[短編]ハットトリックを決めたチームメイトがリア充と発覚したので爆破
「止まるな!走れー!」
顧問の野太い声が響き渡るサッカーコート。
極太の太腿たちが走り回る。
自転車部と競い合いながら、鍛え上げた筋肉で今日もボールと友だちだ。
いや、むしろ彼女と言ってもいい。
22人の男たちに狙われ続ける女…そうアイツは罪な女なんだ。
そんなエアー彼女を妄想して、誰ひとり彼女のいない冬を迎えたサッカー部。
弱小とはいえ、他校との試合もある。
そして、その日は特に負けられない相手だった。
対戦相手は、マチルダ家政学園。
家政科に特化した高校は、男女比が3:7。
男の2倍の女子…!
それだけで俺たちには負けられない戦いとなった。
「お前ら、負けるなよ…!」
結婚相談所で49連敗中の顧問から檄が飛ぶ。
「はい!」
彼女のいない俺たちは、全力で挑んだ。
しかし、前半を2対2で終えて、後半になってから両チーム得点が入らなかった。
ゴール近くにボールを運んでも、相手チームのディフェンダーが粘る。
攻撃よりも守備に重点をおいたプレーだ。
まさか…観客に女子の多いサイドが俺たちのゴールポストのある方に変わったからか?
なんだお前ら、前半はこっちがゴールだったろ?
あの時の動きを見せてみろよ…!
俺がゴール近くでボールを受け取ると、時々ちらっと観客席を見ながらのディフェンス。
「ふざけんなよ、こらぁー!」
俺がゴールに向けてシュートすると、ゴールキーパーがニヤリと笑ってかっこよく跳躍しながらボールを拳で弾いた。
「お前もかぁ!」
こぼれたボールを目で追いかけた先には、味方のフォワードの佐藤が。
佐藤は華麗なドリブルでディフェンダーをかわすと、バックパスでフリーになっていた岡田にボールを渡し。
そして。
岡田は跳躍してからまだ立ち上がれていないゴールキーパーの頭上にゴールを決めた。
「やったぁ!岡田、お前ハットトリックじゃないか!」
俺は喜び駆け寄ろうとした。
その時。
「岡田くぅ〜ん!かっこいい!明日のデート楽しみにしてるね!」
大きく手を振りながら、同じクラスの由衣ちゃんがぴょんぴょんと観客席で飛び跳ねていた。
「岡田……?」
チームメイト全員が岡田を見つめた。
岡田は照れた顔で大きく頷いた。
うん。
何頷いているんだよ、岡田。
俺たちは一斉に顧問を見つめると、顧問は頷いてサッカーボール型の爆弾を俺に蹴ってよこした。
俺は岡田に向けてシュートした。
「「「リア充、滅殺…!」」」
チームメイトたちの声が重なる。
冬のサッカーコートに爆発音が鳴り響いた。
友情は爆破とともに散りゆく運命。(*´ー`*)