マッピング! 1
ストックがヤバくて時間に追われながら書いています。
後程時間ができたら加筆修正するかもしれません。
翌日改めてダンジョンに潜り、マッピングをしながら地下に向かう。
昨日の食事のあと、上に登るか下に潜るか色々話し合った。
結果としては、教えてもらった場所から確認することになった。
一階は地図も出来上がり、埋まっていない箇所ももう無い。
地図に従い、下り階段に向かってまっすぐ進み、すぐに地下一階へ。
ここの階段は手すりが付いていて大変降りやすい。
階段を降りてすぐは少し広めのホールの様になっていた。
明るさは特に変わらず、松明があるのみとなっている。
ほんのり薄暗く、見通しはあまり良く無いが、全く見えないということもない絶妙な明るさだ。
地下一階からは弱めの魔物が現れ、簡単な罠も仕掛けられていると言う。
「にしてもこれは雑すぎませんか?」
「これに引っかかる方が難しいな」
俺たちの目の前には罠があった。
棒に箱が引っかけられ、その下にあからさまに置かれた宝箱。
その宝箱に触れたら箱が落ちるタイプの罠である。
小学生の夏休み読んだ本に影響されて、雀を捕まえるのにザルと米を使って作った事あるわこれ。
ちなみに宝箱を鑑定してみると、ミミックだった。
踏んだり蹴ったりの罠…なのか?
絶対誰も引っかからないと思うんだけど。
このフロアも左の壁を目印にぐるりと回って地図を作る。
途中で魔物が現れるも、俺とデイジーですら容易に倒せる程に弱い魔物ばかりであった。
半日ほど掛けて一周し、地図はほぼ完成した。
宝箱も二つ程見つかったが、中身は薬草が数本だけのしょぼさだった。
どうやらここのダンジョンは宝箱が復活して次に開けられる時間が長ければ長い程良い物が手に入る仕組みらしい。
この薬草も後何年か放置していたらもう少しレア度の高い物が手に入ったりするらしかった。
通りすがりのベテランハンターが教えてくれたよ。
せめて開ける前に教えて欲しかったなぁ。
一息ついて周りを見回すと、ざわざわとあちこちに人の気配を感じる。
なんでだか今日は浅層である一階や地下一階にレベル不相応なハンターが沢山いた。
本来ならもっと深層や高層を攻略しているであろうガッチガチに装備を固めた人達がウロウロしているんだよ。
気になるよね。
お目目をキラキラさせながら「私、気になります!」って言っちゃいそうだ。
「昨日はこんなにいなかったと思ったんだけど……?」
「隠し部屋が見つかったからだろ?自分達も見つけたら一攫千金だからな」
なけなしの理性で願望の代わりに疑問を口にすれば、オーランドが説明してくれる。
なるほど昨日一階で隠し部屋を俺たちが見つけたからなのか。
そう思って改めて見回せば、壁や床を丹念にチェックしているハンター達を見つけられた。
グンターさんの話がどこまで出回っているかはわからないけど地下三階と地上一階だから確かに探そうと思うならそうなるよな。
でもなー……このフロア隠し部屋無さそうなんだよな。
書き上げた地図を見て、隠し部屋がありそうなスペースを見つけられないのだ。
念の為隠し部屋がないか考えながら探索魔法に魔力を注ぎ、範囲を広げてみる。
「うわっ!」
なんと塔の円周外に一つだけおかしな部屋がある。
円の外に、ぽこっと部屋がくっついているのだ。
地下だから出来る事なんだろうけどさ。
普通そんなところに部屋があるとか思わないじゃん?
見つかりっこなくない?
本っ当ーーぉに、ダンジョンって性格悪いよな。
ダンジョンマスターとか居たらぜってぇ友達になれねぇや。
「ちょっと皆ごめんけどついてきてもらって良い?」
「お?なんか見つけたか?」
「うん、多分ね」
ふわっと誤魔化しつつ怪しげなエリアに向かう。
外周だからだろう。
そちら側の壁は誰も確認していなかった。
意識して見れば、確かにうっすらと四角く区切られたラインが見える。
さっき通った時は気が付かなかった。
【鑑定】すると隠し扉と表示される。
なんと鍵はなく、押し込んでスライドさせれば扉は開くらしい。
「隠し扉みたいだ」
「罠が無いかチェックするからちょっと離れてな」
俺と立ち位置を入れ替わったヤンスさんが目視と道具、指先などを駆使して確認している。
その間に部屋の中の確認をする。
鑑定は便利だけど、それだけに頼りすぎてはいけないとヤンスさんに言われたので、二重でチェックする様にしている。
ぶっちゃけ俺の鑑定は俺が知りたい事しか表示してくれない。
情報が足りない事が起こりうるだろう。
確認には確認、大事な事だ。
「「中に魔物がいるな(いますね)」」
同時に口にして扉から離れる。
中には三匹の魔物がいた。
懐かしのオオイワトカゲである。
「石トカゲ系が複数だ」
「オオイワトカゲが三匹です」
「あら、あのクソトカゲ野郎なのね?」
魔物の報告すればエレオノーレさんが恐ろしい笑顔を浮かべた。
おそらくジャックが腕をやられた時のことを思い出しているのだろう。
今思い出しても、肝が冷える。
ジャックを失ってしまうかも、と無茶苦茶怖かった。
奥さんであるエレオノーレさんにとってはもっと恐ろしく、そして腹立たしい記憶だったのだろう。
ヤンスさんのチェックでも罠が無いと判断され、ジャックが隠し扉を開ける事になった。
扉が開き次第、エレオノーレさんとデイジーと俺で氷魔法を放ち、オオイワトカゲを牽制、オーランドとジャックで止めを刺す流れだ。
デイジーとヤンスさんはバックアタック対策にその場に残る。
「開ける」
ジャックの声に皆が真剣な表情で頷く。
俺たち三人は呪文をキープしてジャックの影に陣取っている。
魔法を放ったら即横にズレ、オーランド達が通れる様にする。
ゴゴン、と重たい音が鳴り、扉がゆっくり開いていく。
「「「アイスバレットッ!」」」
扉の向こうから駆け寄ってくるオオイワトカゲに向かい三人で魔法を放つ。
一番左のオオイワトカゲにエレオノーレさんのアイスバレットが当り、動きを止める。
中央のオオイワトカゲには、デイジーのアイスバレットは当たらなかったが、目の前に落ち、地面を凍らせる。
急に滑る床に足を取られて派手に転んでいた。
俺のは一番右側の鼻っ面を捉えたが、後方に流れてしまう。
そこにジャックとオーランドが飛び込み獲物を振るう。
エレオノーレさんのほぼ仕留めているオオイワトカゲを放置して中央と右側の二匹を狙った二人。
勢いよく振り下ろされたバトルアックスがトカゲの頭蓋をカチ割り、炎を纏った大剣が首を薙ぐ。
「エレオノーレ!」
「エリィッ」
「任せて!アイスバレットッ!」
オーランドとジャックの声に応えるようにふたたびアイスバレットを放つエレオノーレさん。
今度は確実に息の根を止め、全ての魔物が床に吸い込まれる様に消えて、後にはドロップ品が数点落ちていた。
部屋の中や、廊下を確認して魔物や他のハンターがいない事を確認したら床に転がった肉や皮、魔石を拾う。
ヒメッセルトのダンジョンよりドロップがシブい気がするのは気のせいだろうか?
トン、と軽く肩を叩かれて振り返ればヤンスさんが部屋の奥を指さしていた。
「キリトちゃん、アレ……」
静かに指し示された先には宝箱が鎮座していた。




