26 二番目の街ヒメッセルトに到着
火起こしの為に枝を組み上げていくオーランドの手には迷いが無い。
なんとなくなアウトドア知識しか知らないから後で教えてもらおう。
夕飯の作り方をジャックに習う。
自炊はそこそこしてたから包丁の使い方や、切り方は何となく分かる。
最初は簡易カマドの作り方だったけどね。
作業場から作らないといけないなんて、なんて不便なんだ……。
街に着いたら作業用のテーブルとキャンプとかで使う焼き台みたいなのを買おうと心のメモ帳に書きつけた。
エノキとシメジの間くらいの小さいキノコは石突きを切り落として手で解す。
大きいキノコを薄切りにして、かつお菜みたいな葉が大きくて、縮んで波打っている野草を一口大にカットしていく。
この時に一口のイメージ二回りくらい大きめに切るのがポイントだ。
【アイテムボックス】からベーコンを取り出して、拍子切りにする。
分厚くて脂が乗っていてめちゃくちゃ美味そうだ。
石を組んで作った簡易カマドの上にフライパンを載せて、こないだ鶏皮から採った油をひく。
油が跳ねて火傷するのはお約束。
ちょっと痛い。
あとはベーコン、キノコ、野草の順に炒めて控えめに塩味を付けたら完成だ。
ベーコンから味が滲み出てめっちゃうまい。
出来れば胡椒が欲しいところだけど、異世界あるあるの超!高級品だった……。
一粒小銀貨一枚するとかホントなんなの?
うちで使ってた小さなペッパーミル付きのサイズで大銀貨(約十万)超えちゃうとかホント無理。
それはそれとして、出来上がった炒め物を味見で、ジャックと一口ずつ食べてみた。
「つまみ食い、特権」
ニヤリ、とジャックが悪い笑みを浮かべて親指を立てる。
美味しいよ、と言う時には普段の穏やかな笑顔になっていた。
おちゃめさんか!
俺がモタモタとキノコと葉野菜のソテーを作っている間にジャックは卵スープとサラダ、無発酵パンを焼き上げていた。
今日のパンはチーズが練り込まれていて、ナンの様なモチモチした平たいパンで、とてもとても美味かった。
食事も美味く、入浴も、見張りも特に強い魔物は出てこなかった。
時折近くを小さな獣が通り過ぎる程度だ。
問題なくしっかりと休んで、朝を迎えた。
いよいよ新しい街だ。
結構大きめの街で、すぐ近くにダンジョンがあるので品揃えもしっかりしているそうだ。
街道を進むとあからさまに人の手が入った道に切り替わる。
凸凹しているけれど石畳になっている。
そこから五十メートルほど歩くと門と外壁が見えてきた。
五メートルくらいの高さの壁に囲まれた街だ。
(うはー!ファンタジーって感じ、まんまの街じゃん!)
オラわくわくすっぞ!
……と、興奮していたら見事に欠けた石畳に足を取られて顔面から転んでしまった。
周りを歩く飛竜の庇護のみんなだけでなく、道行く商人さんとか他のハンターパーティとかにまで見られてしまった。
ジャックがそっと助け起こしてくれたが、とても恥ずかしい。
街に入る時にハンターカードを提示して、目的を告げる。
蛍石の採集だと伝えると少しばかり顔を顰められた。
ただ、止められることはなくそのまま通って良いと促される。
不思議に思いつつも、街に入ればそんな些細な疑問は吹き飛んでしまった。
理由は簡単。
正にザ、ファンタジー!って感じの街だったからだ。
石畳の大通りと、市場などが開かれるのであろう広場にはいくつかの屋台とカップルやハンターらしき人達が思い思いに過ごしていた。
周りの住宅地と思わしきあたりには、家と家に紐を張って干された洗濯物がはためいている。
道行く街の人達は絵に描いたような中世ヨーロッパスタイル。
興奮するなと言う方が無理だ。
アルスフィアットでは良くも悪くも都会過ぎた。
外国の田舎町かな?的な、こう「異世界に来ましたよ」って感じも薄く、異世界に感動する前にアレコレ振り回されて出てきてしまったのだ。
買い物とかもはしゃぐ前に兎に角生活基盤って感じだったから喜び損ねた?感動し損ねた?感じだった。
でも今は違う。
顔がニヤけるのを止められないぜ!
……と、ニマニマしていたら通りすがりのおばちゃんに変なものを見る目で見られてしまった。
恥ずかしいっ!




