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228 俺、何かやっちゃいました?テンプレなんていらないっ!


 城で倒れてから十日程でなんとか一人で歩ける程度には回復した。

 自由に動けるようになるまでは!とめちゃくちゃ引き留められてまだ皇宮に居る。

 メイドさん達も人数が減って、確実に俺の性癖がバレている。

 強引なアピールは無くなり、かなり……こう、グッとくる感じの甘やかしになって……ハイ。

 理性がフルスロットルで稼働してて焼き切れそうです。


 今日は皇帝と共に皇妃様と皇子様、皇女様に会いに行けることになった。

 新生児だし、まだ生後二週間とかそこらだよ?

 俺なんかが会いに行っていいわけ?

 普通の赤ちゃんでも家族か近しい親戚くらいしか会えない時期じゃない?

 しかも普通の赤ちゃんでもないわけじゃん。

 絶対両親と信用できる側近だけじゃない?

 その辺を聞いても「キリト様は良いのです!」と言い切られてしまった。

 何がどう良いのかわからないが皇帝が良いと言っているのだから何の問題もないとまで言われてしまえば行くしかなくなる。


「いらっしゃいませ、キリト様」


 案内されるままに向かえば、ゆったりとしたドレスを身に付けた皇妃様とエデルトルート様が出迎えてくれた。

 この二人、最近俺を見る目がやたらとおかしいんだよな。

 狂信者の目、というのだろうか?

 妙な熱量のある眼差しにうぐ、と喉が詰まる。

 変に身の丈以上に持ち上げられている気がして居心地が悪く、少し恐ろしい。


「帝国の星と小さな太陽にお会いできる光栄を賜れました事幾重にも感謝申し上げます」

「まあ、そんなに畏まらないでくださいな。貴方のおかげでわたくしの命があるのですよ」

「その通りだ。親戚に会いに来たつもりで気楽にしてくれたまえ」


 エデルトルート様に教えてもらっていた皇子皇女と面会する時の作法を思い出しながら挨拶すれば、なんとも返答に困る言葉がかけられた。

 その事は秘密にしてくれるんじゃなかったのかな?

 じとりと視線で訴えれば、ニコリと微笑み返される。

 なんかさ、もう隠す気ないよね?

 大丈夫?


「さあさあ、早く立ってウチの子達を見て行って下さいな」


 そう言われて案内されたのは小さなベビーベッド。

 世話がしやすい様に俺の腰の辺りまで高さがあり、少し高めの柵が付いている。

 その中に沢山のレースと真っ白なおくるみに包まれて健やかに眠る二人の赤児。

 ベッドの上でころりと転がる小さな生命は、なんだかすごいパワーというか、生命力に溢れていて、ものすごく感動した。


「ぜひ抱いてあげてくださいな」


 そう言われて恐々抱かせてもらう。

 先にソファーに座って、まだ首も座っていていない、ふにゃふにゃくんにゃりした赤ちゃんを腕に載せられた。

 小さく軽く、儚い。

 それでも確かな重みと温もりが感じられる。

 すうすうむちゃむちゃと動く唇。

 皇妃様に似た金の髪と青い瞳。

 男の子と女の子と言われたが、どちらなのかはまだわからない。

 頭にリボンが付いてるから皇女様なのかな?

 そっと触れた頬はふわふわと柔らかい。


「ッ!」


 その指を思わぬ強さで掴まれた。

 侍女さん達に止められたわけではない。

 皇女様が俺の指をしっかりと握っている。

 なんだっけ?

 モロー反射?とかなんとか言ってた気がするけど覚えてないな。

 小さな小さな手は細く短い。

 なのに指には爪までちゃんとあって、言葉にできない感情に溺れそうになる。


「皇子様、皇女様にアルマ女神のご加護があります様に……」


 きゅっと掴まれた指の感触に思わずぽろりと言葉が溢れた。


「!!」

「まぁっ!」

「なんと……!」


 途端にキラキラと輝きだす二人の赤子。

 息を飲む皇帝や皇妃様他。

 え?

