248 事前調査 1
道中売買をしたり、魔物に襲われたり色々あったが、無事アルスフィアットに着いた。
季節はまだ初春。
日本で言うなら梅の花が蕾をつけ始めるくらいの時期である。
「はわわ緊張する……っ」
「ハハハッマックスも緊張なんてするんだな」
「研修生なのに一番飯食ってた奴の言葉とは思えねぇな」
アルスフィアットに着いたら領主代行に挨拶に行くと知ってから烈風は緊張で動きがおかしい。
その中でも、体は大きいのに肝の小さいマックスは緊張しきりである。
何度も深呼吸を繰り返したり、気持ちを落ち着けるために御者台に出たりとそわそわそわそわ動き回っている。
そんな彼等をレオンさんやヤンスさんが揶揄って笑う。
緊張をほぐしてやろうとしているのがわかるので止めたりはしない。
たまに度が過ぎるとエレオノーレさんやグレーテさんが嗜めてくれるのでそっとしておくに限る。
「急に来いって言われるよりは何倍もマシ」
「ヒィッ」
「キリトさん、心の声が漏れてます」
「ありゃ」
うっかり溢れた心の声にマックスがさらに青くなる。
なんか悪いことをしてしまったな。
そんな軽いやりとりをしながら門に立つ兵士に挨拶をして街の中に入る。
すでに顔見知りばかりなので、新顔のマックス達を紹介した。
「おお、レオン!それにグレーテも!久しぶりじゃないかっ!」
「ハハッ久しぶり〜」
『三本の槍』は元々この街を活動拠点としていた為、門番とも知り合いだった。
二、三話し合って後日時間を作って飲みにいく約束をしていた。
「まあ、色々終わってからだけどな」
「そうね。早く討伐して美味しいお酒を飲みましょうね」
流石オーランドの先輩だな。
コミュ力の違いを見せつけられた。
街に入ったらまずは孤児院『マチルダの家』に向かう。
旅の後の身嗜みを整えたいし、『止まり木』の子供達の状態も気になる。
勿論他の子達も気になるけど、やっぱり『止まり木』の子達の精神状態なんかが心配じゃん?
他にも冬の間に足りなくなった物や、食料を補充してやりたいし、城に先触れも出さねばならないだろう。
街に入る時に領主からの依頼を受けに来たと話しているので兵士経由で連絡はいっているはずだけど、こっちからも連絡しとくべきだよね。
オーランドにそう言ってエレオノーレさんが代筆したお手紙をアヒムに届けてもらう。
エレオノーレさんが手紙を書く間にアヒムには洗浄魔法をかけて、着替えさせる。
到着したばかりで申し訳ないが手紙を門番に預けるだけだし大丈夫だろう。
本当はリーダーのマックスか行くべきなんだけど、彼は現在胃をやられていてそれどころでは無い。
「では行ってきます」
「気を付けてねー」
常装に身を包んだアヒムはそう言うと、手紙を懐にしまって軽い足取りで駆け出していった。
少し顔は引き攣っていたけど大丈夫そうだな。
アヒムが戻ってくるまでの間に孤児院の状況を確認させてもらおう。
まずは『マチルダの家』
家具類は入れ替えてマチルダさんが使っていたものは全て俺の【アイテムボックス】に入っている。
毛皮に敷布、掛布で寝ていた子供達は無事ベッドが出来上がり、今では行儀良くベッドで寝ているそうだ。
「兄ちゃん久しぶり!」
「おう、良い子にしてたか?」
エルマー達と入れ替わりで入ってきた子達もだいぶ大きくなっている。
三歳くらいだった子ももう五歳になり、だいぶ口が達者になっていて、嬉しいやら困ったやら、といったところであった。
新しく入った子供達もだいぶ落ち着いていて、時折大人を試す様な行動を取ったりする以外は問題無さそうである。
イザークほど闇を抱えている子供は居なさそうで、すこし安心した。
『止まり木』の方は比較的穏やかに過ごせている様だ。
ただ、まだ成人男性が訪ねて来る、という状況になるとパニックを起こす子が数人いるらしい。
一度マルコが顔を出した時には泡を吹いて倒れた子まで出たらしく、それ以降はマーサさんが確認しているのだとか。
「じゃあ俺もやめといた方が良いかもしれないね」
「いや、キリトさんならいける気がしますよ」
「そうだな、兄ちゃんなら大丈夫じゃないか?何回か顔を合わせてるんだろ?」
とりあえず一度顔を出して様子を見る事となったけど、俺だって一応成人男性なんだけどな?
