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117 ランジェリーレボリューション 8

※ご注意下さい※

 「ランジェリーレボリューション」のタイトルの付くお話は、下着が話題になります。

 苦手な方は読み飛ばして下さい。

 下世話な話や、直接的な表現はほとんどありません。


 霧斗にとって、下着の研究は絵のリアリティの為です。

 断じてえっちな下心ではありません。(……多分)


 読み飛ばす方用に、あとがき部分にあらすじを載せています。


 今回はキリが悪くとても長いです。

 ドタバタな献上が終わり、一週間が過ぎようとしている。

 あの後、なんと二日後には皇室御用達の吊看板と免状が届けられた。

 よく分からず、本人確認をされ、言われるままに質問に答え、頭のてっぺんから爪先まで特徴を明記されていく。

 皇室御用達のリストに店の情報と合わせて載せられるのだとか。

 本来なら、数ヶ月の調査を経て登録されるのに、今回は皇妃様が独断で設定されてしまったので帳尻合わせなのだとか。

 取り扱い商品の確認では、ひと騒動あったものの、俺達が従順に指示に従う為比較的スムーズに調査は終了した。


「では、こちらが吊り看板だ。誠実に職務に取り組み、皇室の信用を落とさぬ様にしたまえ」

「かしこまりました。精進致します」


 何だか偉そうな文官がそう言い残し、去っていく。

 看板はあれよあれよという間に取り付けられてしまっていた。

 なんか、取り付け専用の文官さんが居て、その人達以外が取り付けたら犯罪になるんだとか。

 怖〜。

 そうして色んなことが変わった。


 まずは俺とブリギッテの仲が噂になった。

 原因は、馬車で店の前まで送られた時に、俺がブリギッテが降りるのを手伝っていた事らしい。

 単純に、全てが終わって腰が抜けてしまったブリギッテを支えて、店の中に支えながら連れて行っただけなのだが、周りからは“仲睦まじく寄り添い合って”店の中に入って行った様に見えてしまったらしい。

