114 ランジェリーレボリューション 5
※ご注意下さい※
「ランジェリーレボリューション」のタイトルの付くお話は、下着が話題になります。
苦手な方は読み飛ばして下さい。
下世話な話や、直接的な表現はほとんどありません。
霧斗にとって、下着の研究は絵のリアリティの為です。
断じてえっちな下心ではありません。(……多分)
読み飛ばす方用に、あとがき部分にあらすじを載せています。
ブリギッテ達がやってきてから一月半も経つと改装も終わり、新しい店がオープンした。
せっかくなのではめ込みガラスを使って、ショーウィンドウを作り、見本の服を外から見る事ができる様にしておいた。
万が一、ガラスを割って盗まれるといけないので強化ガラスにしておいた。
ジャックが思いっきり殴っても表面に薄くヒビが入る程度の強化ガラスである。
ちゃんとギャラリーがいる場所でやったので、“割っても盗めない”と理解してもらえただろう。
因みに、改装中には「ガラスに傷をつけた者には小金貨五枚を請求します」と貼り紙をしておいた。
マネキンはこの世界には存在せず、トルソーだけだったので、関節で動く事が出来る木製のマネキンをエイグルさん経由でドワーフに依頼した。
木工が得意なドワーフが喜び勇んですぐに大量に作成してくれ、ブリギッテ達が驚きつつも大いに喜んでくれた。
ただし、このマネキンの関節はとても指や身を挟み易い。
店頭を飾る時に何度も挟まれ、あちこちに赤や青のアザを作ってしまった。
ちくしょう。
リフォームされた店は、あっという間に帝都中の噂になった。
ありえない透明度で、信じられない大きさのガラスを利用したディスプレイと、ポーズを取る服を着たマネキンは、大いに人目を引いたからだ。
せっかくなので背景や、小物などにもこだわってディスプレイした力作である。
商売の内容としては、基本的には今まで通り。
服の受注を受け、希望する女性だけを特別な売り場にご案内、個別受注を受ける。
オーダーメイドの服屋さんを続けて、別途新しく下着も取り扱う事になりました、と、言い換えた方がわかりやすいかもしれない。
店内は、ディスプレイの横にある入り口から中に入ると、見本の服が沢山並べてあるショールームから始まる。
トルソーやマネキンが着た色とりどり、バリエーション豊かな服は、見ているだけでウキウキする。
ここはなんかセレクトショップ味があって、わかりやすいし、(マネキンを除けば)こちらの一般的な服屋である。
隣の部屋には、ソファーとローテーブルが二組、パーテーションで簡単に仕切られて並んでいる。
ここは、商談の為の部屋だ。
どんな布を使いどんな服を作るのか、納期は?サイズは?とかなり個人的なお話になるので、パーテーションは必須である。
さらにその隣の個室が採寸室で、大きな姿見と、着ていた服を掛けるトルソーと、サイズをメモする為のテーブルが置いてある。
メジャーや、色見本(様々な色の布の切れ端を板に貼った物)の束などが置かれていて、意外とカラフルな場所だ。
見る分にはわくわくするが、使用する側としてはかなりプレッシャーを感じる場所でもある。
麻布には綺麗に発色するが、綿だと濁ったり、絹だと色が乗らない等の知識から、どの色がお客様に合うか、お飾りに合うかなどのファッションの知識が大量に必要なのだ。
採寸している間に、連れが待つのは先程の受付の部屋。
暇を持て余した男性が万が一にも覗きに来たりしない様に、娯楽本やクロスワード、ナンプレなどの簡単なパズルを用意してある。
手が空いた時に幾つか問題を作っておいて、写本をする人達に量産してもらえば良い。
特にナンプレは木枠と数字プレートを作って、ルールと問題リストを置いておけば何度でも使用できてコスパも良い。
こちらにはこういったパズルが無いので、意外と受けているらしい。
これは購入出来ないのか?と聞かれた事まであるそうだ。
受付部屋には給湯設備もあり、お茶や簡単なお茶請けを作る事ができる様になっている。
お貴族様は店には来ない。
普通はお屋敷に御贔屓の商人を呼び付けるので、この店はお金持ちの人達の為の店って感じだな。
そして、最初の服を陳列している部屋の中央に階段が取り付けられ、二階に上がれるようになっている。
二階には、女性の、女性による、女性の為だけのもう一つのお店がある。
これは、大々的に宣伝したりせず、口コミだけで広める事にした。
生産の手が少ないので、あまり多くのお客様に殺到されても困るから。
現代日本と違って、ひとつひとつ手作りで、生産が間に合わないからな。
そして、店がオープンしてさらに一月、初日から順調に客足を伸ばして、売上も鰻上りである。
まぁ、それに比例してブラックな勤務ではある。
流石に従業員を増やさなくては回らない。
更に、売上が鰻登りとは言え、この売上の殆どは、運営費に回されている。
まだまだ縫製方法や素材の研究とか、改善とかに大金が必要なのだ。
「やっぱり綿がもっと欲しい……」
「レースも、もっと種類が欲しいです〜」
「このフックパーツもどうにか安くならないかなぁ?」
見習い三人組がぼやいている。
買う金はあっても買える品物が無いのだ。
この世界、平民が使えるレースはバリエーションが少な過ぎるし、素材も手に入る量は高が知れている。
貴族達の専属職人などは、それぞれの家の伝統の模様などを持っているらしい。
どこかに素晴らしいレース職人はいない物だろうか……?
