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115 ランジェリーレボリューション 6

※ご注意下さい※

 「ランジェリーレボリューション」のタイトルの付くお話は、下着が話題になります。

 苦手な方は読み飛ばして下さい。

 下世話な話や、直接的な表現はほとんどありません。


 霧斗にとって、下着の研究は絵のリアリティの為です。

 断じてえっちな下心ではありません。(……多分)


 読み飛ばす方用に、あとがき部分にあらすじを載せています。

 

 以前にも話したが、この店の客層は、富裕層のお嬢様がほとんどだ。

 実は大人の女性さえも少ない。

 更に言うなら、お貴族様はほぼいない。

 いても、没落寸前の男爵家とかの、商家よりお金の無いお家のギリギリお貴族様レベルである。

 貴族家の次男で、無位無爵だが別宅に住んでいる様な方の娘さんとかの、ほぼ平民なギリ貴族?とからしい。

 そして、彼女達は新規で作成する訳ではなく、古着のお直しがほとんどだそうだ。

 それはそれは支払いが渋いのだとか。(ブリギッテ談)

 つまりは平民富裕層の女の子がターゲットのお店である。


 そんなお店の受注部屋に、美しいドレスを隙なくビシッと着こなした女性貴族が一人。

 背筋もピンっと美しく、紅茶を飲む姿すら絵になる美しさである。

 そこに相対する俺とブリギッテ。

 部屋に流れる微妙な空気。


(どうしてこーなったーーー!?)


 心の中で頭を抱えて叫ぶ。

 むしろ態度に出していない事を誰か褒めてくれ。

 引き攣った表情に出ているかもしれないが。


 今回の原因は、どこから聞きつけたのか、皇妃様がウチの商品に興味を持った事だ。

 彼女の願いを叶える為、以前、コンパクトを献上した侍女さんがお手紙を持って店に直接来たらしい。

 皇妃様の侍女頭をされているそうだ。

 出迎えたカリーナは混乱する頭で、何とか受注室まで案内した。

 通りすがりに居たディアナに、店を閉める指示とブリギッテと俺の呼び出しを頼んだのだとか。

 真っ白な思考でよく動けたな。

 あとで全員にお菓子とボーナスを支給しようと思う。

 疲れた心には糖分が絶対必要だ。


 因みに、拠点でのんびり遅めの朝食を摂っていた俺が、突如乗り込んできたディアナに「緊急事態です!」と引き摺られて駆け込んだのがつい先程。

 息を整えながら顔を上げれば、目の前には、お客様用のソファに姿勢良く座る侍女さんと、その前の商談席に緊張しまくって、ガチガチに強張って座っているブリギッテが目に入った。

 ……ブリギッテ、お顔が凄いことになってるよ。


「キリトさん、お待ち申し上げておりました」


 侍女さんは、俺を見て立ち上がると、深々とお辞儀(カーテシー)をし、簡単な自己紹介をした。

 彼女は、エデルトルート様といい、モンベリアル伯家の三女だそうだ。

 つまり、由緒正しき、お貴族様のお嬢様である。

 俺の頭は真っ白で、何が何だかわからぬまま、右手と右足が同時に出てしまいながら、何とか商談席まで移動した。


 俺が席に着くと、エデルトルート様はそっと便箋を差し出してきた。

 うっすら桃色に染まり、花の香りを纏う便箋だ。

 震える手で受け取り、どうにかこうにか開いて手紙を読む。

 手紙は頭語、時侯の挨拶から始まり、新しい店を開いた事を言祝がれ、装飾過多で、遠回しな何かを要求しているであろう本文と、迂遠な説明になっていない説明、何が何だかわからないままに結びに入り、結語で締めとなっていた。

 文字は読めても、正直、何かをしてほしい、という要望が書いてある事はなんとなくわかるけれど、結局何をしてほしいのかが全く理解できない。

 読み終えて首を捻っていると、エデルトルート様は苦笑して、内容を補足する様にわかりやすく、丁寧に、色々ご説明くださった。


 簡単にまとめると……


  ・皇妃様はあのファッションショールームを

   殊の外気に入られた。

  ・そのデザインをした俺も気に入っている。

  ・そんな俺が新しい店を始めたので興味をお

   持ちになり、詳しく探らせた。

  ・売っているのは女性向けの下着で、購入し

   た者の評判がすこぶる良い。

  ・それならば自分も欲しい。

  ・しかし正式な皇宮からの注文は皇室御用達

   では無いのでNG。

  ・なので“献上”という形をとってほしい。


 となる。


 いやいやいや、皇妃様、庶民の物に興味持たないでよ!?

 俺のノミの心臓が壊れちゃいますよ!

