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間話 ○視点 ヤンス 【不用心な天才】

 この度ローファンタジー日間ランキングの末席を汚しまして、ドカンと閲覧数が増えて戦々恐々としております。

 更にまさかの総合評価1000ポイント達成いたしました!

 読んで下さった皆様、本当にありがとうございます!

 これで二章のラストまで駆け抜けられます!


 こちらは1000ポイント記念の間話になります。

 これからも頑張りますので、どうぞよろしくお願いします。


 ある日、狩りから戻ると知らない人間が仲間と楽しそうに談笑していた。


 パーティの仲間だけだと緩んでいた心に、冷水を浴びせられた気分だ。

 “ソイツ”は見るからに接近戦はからきしダメそうな体型をしていた。

 それでも、不意をついた背後から一刺し、くらいは出来そうな少年だった。

 更に、無手でここにいるという事は、魔法が使えるという事だろう。

 平民や農民でさえ森に来る時はナイフの一つも持つものである。

 魔力がある者は油断ができない。

 いつ攻撃魔法を放ってくるか、わからないからだ。


 こういう事があった場合、連れてくるのは大概オーランドだ。

 用心深く身構えつつ、声を掛ける。

 ふざけているように見せ、いつでもナイフを取れるようにしておく。

 久しぶりなのでどうにも表情が強張っている気がするが、警戒を露わにするよりは余程マシだろう。


「“迷い人”だよ。さっきそこの森で会った。俺が毒キノコ採取しそうになったのを止めてくれたんだ」


 やはり連れてきたのはお前か、オーランド。

 何度言ったら覚えるんだお前は!

 いい加減警戒心ってものを覚えろ!

 どこの迷い人がこちらの世界の毒キノコに詳しいんだよ。

 この大嘘つきめ。

 そしてオーランドはアホだ。


「へぇ、毒キノコを……」


 冷たい警戒が身を包む。

 他人を信用し過ぎてはいけない。

 特にこんなわかりやすい嘘をつく奴は。

 その程度がバレないと思っているのか、嘘だとバレても良いと思っているのか。

 前者であれば腕に自信があるのだろうし、後者であればそれによる罠があるのだろう。


 そう思っていると奴は急に手を上げた。

 その手に何もない事は確認済みだ。

 辺りに居る仲間への合図か?それにしては辺りに気配が無い。

 気配を読ませない程の手だれという事か?

 すぐにでも動けるように腰を落としたが、肩透かしを喰らう。


「キリトって言います。今日ここに飛ばされて来たばっかりです。毒キノコは【鑑定】のスキルがあるからわかったんですよっ。俺もはじめ採ろうとしてたから」


 大汗をかきながら、悲鳴の様に説明していく。

 その姿に嘘はないように思えるが、聞き逃せないスキル名をコイツは口にした。

 【鑑定】だと?

 本当にあるのであれば確かに解るであろう。

 だが、そんな事は信用できない。

 とりあえず驚いたフリをしておく。


「ああ、それであんなにじっと眺めてたんだな!キノコと睨めっこしてたのかと思った」


 何にも考えずにカラカラと笑うオーランドには呆れを通り越してしまう。

 だが、そういう所に救われているのは確かだ。

 少しの間も目を離さないように警戒しながら、鞄の奥からとある指輪を取り出した。

 本物の鑑定持ちであるなら、これが何なのか解るはずだ。


 「あー…マジックアイテムなのは間違いないですね。一族守りの指輪ってなってます。でも守りの力は使い切られてるみたいで半壊状態です。しかも別の人が登録者になってるみたいでヤンスさんが持ってても効果ないみたいです」

