243 廃油石鹸実験・販売準備4
どうにかこうにかくれくれ攻撃を躱し、デニスさん達と別れて拠点に戻ったら、廃油の回収について考える。
できたら帝都中の廃油を集めるべきで、そうなると量が量だ。
今みたいに必要になったら「回収に来たよー」では意味がない。
定期的に集める廃油回収業者みたいなのが必要である。
そうなると安易に孤児院の子供達にお願いしようかな?とか思ってしまう。
でも既に薬草採取とか、拠点維持とか、各店舗の手伝いとかで結構な人数にお願いしているから、孤児院の子供達も動ける子が少ないんだよね。
掃除とか食事とか幼児達のお世話とかの孤児院の日常業務だってある訳だし。
だったら普通にお仕事に人を雇う?
でもそんな伝は無いよねー……うーん……。
悩んでいたら、バイトの奥様方から「ウチの子とかどう?」と言われた。
そうか、そういうのもありだな。
今は見習いとして実家や孤児院から通ってもらってそうしてその子供達が大きくなって孤児院を出る時にはうちの石鹸工房で働いてもらうとかどうだろう?
その頃には社員寮は出来上がってるはずだし、家族で引っ越して来れる様に社宅みたいなのを建ててもいいかもしんない。
まあ、こっちはとりあえず後回し。
今は廃油回収だね。
油を使う商業エリアを四つに区切ってぐるっと回って四台のリヤカーと一台につき三人くらい子供がいれば大丈夫かな?
大人が一人は必要だろうか?
そうなると一日に子供十二人、大人四人は必要で、一旦二日に一度くらいでやるとして回収要員は補欠含めて子供十六の大人五人くらいかな?
人員の管理と配置はリーゼにお願いしてみよう。
とりあえずはリヤカーの製作を超特急でドワーフに依頼した。
超特急料金はお酒でカバーしてみよう。
提案したのは、いろんな鉱物を混ぜ合わせて作ったそもそもの重量を減らした合金。
さらにその合金をパイプ型にする事で丈夫さと軽さを両立させるリヤカー。
持ち手の所はスライムの外皮を使用した滑りにくいグリップ。
タイヤも、スポークをたくさん入れて軽量化を図り、ベアリングも搭載してもらいたい。
最後にスライムの外皮をタイヤに重ね貼りしてノーパンクタイヤにする事で、多少の段差や凹凸でも油が溢れることなどは無くなるだろう。
合金については詳しくは知らない、そういうことが出来るらしいとしか説明できなかったが、むしろそれが燃えるのだと大喜びだった。
リヤカーについては絵を描いて説明すれば、ドワーフ達は大はしゃぎで研究・作成してくれた。
一週間もしないうちにプロトタイプが完成して驚かされるのは後日の話。
油を使う商業エリアは結構広い。
街自体が中央、東西南北と五つに分かれているけれど、各エリアにそれぞれ露店や食事処などがある。
中央は貴族街にあたり、孤児が回収しなくても自分達で処理してくれるだろう。
一応念の為にクラーラ様にはうちに持ち込んでくれれば無料で廃油を処理しますよ、とお伝えしておいた。
なので回収すべきなのは東西南北のそれぞれのエリアだ。
方向に合わせて四つに区切って、ぐるっと回ってくれば子供達でも無理なく回収できるコースを考えねばならない。
そこで活躍したのがオーランドだ。
唐揚げマップを作っていたオーランドが、無理なく回れるコース作ってくれた。
一つのエリアを三つに分けて、一日に一つのコースを巡る。
店側からすれば大体一週間に一度の頻度で回収に向かうことになるだろう。
街の地図は探索魔法を使って俺が描いた。
ただ、ラノベ知識だけど、街中の地図は軍事機密だったりもしたはずだ。
エーアスト帝国がどうかは知らないけど、念の為コースが決まったらそのコースだけの地図を作り直しておく。
全体像を記入した大きな地図を複写して、子供達がわかりやすい様に目印を大きく載せる。
通るコースを絵の具で塗って、一目で分かりやすくしておく。
一つのエリアで三枚、合計十二枚をなんとか書き上げた。
「なんでそんな面倒な事をするんだ?」
「街の地図って軍事機密的なヤツだったりしませんか?」
「少しは成長したな」
覗き込んだヤンスさんに質問で答えるとワシワシ頭を撫でられた。
何故かコチラの人達は俺の頭を撫でたがるよな。
なんかもう慣れたけどね。
リヤカー作成やコースの地図作成と並行して、現在ウチの敷地には石鹸工房を建築中である。
人気のある無しでどれくらいの広さが必要になるか変わるけど、とりあえずこの街から出る廃油を全て処理できる程度にはしておきたい。
