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218 クラン結成 3


 以前にも少し触れたかもしれないが、現在商人達にも、ハンター達の噂は広がっていて、急に皇宮御用達になったのはそういうことか、みたいな目でまた見られている。

 折角色々落ち着いていたのに、以前の嫌がらせ行為を復活させる店も出てきたり、逆に「貴族に紹介してくれ」と馴れ馴れしく訪れる者もいた。

 俺たちだけでなくブリギッテやカールハインツ、レジーナに果てはキルシェにまで声が掛かっているらしい。

 レジーナやキルシェはどちらかと言えばうちよりも“貴族お抱え”そのままなので「クラーラ様に対して無礼ですよ」と返してもらっている。

 勿論クラーラ様達もそれは放置せず、釘を刺しに行ったり首を刈りに行ったりしているらしい。

 お貴族様こわい。


 確かに元々皇妃様や皇帝のおかげで急成長した店なのだから、こういうやっかみが多いのは理解していたけど、今回のこれは結構やばいのでは無いだろうか?

 普通バックに貴族がいるという噂が流れたら「手を出すな」が合言葉になりそうな物なのに……。

 ガチに仕入れに問題が出そうである。

 ブリギッテやカールハインツが「今はいいけど、後二、三ヶ月もすれば注文に対して一部素材が足りなくなるだろう」と連絡してくるほどだった。

 絹は大丈夫だが、綿が足りなくなりそうなのだとか。

 これはもう本気で畑を作るしかないかもしれない……。

 いや、契約農家っていう方法がわんちゃん……ワンワン……。

 うーん、面倒くさい!




 商人ギルドでは、問い合わせがあれば「お客様ではいらっしゃるけれど、商売に貴族の権力は使っていませんよ」と答えてくれているらしい。

 とはいえ、それ以上は積極的に動いていない。

 これくらい自分達でどうにかしろというわけだ。

 何の為のギルドなんだ?

 ハンターギルドは更に非協力的である。

 なんといっても、ギルマスから「そういったことは自分達でどうにかしてくれ。ギルドの仕事じゃない」と直接言い放たれている。

 以前のこちらの対応が腹に据えかねているらしい。

 「火のないところに煙は立たない」とまで言われたよ。

 別にこの街を出て行っても良いんだよ?

 まあその時はブリギッテやカールハインツ、キルシェに声を掛けて出ていくけど。

 皇帝や皇妃様達には「嫌がらせが酷い為出て行きます」と言って土地をお返しするけど。

 そうなってからお貴族様たちに怒鳴り込まれても知ったことじゃないけどさ。


 正直ハンターの仕事は無理にしなくても充分に生活できる。

 俺の【アイテムボックス】の中身だけでやりくりしてもそこそこの額がポンと稼げるのだ。

 先日の抗議と指名依頼拒否によりハンターギルドの顔を潰したと言われたが、取るべき手段をとっただけの話だ。

 何故問題のありそうな()()を紹介したのか?

 それに対する謝罪を一切行わずに何故こちらに仕事を振ってくるのか?

 そういった質問には一切返答がない。

 シュシュフロッシュに関してはハンターギルドではなく薬師ギルドと商人ギルドを通して販売した。

 それに対しての苦情はすぐに来たが、無視する。

 一度に沢山出しすぎても値崩れを起こすので、数匹ずつ売っている。

 ついでに希望の薬草や素材などがあればうちのクランに声を掛けてね、と告げておいた。


 あとお知り合いの貴族の方々からは「力になるよ」「処分しようか?」「やっとく?」などと恐ろしいお言葉がちょいちょい出ているが、より状況が悪化しそうなのでご遠慮いただいた。

 なによりエデルトルート様からのお言葉はほぼ皇妃様からのお言葉と同意である。

 この国で一番尊い女性はおそらく大変お怒りなのだろうと思われる。

 恐ろしい事この上ない。


 シュレ様がドドレライスデンに行ってしまった為、皇帝からは別の側近さんが担当になってくれた。

 ヒエロニムス様というお名前だけ伺っている。

 見事な赤毛の偉丈夫であるが、文官なのだそう。

 爽やかな笑みと分厚い筋肉を装備したボディ、ジャックの隣に立っても見劣りしない体躯。

 なのに文官。

 …………?