 待って?

 待って待って。


 ーーー俺、この光なんか見たことある気がするなー……。


 具体的には妖精さんの魔法的な。

 アルマ女神の加護的な。

 皇女を抱いて座っているので逃げられない。

 急に立ち上がって落としでもしたら目も当てられないからだ。

 こっそりと二人を【鑑定】したらやっぱり付いてたよ。


 【アルマ女神の加護】


(ああああああっ女神さまぁぁぁぁぁぁあぁっ!!)


 某ご長寿漫画のタイトルみたいな言葉しか出てこない。

 あんな独り言みたいな言葉まで聞き届けてくれないで良いんですよ女神様!

 お二人に加護を授けるにしても別のタイミングがあったはずですよね?

 絶対俺が何かした事になってる〜っ!

 タイミングよくぐずり出した二人にそれぞれ乳母が出てきた。

 皇女様を受け取ってもらうと部屋から出て、割り当てられた自分の部屋へ。


 その後どうにかこうにか理由をつけて皇宮を辞したが、皇帝の俺を見る目がなんかヤバイ宗教にハマってるヤバイ人みたいになっててものすごく怖かった。

 あれだ、皇妃様やエデルトルート様と同じ狂信者の目。

 すごいのはアルマ女神だから!

 俺じゃないから!

 女神に愛された双子の神子として恭しく扱われそうな赤ちゃんに少しだけ不安を覚えた。

 後でエデルトルート様に普通の皇子様、皇女様として特別扱いせずに育ててあげてねと手紙を送らねばなんかヤバイ事になりそうな予感がする。



 必死で逃げ出し、途中で捕まって「送ります!」と譲らなかった兵士に半ば無理やり馬車へ乗せられたが、なんとか拠点まで戻ってこれた。

 礼を言い馬車を見送ると、迎えに出てきてくれた皆への挨拶もソコソコに、俺は自分の部屋に戻りベッドに倒れこんだ。

 今はもうとにかく何にも考えたくない。

 泥の中に沈み込む様に眠りに落ちていった。


 翌朝、改めて帰還の挨拶と迷惑をかけた旨を謝り、皇宮での状況を説明した。

 皇妃様の一件は口外禁止の為、詳しくは話せない。

 ほんのりボヤかしながら、皇帝に乞われて神殿契約してからとある方にヒールを掛けたこと、イェルンさんやオイゲンの時の様に頑張り過ぎて倒れたこと、回復に時間が掛かったことなど話せるだけ話した。