たとえ売れなくても石鹸は腐らないしね。
最悪余ったら【アイテムボックス】に入れておけばなんとかなるでしょ。
そう話せば「残るどころか足りなくならないかしら?」とエレオノーレさんが不吉な事を言い出した。
そんな未来は見たく無い。
俺がそうやって走り回っている間に、ウチの錬金術師達は廃油の酸化還元、薬師達は分量を変えての石鹸作りと着々と研究・作成が進んでいった。
ある程度分量の目処が付いたところで量産体制に移行する。
研究自体はそのまま進めてもらうけどね。
孤児院で魔法が使える子達に声を掛ければ全員が両手を挙げて希望してくれる。
その中にはあの“妖精さんの魔法”使いのイーリスも含まれていた。
「まだ子供かもしれないけど、わたしも魔法結構使えるようになったのよ。にいちゃん先生」
「……よその子はあっという間に大きくなるんだから……」
あの舌足らずで、会話も辿々しかったイーリスも今では八歳。
おしゃまな女の子になっている。
力こぶを作るようなポーズでにかっと笑う顔にはあの頃のイーリスを感じられる。
魔法の使える子供達は八歳から十二歳。
全員で五名。
これでは到底人数が足りない。
バイトのママさん家のお子様達にも協力を依頼した。
その中に魔法が使えそうな子が三名もいた!
なんという僥倖!
いつものやり方で教えると、“魔法が使えるかも”から“実際に魔法が使える”に変わったことでヤル気に火がついた模様。
遊びとトレーニングがないまぜになった感じで、競い合う様に何度も酸化還元にチャレンジしていた。
初めのうちは加減が難しかったようだがあっという間にコツを掴みバンバン酸化還元していくちびっ子魔法部隊。
無理のないようにシフト制にして、週に三日は休みが入るように気をつけた。
その他、魔法の使えない子達には廃油回収の情報拡散をお願いした。
『 六日に一度、月五回の廃油回収。
登録制で、店の裏まで回収に行くこと、料金は月初めの先払い、小銀貨五枚。
廃油の処理にお困りの皆様廃油回収をご希望の方はクラン『飛竜の槍』まで。 』
各店に上記の内容を説明しに行って、希望者からは依頼票を受け取ってくる。
ついでにちょこちょこっと手伝って小金を稼いで帰って来ている者もいた。
リヤカーと回収缶(ドラム缶くらいの蓋付きの鍋)が出来上がったらそれとコースの地図を貸し出して回収に向かってもらう。
とりあえず二日に一回の出勤ペースで、担当コーナーを巡って回収。
衛生の概念が薄いコチラの世界では揚げ油の交換なんて簡単に日を跨ぐ。
それぞれの店で廃油を溜めておいて、六日に一度子供達に渡してもらうのだ。
どこのコースも初日は俺とパウルさんが付き添って回る。
お手製の地図を片手にコースを説明しつつ、廃油回収のやり方を説明していった。
地図は一人に一枚ずつ配っている。
万が一迷子になったり、誰かの地図が駄目になったりした時のために俺、頑張った。
月額前払い制なので、地図にはすでに寄る店に印が付いている。
変更が入ったら書き込んだり消し込んだりする予定。
店の方にも裏口に専用のマークを付けてもらいたくて、案内と回収の説明ついでにマークを渡している。
木製だけど防水性のニスが塗られているので雨ざらしになっても大丈夫である。
これもドワーフ謹製品。
「は〜いゆ〜♪廃油回収〜♪」
ちょっと気分が良くなって、竿竹節でふざけて鼻歌ってしまったのが運の尽き (元からないけど)
男の子達は楽しそうに真似をして、結局それが定着してしまったのだった。
他のコースの子達には言わなかったのに、子供達の間で情報交換されて、全区域に広がってしまう。
もう、取り返しはつかない。
そうして廃油回収はスタートした。
意外にもこの歌はウケが良く、「来た事がすぐに分かって良い」とか「明るい子供の声は活気が出て良い」とか言われていた。
まだ二週間ほどしかやっていないのに、既に街の風物詩とまで呼ばれるほどである。
何がどう影響するかわかんないね。
いつも俺不運を読んでいただきありがとうございます。
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竿竹節はあれです、さーおやーさおだけー♪ってやつ。
リアルで聞いた事ある人ってどんくらいいるんでしょうね?
住んでいた場所が田舎なせいか、人生で二度ほどしかありません。
竹なんてその辺から切ってくればいくらでもある山中育ちです←