閑話休題。
さて、この下着売り場、男性お断りで、名ばかり経営者である俺も、基本的にこの部屋には入れない。
オープン前に一度見せてもらっただけだ。
店内は、駅前とかにある下着屋さんをイメージしてもらったら良いと思う。
男供の目に触れないから、と、かなりオープンな展開になっていた。
女性の腰の高さ程の丸い展示台がいくつも並び、花や布、宝石や本などで飾り付けられ、展示された下着は、さながら可愛らしい小物の様であった。
こちらでもマネキンは大活躍である。
軽い木で骨組みを作り、布を貼っただけなので、木で作ったマネキンでも比較的軽い。
全身タイプを三体と、ふとももから上の物を五体、ウエストから上を五体と少し多めに作っている。
胸のサイズを三種類に分けて、下着を着せる。
首元にリボンを巻いていたり、ネックレスやブレスレットを着けたりしていて、性的な感じよりも、おしゃれな印象が強い。
ワンポイントPOPの書き方を教えると、カリーナが思わぬ才能を発揮した。
毎日モリモリ書いてはあちこちに貼り付けている様だ。
刺繍で取り付けたり、リボンで留めたり、ピンチで挟んだりなど、俺では思いつかない展開を次から次へと行なっているらしい。
ブリギッテが少女の様にキラキラした瞳で説明してくれた。
階段の前には、男性侵入防止対策として、女性ハンターが警備に立っている。
報酬は、一月の勤務で、フルオーダーの下着の上下を一セットと小銀貨三枚である。
下着のデザインは売り場に並んでいる物の中から好きな物が選べる。
一応、ハンター用、日常使い用の丈夫でシンプルなタイプも選べる様になっているが、やはり装飾のあるタイプが人気の様だ。
因みに、一月の間は、三階の従業員用スペースに住み込みで、三食付きになっているし、なんだったら、お風呂付き(俺が作りました)である。
最初は、拘束時間に対して報酬額が少ないらしかった様で、依頼を受けてくれる人が見つからなかった。
見かねたエレオノーレさんが、知り合いの女性剣士に声を掛けて来てもらった。
彼女が一月働いた後に「高待遇だった。食事も美味く、勤務時間の延長も無いし、報酬の下着も最高だ」等と話した結果、それからは女性ハンター達の中で、熾烈な争奪戦が繰り広げられているらしい。
一応給金自体は低いので、下着を選ぶ者が殆どで、生活費が稼げるわけではないので、一月から二月で交代になるのだけれど、「次は私に!」「いいえわたしよ!」と腕自慢の女性ハンター達が殺到しているらしい。
希望者をそのまま雇えば、一年先まで余裕で埋まってしまう人気ぶりだ。
そんな好調な滑り出しの店に、あの女性が来てしまった。
読み飛ばし用あらすじ
新しい店のオープン。
入り口横に板ガラスを使用したショーウィンドウを作成。
一階は今まで通り、二階に下着売り場。
トルソーしか無かったので、マネキンをドワーフに作ってもらう。
斬新な売り場に客も集まり、大人気。
大々的に宣伝は行わず、口コミにする事で、発注スピードを抑える。
階段下に女性ハンターが立ち、男性の侵入を防ぐ。
報酬は下着プラス小銀貨三枚。
最初こそつかまらなかったが、今では取り合いが起こるレベルの人気職である。
そんな好調な店にとある女性が訪れる。
あとがき
いつも俺不運を読んでくださってありがとうございます。
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本当にありがとうございます!!
まだしばらくは商売パートが続きますがお付き合いお願い致します。




