表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
206/224

マッピング! 5


 地下三階へ降りてきた。

 ここも人工的な通路に灯りで、地下二階と同じ様な雰囲気だ。

 しばらくはこの感じが続くのだろうか?

 これが何度も続くと今何階にいるのかわからなくなりそうだよね。

 こういうのなんていうんだったっけ?

 ゲシュタルト崩壊?

 あれ?違う?

 うん、まぁなんでもいっか。


 この階はまずグンターさんに写させてもらった地図を頼りに、教えてもらった場所まで行く事になっている。

 それが終わってから改めてマッピングしながら移動するのだ。

 言われた場所にはキチンと隠し部屋があり、開けられた宝箱のみがその場に鎮座していた。


「残念。やっぱり入ってなかったな」

「まだ復活してないだけかもしれないだろ?」

「回収されて一年近く経ってるんだ。本来ならショボくても何かしら入っているもんなんだよ」


 なんとなく予想していたが、その中に宝物やマジックアイテムは入っていなかった。

 オーランドが復活前説を説くが、ヤンスさんに一蹴される。

 多分このダンジョンの隠し部屋はボーナスフロア扱いなのだろう。

 それにしても地下一階の宝箱はフェイクとか、開かなくなる様な嫌なギミックがあったけど、ここは地上一階と同じで特に罠とか無かったんだな。

 すごく謎。

 どんなルールなの?