 脳が情報を拒否して混乱してる。

 確かに深いグリーンの瞳には知性が感じられるし、連絡事項や俺たちに接する態度はシュレ様の時と違和感もない。

 ただ、頑なに爵位と家名を名乗られないのが余計に怖い。

 彼からも「何かあれば頼りなさい」と言われているが、今のところは大丈夫ですとだけ返事しておいた。

 ありがたいけど正直頼るのが怖い。



 下着店は共同経営なので別だけど、雑貨屋はウチのパーティのお店なので、色々なことにかなり融通が効く。

 オーランドや他のパーティは魔物素材の仕入れ、ヤンスさんは経理補佐、エレオノーレさん、ジャック、デイジー、カトライアさんは商品研究・作成をすれば店頭に出ず安定してお金を稼げるし、今あるクラン貯金だけで数年は生きていける。

 もっと言えば俺の貯金を解放すれば、クラン全員を贅沢しなければ一生養える程度には貯まっている。

 とはいえ流石にそれが良いことではないことはわかっているからやらないけど。

 勿論他のクランメンバーも協力してくれているし、彼等は普通にクエストも受けている。


 実際に働いてる店員やバイトもいるけど、やっぱりクランメンバーがいるといないとじゃ稼ぎが全然違う。

 なんたって仕入れはほぼ無料(タダ)だもんね。

 そして手に入れた物を劣化させずに大量に保管できる【アイテムボックス】さんに、間違っても違う素材の混じらない安定した品質。

 元々店を利用していたお客様達からは大絶賛である。

 ぶっちゃけメインが商人、ハンターは副業です。戦闘も出張もできるよ?みたいになっている。

 そんな中、元々上位の大店の店主などはしっかり情報収集しているので変な言い掛かりは付けてこないし、なんだったら逆に融通を利かせてくれて恩を売ってくる。

 仕方ない事だし、実際助かるし、後程何かで恩を返すしかないだろう。

 とりあえず季節外れの果物盛り合わせを御礼として届けておいた。


 人の噂も七十五日だし、一旦ハンターギルドとはきっちり距離を取る事にした。

 最低限登録抹消されない程度に簡単な採取クエストだけ受けて、ギルド上層部と関わらない様に努める。

 受付嬢達への差し入れはこまめに行なっている為、彼女達からの受けは良い。

 折角の機会なので商売に力を入れつつ、商人仲間や店にくるハンター達から噂を否定していく事にしようと思う。



 クランの報告に関して相談した手紙の返事が続々と届き始めた。

 一番近い場所に居るエデルトルート様からは出してすぐに返事が届いたよ。

 内容は「良いシステムだと思います。皇妃様経由で皇帝に連絡しておきます。おそらく皇室側からギルドに指示が入る事になります。準備が整ったら連絡するのでそれまでに必要な物を用意しておく様に。他に本当に困る事があれば連絡なさい(意訳)」

 大変簡潔でわかりやすく、尚且つ丁寧な文章だった。

 貴族らしさを失わず、俺達でも内容が理解できる程度に易しい言葉を選んでくれている。

 “必要な物”は別紙で封入されており、書き方や何故必要なのか、などまで詳細に説明されていた。

 その指示に従ってオーランドやパウルさんが色々書類を書き上げていく(他人任せ)