 灰になりそうな気持ちを抑えて、サイズはお針子さんしか見ないから、と念押しして、サイズを聞く。

 そのまま素直に口に出しそうなエデルトルート様に、そっと紙とペンをお渡しする。

 普段受注時に使用している各部位の採寸表だ。

 皇妃様を溺愛していそうな皇帝が、男の俺が皇妃様のスリーサイズを知ったと耳に入ろうものなら、即殺処分が待っている事だろう。

 ギロチンが脳裏で刃を光らせた。

 ヒィィィィッ!

 恐ろしや恐ろしや……。


 採寸表はブリギッテに受け取ってもらうとして、問題はデザインである。

 俺達は皇妃様を見た事がない為、細かい雰囲気や性格がわからず、似合うデザインを描く事が出来ない。

 売り場にある見本を見てもらい、皇妃様がお気に召しそうな物を幾つかピックアップしてもらう事にする。

 ついでに、従業員のサイズで一番近いサイズを教えてもらうことにした。

 大体のサイズ感が分からなければ、どれくらいデコレーションを盛れば良いのか分からないからだ。


 皇妃様はどんな女性なのかと聞くと、「素晴らしい女性ですわ」から始まり、立板に水のごとく、装飾過多な褒め言葉が延々と続く。

 とりあえず「太陽の様に美しく輝き、たおやかに波打つ黄金の女神の美髪と、全ての海の色を集めて、固めた宝石の様な煌めく、慈愛溢れる瞳」という説明から金髪碧眼だと判断する。

 一時が万事そんな装飾語が容姿を語るので目と髪の色以外は全く理解できない。

 アルマ女神の様に慈悲深く、優しくて、聡明で、明るく、愛らしく、美しく、凛々しく、時に妖しく、セクシーなのだとか。

 いや、それどんな人なのよ?


 五、六着のデザインを選ばれたが、やはり可愛い系からエロカワ系まで幅広い。

 肌色は「新雪も裸足で逃げ出す程の透明感のある白さ」という事で、少し濃いめの色が良いだろうと結論付けた。

 とりあえず、清楚系、可愛い系、綺麗系、エロカワ系、日常シンプル系と、選んだ下着のモデルにした女性達の雰囲気でデザインをしていく事にして、幾つかデザインを描く。

 サイズはディアナが一番近い様で、身長や雰囲気はエレオノーレさんがギリギリ近いそうだ。

 スレンダーで、お胸はそこそこの綺麗系っぽいな。

 いわゆる貴族で一番モテるタイプの女性である。


 ザザッと描き上げたデザイン画をチェックしてもらう。

 一つの系統に付き三種類くらいのデザイン案を出した。


「ふむ、どれも捨てがたいですね……」


 デザイン画を見ながら唸るエデルトルート様。

 最終的にそれぞれの系統から一点ずつ選んで頂いた。

 合格を貰ったデザインを形にする為、最高級の素材を購入する。

 エデルトルート様のお名前と、家紋が記された指輪をお借りして、あちこちの高級布店に交渉し、素材をかき集めていく。

 関係各所には既にお話が入っていた様で、指輪を見せるとスムーズに対応してくれた。

 その代わり、物凄い額を請求された。

 俺のポケットマネーがごっそり減ってしまったよ。

 献上の後で「報奨金」という名目で商品代金を戴けるそうなのだが、結構すごい額になりそうだ。

 普段は手にする事も出来ないその布やレースを、片っ端から購入して、丁寧に丁寧に縫い合わせ、現在出来うる限り、最高の品を作り上げていった。


読み飛ばし用あらすじ

 富裕層平民向けの店に来たのは以前コンパクトを渡した侍女であるエデルトルート(モンベリアル伯家の三女)

 王妃からの手紙を持ってきた。

 その内容は、欲しいけど、皇室御用達店ではないから、注文できない。

 だから『献上』という体でよろしく、と言う事であった。

 受ける以外の選択肢は無い。

 デザインの為に皇妃様の見た目などを確認すると、美辞麗句の嵐。

 仕方ないのでいくつかデザインを描いて、エデルトルートに選んでもらう。

 素材を購入する為に、家紋入りの指輪と名前を借りる。

 足元見られて吹っ掛けられつつ、大量の素材を購入していった。


あとがき

 いつも俺不運を読んでくださってありがとうございます。

 いいね、ブックマーク、評価、すごくすごく嬉しいです!

 ありがとうございます!

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― 新着の感想 ―
[良い点] おはようございます。 貴族や権力に絡まれる(?)とこういうのが来るんだよなぁ絶対…ヤンスさんが嫌がる訳ですよ。 まぁ霧斗が張り切り過ぎた→そりゃ耳に入るやろ…という自業自得な面も多分に有…
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