109 ランジェリーレボリューション 1
※ご注意下さい※
「ランジェリーレボリューション」のタイトルの付くお話は、下着が話題になります。
苦手な方は読み飛ばして下さい。
下世話な話や、直接的な表現はほとんどありません。
因みに、この第一話部分には一ミリも下着の話は出ません。
霧斗にとって、下着の研究は絵のリアリティの為です。
断じてえっちな下心ではありません。(……多分)
読み飛ばす方用に、あとがき部分にあらすじを載せようと思います。
時は少し戻るが、春の終わりに無事拠点が出来上がり、夏の初めには貴族絡みの面倒事もなんとか片付いたので、燻製小屋や温室を作る場所を切り拓き始めた。
現在夏真っ盛り。
吹き出す汗、蝉が鳴き、蚊が唸る草むら。
肌を刺す太陽の光は容赦がない。
日中はどう足掻いても無理だ。
此方は、ぶっちゃけ全然急がなくても良いので、のんびり朝夕に作業を行なっている。
拠点の燻製小屋は、ドゥーリンさんの所の見習いさんが担当する。
初めて任された仕事らしく、ヤル気に満ち溢れていて、鼻息荒く図面を引いて持って来ては、アレコレ語っていく。
まぁ、普通に燻製が作れればそれで良いよ?
なんかスタイリッシュなデザインとか求めてないから。
うん。
大丈夫。
大丈夫だったら。
土地面積を増やす申請はオーランドに任せて、俺達は家具や食器類を買い揃え始めた。
温室は後回しである。
ホールや食堂等の共有スペースのテーブルやソファー等は、俺達が皇宮で働いている間に、オーランド達が色々購入してくれていたが、それでもやっぱり足りない物が出てくる。
今日は俺とデイジー、ジャックとエレオノーレさんの四人で足りなかった物の買い足しだ。
軽やかなワンピース姿のデイジーとエレオノーレさんは、とても目に優しい。
いや、むしろ可愛いの暴力と言ってもいいかもしれない。
デイジーは麦わら帽子にノンスリーブの生成りのワンピースだ。
健康的になって、ふっくらした頬と、ハリのある肌。
襟ぐりは慎ましやかに閉じられているが、むしろそれがいい。
歩くたびにひらりひらりと揺れる裾は脛の中程で、清楚さを強調している。
「こんなに贅沢に布を使ったワンピース初めて着ましたっ」と嬉しそうに笑っている姿はあまりにも可愛かった。
とても似合っていると褒めると、照れて真っ赤になったのも良かった。
尊い……。
エレオノーレさんは半袖でヒラヒラしたボレロの様な物を着ているが、下のワンピースはデイジーとお揃いだそうだ。
デザインは同じなのにどうしてこうも受ける印象が違うのだろうか?
エレオノーレさんの為に作られた服なので、胸に持ち上げられてワンピースのスカートが引っ張られる事等はない。
アンダーの辺りで切り替えているので、美しい腰のラインがくっきり浮かび上がっていて、肌の露出は少ないくせに、やけにセクシーに見える。
スカートの裾も脛の下辺りで、なんだったらデイジーよりも慎ましやかなデザインのはずなのに、なんでなんだろうか?