 中には「()()強気なブリギッテがしおらしく()にしなだれ掛かっていた」など中々に悪意のある言い方で噂されたりしていた。

 それに憤慨した俺を、ブリギッテはカラカラ笑いながら一蹴する。


「言いたいだけ言わしときゃ良いのよ。聞かれたらその都度訂正しておけば問題なし」


 と、全く意に介していない。

 笑い飛ばしていつも通り仕事をこなしている。

 俺としては、街の噂もだけど、それ以上にブリギッテの旦那さんが怖い。

 いつか乗り込んできて殴られそうだ。

 おー怖っ。


 次に、皇家御用達の看板が付いた途端、弟子入り希望者が殺到した事。

 人手不足であるから、針子の募集はする予定ではあったけれど、想定外の人数が押し寄せた。


 あまりの人数に誰を雇うか悩んでいると、ヤンスさんやエレオノーレさんが【鑑定】を使えとアドバイスしてくれた。

 アドバイスに従い人を雇う時は俺が面接をする形で【鑑定】する事にしてみて、本当に良かったと思う。

 大量の希望者のその中には『紐付き』と呼ばれる他の服飾工房の工作員や、他国の密偵、果ては変態や暗殺者等まで含まれていた。

 面接日を決めて貼り出し、その日に来た人達を二、三人ずつまとめて面接していく。

 弟子入りを希望した人には履歴書を配り、記入して来てもらってから、面接の時に提出させた。

 字が書けない者はギルドや孤児院で有料で代筆してくれていると案内すれば、読み書きの出来ない者も安心した。

 俺とブリギッテの前にだけテーブルを用意して、弟子入り希望者には椅子だけのジャパニーズ集団面接スタイルだ。

 合否は後日商業ギルドの掲示板に提示させてもらう、とあらかじめ伝えている。


 意識して【鑑定】すると、名前の後ろに『◯◯工房のスパイ』や『××店の工作員』等、表示される為、履歴書にメモをして弾いていく。

 表情は日本人お得意の曖昧な微笑み。

 他国の密偵や暗殺者などは、別紙に名前と外見的特徴をメモして、小太り側近に教えられたルートで告げ口をしておいた。

 後のことは知らん。

 即戦力も欲しいが、厄介事を持ってくる人は本当に要らないんだ。

 小太り側近さんから後日大量の高級絹とお高そうなお酒が届いたのできっと有効活用してくださったのだろう。


 逆に、本当にやる気のある人間は、技術的に未熟でも積極的に雇う事にした。

 技術はきちんと教えれば後からでも付いてくるからだ。

 はじめのうちは見習い料金でお給料がお安いけど技術の向上に合わせてお給料もアップしていく。

 腕が良くてもやる気のない人間はいらない。

 物凄くやる気ありますアピールした奴の名前の後ろに『詐欺師、窃盗常習者」と書いてあったので彼女はボツである。

 後で兵士のおっちゃんに見た目の特徴と本名を伝えておこう。

 履歴書に偽名を書くとか「盗みを働くつもりです」と言っている様なものである。

 因みに、本気で乗り換えを希望していた、別の店や工房に勤務している女性が数名いたので、彼女達は高待遇でしっかりと抱え込んだ。

 後々裏切られたり、乗り替えられたりしない様に、気をつけておこう。

 そうして総勢十五名を雇う事になった。


 即戦力の人をリーダーに、クリスタ達を含むやる気だけはある見習い達を五人ずつ下に付けた。

 合計六人一組が三組出来上がる。

 元々所属していた三人娘達は、それぞれ別々のグループである。


 一組目がクリスタのいる丁寧な縫製のグループ。

 日常使いの肌に優しく使いやすいをモットーに、大量生産してもらう班だ。

 丁寧さとスピードのあるメンバーで、素直そうな人が多い。


 二組目はカリーナのいるトータルデザインのグループ。

 売場のポップや展開なども含めて、とにかく『可愛い』や『綺麗』『かっこいい』を突き詰めて作っていく班だ。

 一癖も二癖もあるメンバーが多い。


 三組目はディアナのいる刺繍メインのグループ。

 華やかで美しいデザインの下着、所謂勝負下着班だ。

 職人気質な人と、派手目な人の両極端なメンバー構成になっている。


 後々そのグループ専用のシリーズラインとかを作ったりしてもいいし、お互いにコラボしても面白いと思う。

 勿論下着だけではなく、服も作成してもらう。

 基本的にはグループの特色に合わせて服も作ってもらう事になると思う。


 そしてその三グループを取り仕切るのがブリギッテの仕事である。

 勿論本人も色々作成するし、他のグループの手伝いだってするが、やはり経営の雑務も多い。

 なので、そっちのフォローが出来る人をギルドに紹介してもらい、追加で雇っている。

 経理と仕入れ担当者が増えた。

 勿論面接(鑑定)済みである。

 この世界では、出産後の復帰は絶望的らしいのだが、あえてそういう人で、仕事に復帰したい人を紹介してもらった。

 子育てが終わった有能な人は戻る事も出来るらしいが、そちらは就職先があるのだろうから他の所に譲る事にする。


 子育て中の女性を雇うのだから、仕事中の子供の面倒は、うちが責任を持つべきである。

 とはいえ、子供の面倒を見るのは職務外なので、孤児院に有料でみてもらう事になった。