アウグステンブルク(シュレ)様だけでも驚いたのにモンベリアル伯令嬢(エデルトルート様)にまで伝があるだと……っ?!」


 届いた手紙の署名を見たパウルさんたちが目を回していたが、全て偶然と成り行きです。

 俺としては本気で予想外でした。

 ハンターとしての実力では無いから安心してください。

 普段から「もっと頼れ」と声を掛けていただいているのだ。

 こういう社会の仕組み系は頼るに限る。

 でも、今の悪い噂に関しては一切頼らないよ。

 彼方もその辺を理解しているみたいで最後に一言だけ「本当に困ったら頼りなさい」って書かれていた。

 ありがたやありがたや。




「すまん、『飛竜の庇護』の拠点はここで良いのか?」


 雨が降りそうな昼前、乱暴に鳴らされた呼び鈴が抗議の声を上げている。

 アダルブレヒトさんからは厳重注意の印のついた手紙が速達で届いた。

 高位のハンターが単騎で送り届ける速達は中々お高く、そしてあまりにも有名だった。

 道ゆく周りの人達や店の客達が「何事か?」とこちらを覗き見る程だ。

 ぜーはーと肩で息を吐く高位ハンターはAランクらしい。

 とりあえず手紙だけ受け取り、客室に案内する。

 冷たい水と濡れタオルを渡して食事が取れるか確認したら、今はちょっと無理だそうだ。

 水を飲み、濡れタオルで顔を拭った後、ホッと一息ついた彼は既に疲れからかうとうとと瞼が重そうな様子。

 水差しとコップをベッドサイドにのせ、気にせずとにかく休むように言って部屋を出た。

 扉が閉まるかどうかというタイミングでベッドに重い物が落ちる音がして、大きないびきが聞こえてきた。

 お疲れ様です。


 近くにいたイルマに声を掛け、起きた頃を見計らって食事を持っていく様に指示を出す。

 ウルリケにはいつでもお風呂に入れる様、用意しておいてもらう。

 お湯は一言言ってもらえれば俺がすぐに張れるからね。

 着替えとかアメニティとか色々準備しておいてもらう。

 絶対にやらなくてはならない訳ではないが、ハンターの速達を受け取った場合、出来る限りの歓待を行うのが慣例らしい。

 普段利用するのは貴族とかギルドの上層部ばかりなので個人で受け取るのは珍しい事なんだとか。


 そんな高いお金を支払って送ってくれた手紙はその分ぶ厚い。

 中には「クランに関してはとても良い仕組みだと思われる。自分の方から国に対して働きかけるので安心して待っていろ。あと、何か色々面倒な事になっているらしいな。帝都のギルドの対応はおかしい、諦めずにそのまま無視し続けておけ。其方のギルドマスターを審問会に掛けてやる。そして今年もまた大切な愛する私の奥さんの為に愛の花を作ってくれ(意訳)」と書いてあってなんとも言えない気持ちになった。

 相変わらず奥さん大好きだな。

 今年は春の花を花束にしたいんだってさ。

 そのうちヒメッセルトのダンジョンに潜って良さげな宝石を掘り起こしてこようかね。

 あそこもかなり今アツいダンジョンなんだよね。

 高品質な鉱石がたっぷり採れる上に、有用なマジックアイテムが結構沢山出てくるらしいし、結構時間が経っているのにまだ攻略されたという話は流れていない。


 そして最後にシュレ様。

「エデルトルート嬢に連絡したのであれば間違いないですが、念の為私からも皇帝に連絡しておきますね。あ、そうそう。例の彼は犯罪奴隷として立派に働いていますよ。日に何十度も命令違反で罰を受けている様です。元パーティについては各ハンターギルドにこの冬の間の行動と、この春の行動を報告してあります。今後お仕事が来るといいですね(意訳)」


 これ読んだ時俺は全身がブルブルと震えた。

 だってシュレ様が彼等に対して注意した事も叱責した事もないんだよ?

 最初のオッペケの対応以外嫌な表情を見せた事すらない。

 なのにこの流麗な文字列の向こうにとんでもない怒りが透けて見えるんだ。

 オッペケは指名依頼が終わり次第心を折って投獄からの奴隷落ち、明確な行動は取らなかった為罪に問えない『三剣の華』は首に縄をかけられて放流されるんでしょ?

 次に何か問題を起こした時点でそれがきゅっと締まるんだ。

 おそらくオッペケ野郎の行動で隠れていて表沙汰になっていないだけで彼女たちも充分に非常識な行動をとっていたはずだから、縄が締まるのはそう遠い事では無いだろう。

 どっからどう見ても四面楚歌。

 むしろあの状態でよくAランクにまでなれたと思うけどね。

 どの街に行っても「あなた方に任せられる仕事はありません」って言われ、Aランクなのに常設採取とかしかさせてもらえないのではないだろうか?

 それって貴族的な彼等にとってはすんごい屈辱だと思うんだけど、多分それも狙っているんじゃないかな。

 ホワホワして見えたけどやっぱりシュレ様はお貴族様だった、と理解らされた。

 味方で本当に良かった。

 でもいつ敵になるかわからないから怖い。

 絶対に敵対しない様に頑張ろう。


 そんなこんなでとりあえずは現状維持、お偉い方達の結果待ちになっていた。


 いつも俺不運を読んでいただき誠に有難うございます。

 いいね、ブックマーク、評価、感想すごく嬉しいです。

 オッペケ話思っていた以上に反応があって驚きました。

 書いている作者も驚くくらい長くなっており、イベント毎の間話ではなく本編としての間話に組み込むべきか悩んでいます……。

 あ、誤字報告も助かります!何度見直しても漏れがあるのホントなんで?(見直し出来てない証左)

 本当にありがとうございます。

 皆さんのお声を励みに日々頑張っております。


 しばらくは新商品のターンです。

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― 新着の感想 ―
自分たちが権力があり、相手が黙っていうこと聞くしかないと思ってる連中なんだから それ以上の権力で殴り倒されても自業自得というやつだよね
・現在商人達にも、ハンター達の噂は広がっていて、 ・急に皇宮御用達になったのはそういうことか、みたいな目でまた見られている。 そもそも、キーマンであるキリトさんが、冒険者であり、同時に傑出した商人・…
ギルド長、視野が狭すぎるね 腕っぷしでのし上がってきたハンターがランク上げて引退したのをギルド長に据えたか、或いは木っ端貴族の三男坊あたりがコネでなっているパターンかな
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