裾から覗く足首までエッチに見えてくる罠。
何故だ。
因みに、俺とジャックはワイシャツみたいな半袖の前留めシャツと、サッシュで結ぶズボンとシンプルだ。
俺は薄い緑、ジャックは濃い青である。
これでジャックがサングラスでも掛けたらマフィア感溢れて、近寄れない人も多いだろう。
エレオノーレさんが普段着用に、と全員分購入してくれていた。
まずは、雑貨屋をいくつか回り、足りなかった品物を見ていく。
コースターや大皿、サラダボウルに、取り分け用のトングと、ランチョンマット、玄関マットや各種掃除用具に、各部屋のゴミ箱、小物入れや食器棚に食材棚等。
ドゥーリンさん達が直接取り付けたり、作ったりしてくれていたけど、やっぱり物が増えたら置き場所が足りなくなった。
まぁ、自分達の食器だけでも六人分で、結構な量になる上に、他のパーティと協力した時用に、余分に十人分ずつ購入していたら場所が足りなくなるのは当たり前である。
「そういえばレジーナから手紙の返事が届いて、コートは無事に納品できて、最高評価だったってさ。パーティ宛にお礼が書いてあったよ」
「わあ!良かったですね!」
「連絡したかったのに、手紙を寄越すのが遅いとも書いてあったけどね。ハハ」
カトラリーを立てる入れ物を見ながらレジーナから返ってきた手紙について話をする。
この世界に郵便局などというものはもちろん無い。
ハンターギルドを通して送り届けるのだ。
なのでタイムラグはどうしても発生するし、確実に居る、とわかっていない場合無駄足になる事もある。
他にもマチルダさんからの心のこもった分厚い手紙も届いている。
世間話をしながらも手は休めずに、必要な物を次々に選んで購入していく。
細々とした日用品が済んだら、デイジーとエレオノーレさんの調薬室と実験室の備品も、大量に購入していく。
コレは小物が多く、持ち運びが大変だという事で、俺の身体が空くのを待っていたのだとか。
「これ、すごく手にフィットします」
「本当ね。……うん、質も良さそうね。これは本当にいくらあっても足りないものね」
「わかりますー!これ、十セットくらいありますかー?」
「あ、こっちもお願いね」
きゃっきゃとはしゃぎながら選んでる女性二人は、とても絵になる。
ジャックと仲良く、壁を背に二人を眺めていた。
でも、見てるのは実験道具で、あまり女性らしさを感じないんだけどな。
たっぷりの時間を掛けて、大量の商品を選び、山盛り購入した二人を、店員さんはニコニコ対応していた。
種類も多かったが、一アイテムに対する購入数がえげつなかった。
試験管三桁も要らなくない……?
閑話休題。
拠点は、この辺では初めての窓ガラス入りの家屋である。
当然オーランド達に、窓ガラスにカーテンを付ける発想などある訳が無い。
なので、今日の一番の目的はカーテン用の大きな布だ。
陽の光を大きく妨げないレースか、透けるほどに薄く織られた布と、分厚くてきっちり光を遮れる布の二種類を探して歩く。
幸い、高位貴族達は窓ガラスは無くとも、カーテンを付ける文化があるらしく、高級な布問屋に聞くと、幾つか出来上がっている物を紹介された。
その中で零が二つ程多いレースのカーテンを見かけて、これだけのレースが作れるならレースのワンピースとかも作れそうだよなーとぼんやり思った。
勿論俺はそんなお高いレースカーテンを買ったりしなかったのだが、総レースのワンピースはデイジーに似合うだろうな、と考えたら、無性に絵が描きたくなった。
レースを三十センチ四方だけ購入してデザインの見本にする。
拠点に戻ったらちょっと色々描いてみよう。
エレオノーレさんとデイジーは、長い長い相談の結果、そのお高いカーテンを購入していた。
厚い方のカーテンはエレオノーレさんが真っ白な布に同色の刺繍がされた物、デイジーがクリーム色にカントリーな柄の刺繍された物を選んでいた。
男共はシンプルで安い綾織の生成りのカーテンと、薄茶色のカーテンになりました。
風呂用品や、ハサミなどの日用小物も大量に購入した。
自分の部屋用と、共有スペース用だ。
小物を立てるペン立てみたいな物も合わせて購入する。
裁縫用具も欲しいとの声が上がり、糸問屋に向かう。
途中にあった、帝都一の品揃えだと謳う手芸店には、やたら大きくて可愛らしいデザインの裁縫箱が並んでいた。
縦二十センチ、横二十五センチ高さ二十五センチくらいのその箱は、綺麗な刺繍の施された布が全面に貼り付けられており、角を美しい金属の縁飾りが彩っている。
留金を外して、蓋を両開きに開けば、がぱりと大きく開き、三段に分かれて広がる。
下には浅めの引き出しがあり、リボンやハンカチなどを入れる事が出来るようだ。
こういうのなんていうんだっけ?バニティボックス?