「……っ!?」


 ハッとした。

 本物だった。

 念の為、登録者の名前を聞くと、あっさり答える。

 こちらの反応を見ている訳でもなく、「ただ、聞かれたから答えた」それは間違いない。

 それはここに居る誰もが知らない名前だった。

 当然だ。

 それは他国の人間の名前だからな。


 少なくとも疑っていたような人間ではないだろう。

 阿呆面で、うまいうまいと飯を食べる姿を見て思った。

 これはアレだ。

 オーランドの同類。

 単純馬鹿。

 とはいえ、まだ警戒を疎かにしてはならないと自分に言い聞かせた。


 ステータスの使い方や見方も知らない、とんでもない高位魔法を使用している自覚もない。

 本人が言う嘘のような体験談。

 妙な知識、おかし過ぎるスキル構成。

 あまりにも荒唐無稽すぎる。

 こちらに取り入ろうと考えているのであれば、もう少しマシな嘘をつくだろう。

 だからこそ本当だと思う。


 それでも警戒は緩めない。

 信用してしまうにはまだ早い。

 実際に言う通りだったとして、何か企んでいないとも限らないし、誰かに操られている可能性も捨てきれない。



 そして翌朝、一瞬にしてその警戒は瓦解した。

 何かあればすぐに対処出来るように、同じ天幕に入れて休ませたが、寝首をかくどころか一晩ぐっすり寝ていた。

 それはもう羨ましくなるくらい気持ち良さそうに、だ。

 警戒して眠りの浅かったのもあり、腹が立ったので、寝相のフリをして蹴りを一発入れる。


 それで目を覚ましたキリトは、しばらく呆けた後にーーー泣いたのだ。

 声を殺して、帰りたい、死にたくなかった、家族に申し訳ない、など恐らく無意識で溢れている言葉も相まって、あまりにも不憫だった。

 声を押し殺して、啜り泣き、感情をコントロール出来ない少年……いや、青年だったか?

 オーランドの三つ下だなんて、信じられないくらいに幼く見える。


 その後キリトの【鑑定】と機転で、依頼も無事クリアできたし、思わぬ追加報酬まで手に入った。

 一人一人にお礼を言いながら報酬を渡してくるキリトに、胸の奥がジワリと動いたりもした。


 とにかく不思議な男だ。

 泣き虫で、不運で、善良。

 年相応にすけべ心も持っている。

 にもかかわらず、女性に対して潔癖な程に紳士的でもある。

 そして、金銭感覚が異常。

 旅装を整える段階で不要品を買うとかどうかしている。

 絵の道具なんて要らないだろう?

 手に馴染むから、と値段も聞かずにその店で一番高価な杖を選ぶのも理解できない。


 気配察知が出来ないから探索魔法を作る、気軽に風呂場を庭に魔法で作る、マッピングを教えれば答えを知っているかの様な完璧な地図を作る、おかしな販売方法を提案する、馬鹿みたいなサイズの鏡を作る、ドワーフに連れ去られる、男のくせに女物の下着を作る……。

 更に日常的に細かな不運に襲われている。

 オーランドが「呪われてるんじゃねぇの?」と聞けば、あっけらかんと肯定していた。

 キリトの周りに平穏という言葉は無いのだろう。

 それなのに、本人はほのほのとお気楽に、お人好しに、生きている。


 こんな金のなる木を放置してはいけない。

 世の中には「他人は使い潰して生きて当然だ」と言う人間がゴマンといるのだ。

 キリトに比べれば、アホでお人好しなオーランドだって十分に経験豊富な常識人だ。

 あんな“良い奴”は世の中の暗い事情等知らないまま生きていなくてはならない。

 守ってやらなくては、いけない。


 あの、不用心な天才(キリト)を。

 ーーー私が。

 いつも俺不運を読んでくださってありがとうございます!

 いいね、ブックマーク、評価、誤字報告、感想、本当に助かっています。

 いつも本当にありがとうございます!


 今回慌てて書いたので、少し読みづらいかもしれません。

 総合評価1000ポイント達成、ホントに本当にありがとうございます。

 ヤンスさんの霧斗との出会いから現在までのダイジェストでした。

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― 新着の感想 ―
[良い点] ヤンス兄さんのがめつさには物申したくなる時が多々あります。 が、ミスター非常識なお人好しキリトくんは放っておくと必ず何かやらかし、その結果あっという間に有象無象に群がられて付け込まれて知…
[一言] とても面白い話で、ここまで一気読みしてしまいました 霧斗はいい子過ぎて感情移入できない部分もありますがかわいいですし、何より周りの登場人物が個性的で好きです(でも、主人公の恋愛話は絡ませな…
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