 宝箱を【鑑定】しても何も引っかかるものはない。

 ただ、空の宝箱、と出るだけである。


 とりあえず一度隠し部屋を出て、このフロアを探索してみる。

 降ってきた階段に戻っていつも通り左回りに進む。

 隠し部屋に向かっている間はそこまで出会わなかったが、地下二階に続き、中々手強い魔物が多く現れるようだ。

 狼系の魔物が群れで出てきたり、オーガブレーダーマウスとダブルホーンラビットの上位種であるダブルホーンヘアーが現れるようになった。

 ダブルホーンヘアーはダブルホーンラビットよりも大きく、力が強い。

 中型犬くらいの大きさがあり、ひと蹴りの威力が段違いだ。

 ヤンスさんが避けて蹴られた後ろの壁にヒビが入っていた。


「ぐっ!この組み合わせはキツいな……っ」


 オーガブレーダーマウスを避けながら大剣でダブルホーンヘアーのキックを防ぐオーランドが弱音を吐く。

 弱音を吐きつつもしっかりとガードしていて、怪我などは無さそうだ。


「くっそ……っ!ちょろちょろちょろちょろと!」

「上より、強い」


 ジャックとヤンスさんがオーガブレーダーマウスを狩っているが、地下二階よりも素早さや防御力が高いらしくなかなか倒せずにいる。

 地下二階と違ってダブルホーンヘアーは一匹しかいないからまだなんとかなっているが、これが複数匹になったらかなり厳しくなるのは間違いない。

 少なくとも俺やデイジーにはヤツの攻撃を防げない。

 大きく重量のあるウサギがポンポンと軽快に飛び跳ね、思いもよらない方向に曲がって飛んでくる。


 角に当たらなくても充分なダメージを与えられる事をダブルホーンヘアー自身がわかっている。

 オーランド達には角をたてて向かっていくが、俺達には体当たりで攻撃をしてくる。

 今はなんとか魔法で壁を作るのが間に合っているけど、これ以上増えたら無理だ。


 必死で武器である錫杖を振り、距離をとって魔法を放つ。

 エレオノーレさんの弓でダブルホーンヘアーの頭蓋を砕いてからは大分楽になった。

 風をぶつけて動きを止めさせ、ヤンスさんとジャックが切り捨てる。

 時間は掛かったものの、なんとか無事倒せた。

 倒した後で、雷では無い追尾系の魔法にしておけば良かったのでは?と気付いたが、後の祭りである。

 ドロップアイテムのうさぎ肉を拾いつつ、皆の怪我や武器防具の状態を確認する。

 打ち身や擦り傷なんかはデイジーが手早く治していた。

 怪我は小さくとも、治せるうちに治さなくてはならないのだ。

 下手に我慢する方が周りに迷惑をかけてしまう。


 それにしても、このフロアをグンターさんは一人で攻略していたのかと思うとため息しか出ない。

 俺たちは六人でなんとか、といった所だろうか……いや、結構カツカツな気がする。

 今度会ったらどうやってあの厄介コンビを倒してたのか教えてもらおう。

 これはしばらくここでレベル上げやトレーニングしてもありかもしれない。

 できたら解呪の宝玉が欲しいけどね。

 先に安全に進む為には必要な回り道な気がする。


 そしてここでも一番の問題は、このフロアも何故か希少種と言われるシュシュフロッシュが()()に湧いていることだ。

 ヤンスさんに至っては「金が降ってきている!」と大喜びだが、俺にとっては死活問題である。

 奴等は相も変わらず俺目掛けて抱きつきにくるのだから。


「ぅひぃーーーーーっ!!」

「うるせぇよ。少しは慣れろ」

「無理ですーっ!は、はやく取ってくださいぃーっ!」


 右の耳辺りに飛びついてきたシュシュフロッシュに悲鳴を上げると、ヤンスさんが悪態をつきながらひっぺがす。

 ぞわぞわぞわっと怖気が背中を走り抜ける。

 シュシュフロッシュは魔物と言われても隠密と弱毒以外はただの大きな雨蛙なので、倒すのはほぼ作業だ。

 「希少種だ!金になる!」と喜んでいたのもはじめのうちだけで、これだけたくさん現れては希少性のカケラもないと既にウンザリしている。

 価値が下がる事にため息を吐きながらもサクサクと狩っていく仲間達から、自分が残念なものを見る目で見られている気がするが、苦手なものは苦手なんだ。

 こればかりは仕方ないと思う。


 引き剥がしてくれたあとに急いで洗浄魔法を使っても、そこには張り付かれた感覚がやはりまだ残っている。

 こんなのがまだ続くなんて耐えられない!

 ごしごしごしと強めに擦って残っている感覚を消す。

 探索魔法はこの辺にいる、とは表示してくれるが上下左右どこにいるかは教えてくれない。

 自分で作った魔法ではあるが、使えないにも程がある。

 これは探索魔法をバージョンアップさせるしかないだろう。

 どこにいるかがわかれば魔法で攻撃する事も、避ける事もできる事だろう。


 それからも何度も襲撃をくらいつつ、なんとかセーフティエリアに逃げ込めた。

 安全を確認できた為、全身に長めに洗浄魔法を掛ける。

 あちらこちらに(ヤツ)の何かしらが残っている気がして敵わない。

 宿に戻ったら絶対に風呂に入るんだ。

 絶対絶対入るんだ!

 押すな押すなじゃないからね!絶対だからね!


「うん。大丈夫」

「じゃあごめんけどよろしく」


 さて、食料や道具は出し終わったし、ジャックやデイジーに食事の準備を任せて、探索魔法をカスタマイズしていこう。

 野営の準備をスピードで終わらせて天幕の中で胡座をかいてどう変更するか考える。

 まず、現状把握から。

 ゲームのイメージで出したこの魔法は、視界の右下に半径二十五メートル分くらいの円形で、簡単な地図と仲間と敵とその他が表示される様になっている。

 地図に意識を持っていくと大きく表示されるし、触ってピンチ操作すれば拡大縮小が可能である。

 表示されるエリアが広くなればなるほど引き出される魔力は大きくなる。


 今まではこれで問題なかった。

 でも、これだと敵がどの辺りにいるかはわかっても、近づいて目視で確認しなくてはいけないのだ。

 これを簡単な地図ではなく、詳しい地図にすることが出来ないだろうか?

 例えばゲーム制作でよく見る透過した風景の線画みたいな。

 テクスチャを置く前みたいな、3Dのあれ。

 そうすればどこにいるかも見つける事が出来るはずだ。

 3Dになれー3Dになれーと念をこめながら地図を拡大していくと、視界の範囲内くらいに入った途端、画面がパッと切り替わった。

 現在の風景がほんの少し透過している感じで、天幕の中にいても、その向こうが透けて見え、岩陰とか天井の上に隠れている物とかまで見えるようになった。


「よしっ!成功だ!」


 魔力もそれ程負担は無く、常時使用していても問題ないほどである。

 また、ダブルタップをする事で一気に画面を切り替える事が出来るようにした。

 これにより、赤丸が近づいてきたら切り替えてどこにいるかを簡単に把握できる。

 ついでに一度会った魔物は、赤丸をさらにダブルタップする事で名前がわかる様にしておいた。

 魔力を沢山込めれば赤丸の横に名前が載るようにも出来る。

 なんか某イギリスの魔法学校の双子が持ってた地図っぽいな。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