 保育にかかる費用は三割を親が、残りの七割をうちの工房が持ち、ある程度年齢が上の女の子達が子供の面倒を見てくれる事になっている。

 更に、数名“孤児院保育手伝い”という名目でお乳の出る女性と、子育ての終わった仕事に戻れない女性を雇い、子供が増える時間のみ孤児院に入ってもらう事にした。

 勿論、うちの職員の子供だけでなく、孤児院の子供達の世話や、院長先生の奥さんのお手伝いなども仕事の内である。

 孤児院を保育所代わりに使わせてもらうことで、産後の女性雇用と、孤児の雇用を生み出してみた。

 なんて、かっこいい事を言ってみたが、この世界に保育所がないなんて思ってもみなかっただけなんだ……。


 閑話休題。


 そうそう、俺がデザインする下着だけど、実際に作るのも、着け心地の確認とかするのも、細かい修正とかするのもブリギッテ達だ。

 俺は思い付いたのを描き散らすだけである。

 こういう指示出てたけど、こんな問題起きたから、こんな風に修正して作ったよって、次のデザインの為に色々教えてくれる。

 そういった指摘は、とても勉強になり、次のデザインの糧になった。

 イラストの糧にもなるので大歓迎である。

 はじめは恐る恐る教えてくれていた女性達も、俺が喜んで受け入れるのに安心して、最近ではかなりフランクに話しかけてくれる事も増えた。


 また、新しく雇った子の中に、デザイン画の描き方を教えたりもしている。

 各チームからデザインに興味のある娘を一人ずつ選出して、夕食後に授業のようなものを行った。

 今後は、俺とカリーナとその娘達の四人がメインでデザインを起こして競い合う事になるだろう。

 最終決定はブリギッテに任せるし、その三人以外でもデザインを起こしたい者はデザイン画を描いてブリギッテがゴーサインを出せば作る事も出来る。

 まあ、俺は常時居る訳ではないのでノーカンだけど。

 その内学内コンペみたいにテーマを決めてデザイン大会みたいなの開催しても楽しいだろうね。


 あと、皇妃様と皇帝から感状が届いた。

 所謂感謝状的なやつ。

 公式なものと、非公式なものの合計三通だ。

 一通目は公式なもので、皇帝、皇妃様連名のものだ。

 内容はざっくり言うと、お前が献上した物はとても良い物であった。

 褒めて遣わす。

 ……みたいな感じ。

 皇室御用達の免状と共に店に飾っておけば、強力な箔付と後ろ盾になる。

 早速額縁を作って飾っておいた。

 プラスチックなんてこの世界には無いので、薄いガラスで押さえている。

 商人が入ってくるとその額縁をまじまじと見ていくのが面白い。

 普通は壁に直接貼っちゃうんだとか。

 二枚目は発行してもらえないのに勇気があるなぁ、って思うのは俺だけなんだろうか?


 二通目は皇妃様からの非公式のお礼状と、次のデザインの希望だ。

 夏なので着け心地の涼しい物が欲しいそうだ。

 あと、普段使いのものをデザイン違いで十枚程注文したいのだとか。

 喜んで承ります。

 カリーナと丁寧なグループのデザイン担当者がやる気満々で紙に向かっていた。

 日常使い班も皇妃様のご注文だと張り切って素材を選んでいる。

 良いぞその調子で頑張ってくれ。


 そして三通目が皇帝からの非公式のお礼状と、次のデザインの希望である。

 あまりに赤裸々に書かれていたので、ぼかして要約すると……


 下着を着けた皇妃様が綺麗すぎて、ハッスルしてしまった。(ここの皇妃様を褒める内容が、便箋三枚にびっしりと書かれていた)

 これは素晴らしい発明だが、脱がせてしまうのがとても惜しい。

 どうにかしろ。

 どの下着も皇妃様の魅力を充分に引き出していて甲乙付け難いが、エロカワのやつが本当に罪深い。

 いいぞもっとやれ。

 ついては二、三枚注文したいと思う。

 よきにはからえ。


 つまり、もっとセクシーな物がほしい、着たまま致せる物が欲しい、という事に終結していた。

 皇帝も男だものね。

 仕方ない。

 こちらは俺が頑張ろう。

 ガーターベルトやビスチェなんか喜びそうだな。


 最後に、客層も変わった。

 今までは、お金持ちの商家の人や、貧乏な下位貴族のしかも娘さんがメインであったのに対し、現在は高位貴族の妙齢の女性からの注文が殺到している。

 向こう二年分くらいは貴族の注文で埋まっている状態である。

 今までご贔屓にしてくれていた方々は、別の工房を紹介して対応してもらわなくては回らない程である。

 勿論文句は出たが、フリーサイズのキャミソールを配って黙らせた。

 見習い達が作った習作ではあるが、お貴族様の間で話題の下着(の一部)を手に入れた、というステータスの前には大人しく従ってくれる様になった。

 ウチの店で貴族の対応がキチンとできるスタッフはいない為、訪ねて来たお使いのメイドさん達にサイズの測り方を伝授し、ご依頼主様のサイズを測って来てもらう事にした。

 新興工房の辛いところだ。

 彼女等の希望はただ一つ。


「皇妃様と同じ様な物が欲しい」


 勿論、全く同じものは不敬に当たるので、ダメなのだそうだが、似通った物がいいと言われるので、現在『皇妃様のお気に入りシリーズ』として、少し格を落とした素材とデザインで売っている。

