする。
あの村の人達は、普段店に卸す価格で取り引きされていることに、全く気付いていなかった。
高く売っただけではなく、安く買い叩いたのか!
あまりに酷い!
「お互いに納得しての取引なんだから問題ありませーん」
ヤンスさんは聞く耳持たずって感じで、お財布を荷物に仕舞う。
皆も仕方ないなぁって感じの顔で、ヤンスさんを見ている。
え?これくらいは許容範囲の内なのだろうか?
他の皆も、荷物の中にお財布を大切に仕舞っている。
でも、エレオノーレさんは、数枚お財布に入れると小さめの麻袋を取り出し、残りを詰めてから俺に渡して来た。
「コレ、重いからキリトに預けるわ。街に着いたら返して頂戴?」
「わかりました。念の為、枚数確認一緒にお願いします」
華奢なエレオノーレさんには、重たい荷物は致命的なんだろう。
間違いがない様に枚数の確認をジャックを交えて行い、【アイテムボックス】に入れる。
キチンとメモを二枚取り、割印(母印だけど)を押す。
自分の管理分と、エレオノーレさんの確認分として各自で持つ。
ヤンスさんとオーランドが興味深そうに覗いてきた。
俺、エレオノーレさんから信用されたみたいだ!
大丈夫きちんと預かっとくよ。
小銀貨の配分が終わったら、次は食糧の確認だ。
マットを敷いて、その上に大体の種類別に野菜、生肉、干し肉、塩漬、燻製、腸詰、穀物、フルーツ、卵、酒、乳製品と並べていく。
ハーブや塩などの調味料も沢山あった。
村のお婆さん謹製梅干まである。
梅干は食料よりも薬として扱われているらしい。
お米が無いのがかなり痛い。
ぎぶみーらいす!
ジャックが、長持ちする物から渡してきてくれるので、その順番で【アイテムボックス】へ入れていく。
まぁ、アイテムソート機能があるからあんまり意味はないけど、気分的にはとても大事。
夜はその中の早めに処分した方が良い物でご飯になる。
献立は、村の焼き立てパンと、葉野菜とキノコのかき玉汁と、串肉、フルーツヨーグルトに牛乳になった。
今から楽しみだ。
いくつかは、加工して日持ちする様にするそうだ。
嬉しいのは蜂蜜があった事だ。
コチラには、やっぱりというかなんというか、砂糖が高かったので、甘味料はとても有難い。
甘い物が物凄く好きってわけじゃないけど食べられないと欲しくなるよね。
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これからも頑張って書き続けますので、どうぞよろしくお願い致します。