いや、あれはメイクボックスだけだっけ?まぁどっちでも良いけど。
箱の中には、大小数種類の針にまち針、糸切りバサミに裁ち鋏、謎のヘラに、沢山の刺繍糸や丸い枠、カラフルな布にボタン等、ぎっしり全部盛りで入っていた。
エレオノーレさん達は二人で色違いの物を購入していた。
値段は聞かないでほしい。
俺が拠点用に購入した常識的なサイズの裁縫箱の、二十倍くらいしたとだけ記しておこう。
それが終わると、ジャックの希望で農作業用の服や長靴、軍手なども人数分用意した。
孤児院の子達に手伝ってもらう事も考えて、子供サイズも三サイズ、各五枚ずつ購入した。
流石に農機具はそれぞれ二、三本ずつである。
唯一、例外として移植ゴテを人数分、色を変えて揃えた。
オーランドが赤、ヤンスさんが青、ジャックが茶色で、エレオノーレさんが黄色、デイジーがピンクで、俺が緑だ。
そして銀色の移植ゴテを五本。
選んだのはデイジーとジャック。
別料金で、それぞれの持ち手に名前を彫ってもらって、ニコニコと渡された。
どうにも可愛い二人組で、チラリと横を見るとエレオノーレさんが顔を押さえて天を仰ぎ、悶えていた。
うちの旦那が可愛すぎる、と聞こえた気がするが、見なかった事、聞かなかった事にしよう。
「お、キリトちゃん、ちょーど良い所に!こっちにおいでおいで」
他に買い忘れは無いか確認しつつ街を歩いていたら、ヤンスさんに声を掛けられた。
猫撫で声のその態度に訝りながら近寄ると、そこは木工工房だ。
「これ、持って帰ってくんない?運んでもらうと金が掛かっちゃうからさ」
「了解です。ポーター霧斗、職務を全うさせていただきます」
悪びれもせずに大きな棚を叩くヤンスさんに、ふざけて敬礼しながら工房の人に許可を取って【アイテムボックス】に収納していく。
貴族連中に絡まれていた時はすごくピリピリしていたけど、最近やっと元のヤンスさんに戻ってきた。
それが一番嬉しい。
ヤンスさんも合流して、あれも足りない、これも足りないとあちらこちらの店に寄りながら、買い足していくのはとても楽しかった。
屋台で串焼きを摘んだり、フルーツを摘んだりと買い食いも楽しい。
「いやー、キリトちゃんが居ると便利だねー!買う順番やら荷物やらを気にせずに買い物が出来るとか最高かよ」
「ホントですね!送ってもらう事もできますが、それだと余計にお金が掛かってしまいますもんね」
嬉しそうに話すヤンスさんとデイジーに、俺の顔も緩んでしまう。
ウッツの店で、大量の植物紙と絵の具も買い足せたし、俺としても大満足である。
エレオノーレさんも植物紙と羊皮紙、そしてなんかお高いインクも俺に負けじと大量に購入していた。
ウッツからは、拝まれる程に感謝された。
早速、拠点に戻り、荷物を出していく。
大物は場所を決めてからそこに出して、個人の荷物はそれぞれの個室へ。
共有スペース用の物は一旦リビングにまとめて出しておく。
あ、因みに、エレオノーレさんのウォークインクローゼットには、既に鏡を設置済みである。
早速、今日購入した服や帽子などを身につけて、ジャックを連れ込み、ファッションショーを行うそうだ。
最後に自分の部屋に購入したマットや作業机、本棚に紙やペン、インクに絵の具に筆、油などを置いていく。
今日の収穫はカラーコンテを手に入れられた事だ。
クレヨンの前身みたいな物で、デッサンなどによく使われるアレだ。
本や小物を並べていき、自分の部屋を作っている感じがとても楽しい。
俺の部屋は土足禁止の、日本風にしていて、床も念入りにヤスリをかけ、ワックスを塗ったフローリングである。
畳などは流石に無かったので、ソファー(カウチって言ってたけど何が違うのかはわからない)も置いている。
今日見つけた良い柄の丸型のマットをソファーの下に敷き、揃いのクッションを二つ並べる。
壁側に作業机を設置して、カーテンを取り付けたらとりあえずは完成だ。
うむうむ、我ながら落ち着ける部屋になったと思う。
読み飛ばし用あらすじ
貴族のアレコレが無事(?)解決した事により安心して拠点のカスタマイズに取り組む霧斗達。
燻製小屋や温室を作り始め、足りない家具や備品を揃える為に、霧斗、デイジー、エレオノーレ、ジャックと私服でお買い物へ。
雑談しながらの買い物。
レジーナからコートは無事納品できて、最高評価を得られたと手紙が来ている事を話す。
調合器具や裁縫箱等にきゃっきゃウフフする女性陣。
それをあたたかく見守る霧斗達。
カーテンを購入した時に総レースのカーテンを見つけて、お絵描き心がくすぐられた霧斗。
癒し系二人に萌え散らかす霧斗とエレオノーレがいたり、途中でヤンスに体良く使われたりするが、無事拠点に戻り、荷物を下ろす。
全員分を下ろしたら、自分の部屋を作り上げた。
あらすじにすると元も子もない感じですね。
いつも俺不運を読んでくださってありがとうございます。
誤字報告してくださった方、助かりました!ありがとうございます!
ブックマーク、いいね、評価、とても励みになります。
いつもありがとうございます!




