いざ罪と罰のダンジョンへ! 4
明けましておめでとうございます。
今年も一年頑張ります。
どうぞよろしくお願い致します。
区切りの関係で少し短めです。
回復の宝玉
魔力が無くとも怪我を回復させることの出来る
宝玉。四肢の欠損程度であれば時間が経ってい
る怪我でも問題無く回復する事が出来る。使用
回数は五回。
「〜〜〜………っ」
期待がシュルシュルと音を立てて萎んでいく。
ガックリと地面に両手をついて絶望感に耐える。
いや、うん。
わかってた。
わかってたよ。
俺が欲しい物がこんなにすぐに出てくるわけないよね。
うん。
わ、わかってた。
……うん。
いや、うん、すっごい良いアイテムなんだよ?
良い、マジックアイテムーーー……なんだけどさ。
ねぇ?
こう、コレジャナイ感が強過ぎてさ、なんか俺、涙出て来ちゃう。
男の子だけど。
俺の顔を見た二人は瞬時にコレが『解呪の宝玉』ではない事を理解したのだろう。
そっと背中に手を添えてくれた。
俺は『回復の宝玉』を【アイテムボックス】に入れると静かにその部屋を出た。
ざわざわと騒がしい廊下にはギルド職員も来ており、オーランドとヤンスさんに幾つか質問を投げかけ、「隠し部屋」「宝箱を開けた」の単語を引き出すとがっしりとオーランドの腕を掴み、凄みのある顔で微笑んだ。
「ぜひご同行ください」と口に出していたが、俺には「絶対に逃がさない」と聞こえた気がする。
オーランドがわかったと言い切る前に速攻で街のギルドまで連れて行かれてしまった。
「また隠し部屋とは……っ!あのダンジョンはどれだけの富があると言うのだ!」
「何が出たのでしょうか?また宝玉ですか?」
ギルド職員の説明を聞いたギルドマスターと副マスターが同時に喋り出す。
ドワーフと見紛う程のビア樽の様な体型に、申し訳程度の頭髪を貼り付けている五十代くらいのおっさんがギルドマスターで、対照的に骨と皮だけのヒョロリと背の高い四十後半のおっさんが副マスターである。
俺達を連れてきたギルド職員が興奮して同じ内容を何度も繰り返していて、正直とてもうるさい。
ちなみに俺たちはこの部屋に来てからまだ一言も発してはいない。
隠し部屋の入り口前でオーランドが職員に少しだけ事情を説明しただけで、ここまでの大事になってしまった。
これで何が出たかわかった日にはヤバそうだ。
「それで?何が出たのか教えてもらえないだろうか?」
「……宝玉だと思います」
「「おおおおおおおっ!」」
ギルドマスターが身を乗り出して聞いてくる。
一応、ハンターギルドでは統括をしているだけで、強制的に情報開示をする権限は無い為、下手に出て問い合わせをしているが、目が「正直に答えろよ!」と言っている様で恐ろしい。
オーランドもヤンスさんも俺を見て頷くだけなので俺が返答するしかなく、「是」と答えれば三人が湧き立つ。
オーランドに視線を送り、出して良いか確認してから『回復の宝玉』をテーブルに置いた。
蒼くほんのりと発光しているその宝玉は中にみっちりと魔力が詰まっている事が分かる。
どう見ても「大きなビー玉」とは言えない、品の様なものがあった。
ギルドマスター達が歓声を上げる。
「こちら鑑定の魔道具にかけてみても良いだろうか?」
「使用料金によるな。こっちは治安の悪い街のせいで財布がカツカツでね」
ヤンスさんがマジ顔で大嘘を吐く。
ホントこの人の頭の中どうなってるか知りたいわ。
息をする様に嘘吐くよね。
実際に昨日起こった事を論って、払わなくて良いお金を払ったのだ、など鑑定の魔道具の使用料金など払えない、と宣う。
いや、確かに高いお金を払って借りたお宿が覗き野郎の巣窟だったりしたけどさ。
それ、ギルドマスターには関係なくない?
あ、だからここで鑑定したいならお前らが使用料金払えよってこと?!
帝都に戻ったらそれを注意喚起する?
あ!脅し!?それ脅しか!
女性ハンターが来なくなればギルドの儲けが減るもんね?
