17 オリハルコンに戻ったら
防具屋オリハルコンに戻るとダイニングの机に突っ伏して寝ているレジーナがいた。
彼女の前には出来上がったデザイン画が三枚並んでいた。
起こさない様にそっと紙を手に取り、見せてもらう。
一枚目はまさに毛皮のロングコートって感じで、腰のあたりを毛皮のベルトで絞り、Aラインを作っている。
少し引き摺るくらいの長さをコートから温風を出す事で浮かせ、汚さず、引き摺らず、ふんわり翻して優雅さを出す。
二枚目はダッフルコートを元にしたデザインで、縁取りした毛皮をつなぎ合わせ、あの独特のボタンで引っ掛けて留める形になっている。
大きなフードの内側にファーがあり、むくむくモコモコでとても可愛らしいデザインだ。
これはチラつく位の雪であれば吹き飛ばして纏わり付かれない様に風魔法を使用するらしい。
周りを温風が包み込むので暖かく快適に過ごせるようだ。
三枚目はふわりとしたポンチョの様なデザインだ。
襟を大きく取る事で豪華さと、小顔効果を演出。
飾りボタンに魔石を使用して熱を生み出し、グリーンフライフォックスの風でポンチョの中を暖かく保つ様だ。
風量の調節をする事でポンチョのラインを調節できて、快適さと可愛らしさを両立している。
そのどれもが詳しい魔力回路や使う魔素材について細かく書かれていて、俺の知識では何か難しそうな専門用語が並び立てられているようにしか見えない。
唯一わかるのは必要な毛皮の枚数だけ。
(俺の落書きから良くここまでデザインと機能性を仕上げたな……すげぇ技術だ)
感心しながら紙をそっと伏せる。
横から覗いていたエレオノーレさんも感嘆の溜息を吐いている。
「凄いわね、こんな斬新なデザインと画期的な機能ばかり……」
俺とは違い機能の計算や仕組みなんかもわかるようだ。
文字を追っている目が真丸になっていて可愛い。
頑張ったのね、とレジーナの頭を撫でる。
むずがる様子にさっと手を引き、こちらを見た。
「本当キリトって色々おかしいわよね。ただの一般市民がこんなデザインを知っていたり、魔法が使えなかったはずなのにとんでもなく高位の魔法を多重使用したり。……一度解剖してみたいわね」
最後にボソリと付け足された言葉が恐ろしい!
冗談だと信じたい。
「デザインはそもそも俺の世界で出てたものだし、魔法は使えなかったけど、概念はあってアニメとか漫画とか……あー、と、劇とか書物とかでよく出てくるから。それにスキル【魔法】ももらってるし」
「神様が与えたからあんな無茶苦茶が通るわけ?女神様ももう少し考えてスキルを与えてほしかったわ!」
しどろもどろな俺に小声で噛み付いてくるエレオノーレさん。
ん?女神様?
そうか、大上神様が男だって言ってないからか。
私だってアレやコレが欲しかった!とぶちぶち呟いてジャックに宥められている。
それを押しのけながらヤンスさんとオーランドが来て両サイドから肩を組んでくる。
「とりあえず、まずはキリトちゃんが何できるかから確認だな〜。それが終わったら明日からクエスト出発!」
「まずはどうやって戦うかだよな?剣は使えないって言ってたから魔法か?」
「何言ってるの?魔法だけで戦える訳ないでしょ?すぐ魔力が切れておしまいじゃない」
「弓、難しい」
「とりあえず荷物置いたら広いとこで色々確認してみようぜ」
荷物を置いたら街の外で攻撃方法を模索するらしい。
死なない為にも真剣に頑張るぜ!
荷物はアイテムボックスに放り入れておいた。
そして連れられるままに街の外へ出て(外に出る分には特になんの確認も無かった)近くの平原に。