 たまに、家紋を入れてほしい、この花をメインで使用してほしい、このレースを使用してくれ、など注文が入るが、それは柔軟にお受けしている。


 ブリギッテはエデルトルート様にお願いして、貴族とやり取り出来るように日々特訓中である。

 それが出来る様になるまでエデルトルート様のお家の侍女さんが手伝いに来てくれていて、お客様を捌いてくれている。

 報酬は注文の優先権と、料金の割引、紹介者の初回優先権である。

 勿論最優先は皇室のお二人の注文ではあるが、その次がエデルトルート様経由の物で、それ以外は注文順である。

 爵位などは考慮しない。

 「詳しくないので対応できません、それがお嫌なら別の商会にご注文下さい」とあらかじめ公表している。

 はじめのうちは偉そうな商人や職人がやってきて作り方やデザインを寄越せと騒ぎ立てたが、皇妃様が用意していた騎士達がゾロリと並ぶと蜘蛛の子を散らす様に逃げていった。

 俺達もとてもとても驚いた。

 せめて事前に教えておいて下さい。

 ありがとうございます。


 俺はエレオノーレさんと、ヤンスさん、そして【マナーブック】に貴族対応を教えてもらっている。

 まあ、【マナーブック】のマナーは三百年前の内容なので、現代ではそぐわないものもあったりもするが、そこは都度都度修正している。

 俺が“そういうマナーだ”と認識すると自動更新してくれるので復習に大変便利である。

 正直頭がパンクしそう。

 う、吐き気が……。


 デザインや、縫製、売場をある程度スタッフに任せられるようになったら、ハンターの仕事もあるので、俺は店に足を運ばなくなった。

 それでも、新デザインや、店の報告、相談等でブリギッテが家に来ることも多い。

 そしてそれは、『あの噂』を更に助長させていった。


読み飛ばし用あらすじ

 ドタバタの献上が終わり、一週間。

 あっという間に店を取り巻く環境が変わった。

 献上の二日後には皇宮御用達の看板と免状が届き、取り付けられる。


 それに伴い、霧斗とブリギッテの仲を噂される様になった。

 更に弟子入り希望をする者が大量に押し寄せた。

 【鑑定】を使用して他店のスパイや『紐付き』と呼ばれる者達を落として人員の確保を行う。

 総勢十五名。

 元々いたクリスタ達三名を含め三つのグループに分け、それぞれの特色を活かしたチームを作成。

 それぞれにデザイナーを育成しつつ、下着や服を作っていってもらう事に。

 ブリギッテ一人で三グループの監督と、自分の作成、そして経営は無理なので、事務職を雇う。

 基本的に出産後の仕事復帰を求めている人達を優先的に雇った。

 孤児院を簡易的な保育施設化させて、新しい雇用を生み出した。


 皇室から感状も三通届く。

 一つは連名で良い品をありがとう。

 これは額縁(新規作成)に入れて飾っている。

 一つは皇妃からお礼と次の注文。

 カリーナがやる気を出してデザインを考え中。

 一つは皇帝から非公式のお礼と次の注文。

 男性好みのデザインを霧斗が描く。


 更に客層が変わった。

 「皇妃様みたいなのが欲しい」と、貴族が殺到。

 エデルトルートに頼んで教育を受けている。

 報酬は優先権。


 デザインや、縫製、売場をある程度スタッフに任せられる様になったら、霧斗は店に足を運ばなくなる。

 ブリギッテが相談などで拠点に来ることも多い。

 そしてそれは、『あの噂』を更に助長させて行った。



 情報が……多い!

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― 新着の感想 ―
・他国の密偵や暗殺者などは、別紙に名前と外見的特徴をメモして、小太り側近に教えられたルートで告げ口をしておいた。 ・後のことは知らん。 ・即戦力も欲しいが、厄介事を持ってくる人は本当に要らないんだ。 …
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