男だけのハンターパーティがどれだけあるだろうか?
少なくとも俺の知っている上位パーティは女性ハンターが少なからずいた。
その人達が来ないで、今この街にいる女性ハンター達のほとんどが去ってしまったら……ダメージが大きいのはここのギルドだ。
え、えげつねぇぇ……。
案の定、今回だけは特例としてギルドが使用料を負担する事になった。
まあ、わかっていた事だけど、回復の宝玉だと鑑定結果が出て、ギルドが沸き散らかした。
先日出た解呪の宝玉も相まって役に立つマジックアイテムが隠されているのだろうと盛り上がっている。
解呪の宝玉が地下三階、回復の宝玉が一階という事で、もしかしたら各階に一つ宝玉が隠されているのではないか?いやいや、奇数階かもしれないぞ?と俺達をほったらかして盛り上がるおっさん二人。
「そもそも何故君達はあそこを探そうと思ったのだ?」
「「たしかに」」
「オレたちは地図を買わなかったからな。一階から自分達で作っていくことにしたんだ」
「金が無いからな」
オーランドの言葉足らずを補強する形で嘘を塗り重ねるヤンスさんの手口たるや。
絶対敵対したくない。
「そしたら地図におかしな空白があったから隠し部屋ではないか?と近辺を探してみたらスイッチを見つけてな」
「成程、その地図を見せてもらう事はできるか?」
オーランドがチラリとヤンスさんを見て、ヤンスさんが俺に向かって頷く。
それを確認してから【アイテムボックス】から書きかけの地図を取り出してギルドマスター達に見えるように広げる
「これは……」
三人が息を呑み、真剣な目で地図を見つめる。
まだどこに何があるか程度しか書いていないし、詳しい情報も書いてはいない。
なんだったらまだ探索していないエリアや、隠し部屋も空白である。
「すまない、この地図を買い取らせて欲しいのだが良いだろうか?」
ギルドマスターが買い取らせて欲しいと言うと、ヤンスさんがキラリと目を光らせる。
買取額はおいくら?え?全然足んないけど?ヒメッセルトではこんくらいだったんだけど?などと煽りつつ、追い詰めていく。
地図のクオリティが違うとか、ワンフロアではなく三階分プラスアルファだったとか余計なことは言わないでおく。
お口にチャックだ。
今まで散々叱られてきたからな。
俺だって成長するのだ。
そうして金額が決まれば、自分達用に控えを取り終えてからの売買にする交渉を始める。
少し値下げして、許可が出た為、隣の会議室をかりて丁寧に写していく。
一度書いている内容なので作業自体は簡単だ。
折角なので最後まで仕上げてしまおう。
ギミックについては歯車マークを使用して枠外に図案付きで説明文を書いておく。
後でギミックのハンコも作らないといけないな。
そんなことを考えながら地図を仕上げた。
会議室から出ると、回復の宝玉も売って欲しいと言われたが、それは全員即答で断った。
ヤンスさんに至っては大金貨を千枚単位で持ってこなければ話にならないなどと、とんでもない断り方をしていた。
ギルドマスター達も「やっぱだめだよね」とあっさり引き下がり、その代わりここの領主には回復の宝玉が出たと報告するとだけ伝えてきた。
そして、ここの領主は強欲だから早めに街を出た方がいいかもしれない、献上しろとしつこく言ってくるかもしれない、と助言してくれた。
本当は他のフロアも俺に地図を書いて欲しいんだけど、と付け加えられたのが少し嬉しかった。
領主の案件に対してはオーランドが「俺達が持っていてもトラブルに巻き込まれるだけだから皇帝に売るつもりだ。だからそれを横取りなんてしたら皇帝からどう思われるか考えておけよ、とお伝えください」などと強気で答え、周りを驚かせていた。
後で聞いたらヤンスさんからの指示だったらしい。
パーティリーダーとしてこう言えと言われたんだってさ。
それなら納得だ、あーびっくりした。
ありがとうございます。
皆さんのおかげでとうとう200話まで辿り着きました!
ストックは激ヤバですが、頑張って書き溜めていきたいと思います。
200話記念のお話が書きたいところですが、申し訳ありません、ストック増産を優先させていただきたいと思います。
いずれ、ストックが溜まれば記念の間話を書いていきたいと思います。