子供達の教育に関しては今まで通りで問題なさそうだし、内職もクロスワードやリボンの刺繍など順調に溜まっている。
現在は月に一度領主館を通して信用のおけるハンターに配送を依頼しているんだそうだ。
俺、責任者のはずなのに知らなかった……無責任者かもしれない……。
あと、これに関しては正直お貴族様だなぁって思っただけなんだけど、クラーラ様の面子を潰さない様に表向きは全ての孤児院がクラーラ様名義になっているらしい。
運営や経営に関しては一切変わらず、今まで通りだけど、一番上にクラーラ様の名前を掲げるよ、とのこと。
まあ、良いのではないでしょうか。
冬の間に病気などで両親が亡くなり、新たな孤児となった子達は領主経営の方に入っていて、特に問題は無いらしい。
念の為確認するも、病や仕事上の事故以外で寡婦になったり孤児になったりした者は知らないらしい。
「冬は来ないって本当みたいだね」
「そうだな。本拠地が外国なら納得の理由だ」
「寒い中わざわざ移動なんてしてらんないもんね」
報告を聞き終わると一旦着替えをする。
出発時は団服を着たけど、流石に何日もそればかりを着ては居られない。
移動中は汚れても良い服を着ていた。
でも流石に領主からの仕事を受けるとなれば話は別だ。
皆で常装をビシッと着て気を引き締める。
アヒムが戻ってくれば、馬車を孤児院に預けて徒歩で領主館に向かう。
街中は春の訪れに浮き足立ち、市場も賑やかだ。
野山で採った花や、初獲れの薬草、山菜などが並んでいる。
農作物も並び始めていて、道を歩く人の顔も明るい。
とても強盗犯罪グループに襲われている街とは思えない。
「まあ、珍しくない話だからな。それでも最低限の警戒は捨てていない」
オーランドが指差す先には子供を抱え、足早に買い物をする家族が見えた。
楽しそうに笑い合っているが、父親は時折周囲に気を配り、つけて来る者や不審な動きをする者がいないかを確認している。
実にさりげないが、注視すればすぐにわかる程度には警戒が透けて見える。
春前にゴットフリート様から各ギルドや工房に犯罪者組織の存在を公布してある為、怪しいものを見かけたら即座に兵士や騎士達に連絡する様になっているらしい。
見慣れぬ俺達 (似た意匠の服を身に付けた一団)に数人の住民が反応し、駆け出しているのが見える。
これは街の機能が正常に働いていることの証左なので、抵抗せずに受け入れよう。
報告した人に報奨もあるわけだしね。
「ちょっとそこの人達」
「はいはーい」
兵士に声をかけられて外向き対応のヤンスさんが対応する。
やばい正直めちゃくちゃ胡散臭い。
何故先にオーランドやエレオノーレさんが対応しなかったのかと思う程である。
兵士とヤンスさんは二度三度言葉を交わした後オーランドを呼ぶと、いくつか説明をし、笑顔で別れた。
どうやら騎士達から兵士にも連絡が入っていて、オーランドがクランマークを見せつつ、領主の所へ向かう最中だと説明したらすぐに納得してくれたらしい。
ヤンスさんは情報共有されているだろうと予測していて、その辺の話を確認していたそうだ。
職務質問ついでに今向かっていると兵士側からも報告してもらうことになったらしい。
いつも俺不運を読んでいただきありがとうございます。
いいね、リアクション、感想、ブックマーク、評価沢山で嬉しいです。
今後の製作の励みにさせていただいています。
先日寝ぼけて操作をミスって作品を削除してしまうところでした。
冷水を浴びせかけられたってこういうことか、と理解しました。
その後全く落ち着かない心臓に気分が悪くなり、しばらく動けなくなりました。
これはキリトの不運がこちらに滲み出ているのでは?と心配になっています。
それはさておき、やっとアルスフィアットに到着しました。
でも領主邸までは行けませんでした……。
孤児院の子供達は今は平和に暮らしています。
元教会孤児院の子供達も男子禁制エリアで少しずつ心と身体を回復させているようです。
次回はゴットフリート様との面会です。
わ!わ!ありがとうございます!
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今後も頑張ります!