「あー……大変、だったな」

「とりあえずヤバいと思って逃げ帰ってきた」


 言えない事が多くモゴモゴと説明する俺の肩を抱きオーランドが苦笑いをする。

 双子の加護の話はここでは出来ないから抱っこしてたらキラピカ光ったと話すと心当たりがあるエレオノーレさんが驚愕の目でこちらを見る。


『マジ?』

『マジです』


 視線で会話する。

 その事にジャックが面白くなさそうにエレオノーレさんを抱き寄せるが、その顔を見て表情を変えた。

 ヤバいのだと理解したらしい。

 後でウチのパーティにだけは情報共有しないとな。


 そして今度は逆に皆からクランの状況や街の状況を色々教えてもらう。

 『女神の雫』からのクエストは安定して届いている。

 これは皆でローテーションを組んで無理なくこなしているんだって。

 研修生の皆も他のパーティに混ざって採取している。

 他のハンターパーティに混ぜてもらえない為知らない事も多かったらしい。

 もっと早く知っていれば楽だったのに、と『烈風』のアヒムが悔しそうに言っていた。


 噂に関しては、直接的な嫌がらせなどはないが、遠巻きにされてヒソヒソされるのは変わらないらしい。

 いつになったら落ち着くんだろうね。

 もう疲れてきちゃったな。

 それでも新しいギルドマスターのアダルブレヒトさんが色々気を遣ってくれているらしく、かなりマシになってきたようだ。


 んでもって、一人の下妃が病に倒れたらしい。

 うん。

 それは聞きたくなかったなぁ。

 しかも彼女の家族は現在なんらかの罪で全員牢に入れられているんだとか。

 一般市民にも噂が広がるくらいだ。

 貴族の間ではバッチリバレているだろう。

 しかも解呪の宝玉を皇家が購入した事などちょっと調べればわかる事。

 秘密裏に俺が呼び出された事も嗅ぎつけている者だって居るだろう。

 そこから真実に辿り着くとは思わないけど、かなり精度の高い推測は出来るはずだ。

 面倒な事にならないと良いのだけど……。



 そして俺は知らなかったのだが、下妃の一族が全て拘束されたその日の夜、皇宮主催でパーティが開かれた。

 表向きは皇妃様が無事出産、皇子・皇女誕生のお祝いだ。

 だが耳聡い貴族達はそれだけが理由でないことを知っている。

 盛大なパーティも終わりに向かいはじめた頃、とある布告が皇帝よりなされた。


「とあるハンターパーティが貴族家の後ろ盾を良いことに好き勝手しておるという噂が私にも聞こえてきた。しかしよく聞けばそのハンターパーティはなんと以前私が庇護すると言った者達だそうだ。彼等はよくこの帝国に尽くしてくれておるが、噂の様な行動は取ったことがない。どこの誰がその様な事を口にするのか……」


 眉間に皺を寄せなんとも由々しき事態だ、と大袈裟にアピールする。

 ざわざわとさざめき合う参加者達。

 数人の高位貴族はなにか得心のいった表情で皇帝の次の言葉を待つ。


「今まではハンターの事はハンターでやる様に、と手を出さずに目を瞑っておったが、最近はあまりにも目に余る。本人達が望まぬとはいえ、本来の『庇護』にふさわしい対応をしてやっても良いと考える」


 それは取りも直さず罪に問う、罰を下す、という事である。

 身に覚えのある各貴族家は震え上がり、大慌てで出していた手を引っ込めた。

 そうして俺達の知らないうちに、不自然な程に拡がっていた悪い噂は、下位ハンターの胸に悪感情を残したままゆっくりと収束していった。


 いつも俺不運を読んでいただきありがとうございます。

 いいね、リアクション、感想、ブックマーク、評価とても嬉しいです。

 本当にありがとうございます。


 迂闊な霧斗は自覚しても迂闊。

 アルマ女神の遣い、もしくは亜神辺りと勘違いされている霧斗。

 女神の気遣いは霧斗のやらかしに。


 上の方の暗躍は立ち消えましたが、すでに広まった噂は簡単には消えません。

 噂の大元が 消 さ れ て そのあと自然と風化していくのを待つのみとなりますね。


 そろそろ年末商戦に足を掛けました。

 更新が疎かにならない様に頑張りますが、文章が乱れてしまうかもしれません。

 遠慮なく誤字報告お願いします(他力本願)


 ご指摘により「130 緊急クエスト 掃討戦 3」を少し手直しいたしました。

 話の流れに変わりはありません。

 ご興味がありましたらご確認下さい。

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― 新着の感想 ―
追記。 帝都の元ギルドマスターが、ただの侮辱の咎などに留まらず帝国への反逆罪を適用されて失脚した、その後なのですし。 皇帝・皇妃のキリトさんへの傾倒ぶりから考えても、相手が貴族家であっても、警告で済ま…
・狂信者 まあ無理もないですが。 でも、「女神様は良質なお祈りが好きですよ」と弘めたら、キリトさん以外にも、御利益を貰える人が複数出そうです。 ・それは取りも直さず罪に問う、罰を下す、という事であ…
子供好きな女神様、小さな子供に加護をあげたくて仕方なかったのでは? キリトの祈りは渡りに船というか、ちょうどよかったんでしょうねえ、、、
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