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母様を殺したあいつがなぜラモンと話しているの?





目の前の光景が信じられず未だ私の心臓はバクバクと脈打っている。息をするのも忘れて私はあの男を凝視していた。


私の殺気に気付いたのかあの男がふと会話を止めフードから顔を覗かせた。





笑った。

確かにあの男は私を見て笑ったのだ。それも不敵な笑みを浮かべて。




激しく扉を開けると、かけ落ちるかのごとく階段を降りあの男のいる場所めがけて突進した。



バタン



教会の扉を開けるとすぐ外には、あの男と驚いた表情でこちらをみるラモンがいた。



「久しぶりだな。あん時の嬢ちゃんにまた会えるなんて...!」



「ねえ、どう言うつもり?あなたは何者なの?一体これ以上何をしようって言うのよ」



すると男は急に身を翻し、そばにいたラモンを後ろから締め上げた。


苦しい顔をするラモン。これ以上人が目の前で傷つく様子は見たくない。助けなきゃ。




「だ、だめだ...くっるなっつ......」



彼の言葉は届かず私は禁断の夜の世界に足を踏み出していた。




****




月が光り輝く闇に地ならしの音がする。

小刻みに揺れるこれは地震?いや何かが近づいている....?




マントの男は急にニタリと気味悪げに笑うと、ラモンを突き飛ばし、湖の方向にかけて行った。



「ラモン。大丈夫?」



「ああ。今はね。それより今すぐ危険を知らせてみんなに逃げてもらって。大型魔獣がこちらに向かってる。」




****





孤児院のみんなを叩き起こし、急いで湖の方角へ逃げることを指示する。これにはシスターたちも怯え、あたふたし、兄弟たちは何ごとか分からぬものの、非常事態であることは分かり、泣く者もいる。




「皆さん。どうか落ち着いてください。」



そんな廊下に現れたラモンはこのような状況下でも動じず、神々しく見える。



「魔物はもしかしたら私が持って参りました石に反応してよって来ているのではと推測しています。ですから皆さんはできるだけ遠くに逃げていただければ追っては来ないと思われます。私たちも、その石を森に捨て後から追います。」



この後、冷静さを取り戻したシスターたちはちゃんと子供たちを連れ外に出て行った。



「ソフィーは行かないの?」



小さな手で私服の裾が引っ張られた。



「大丈夫!お客様と一緒にあとでみんなのところに戻るよ!」



シスターも院長も私が夜に外を出歩くことを忌むのには何か訳があることに気付いているのか、兄弟たちを連れ、私と一瞥し走って行った。




****



今は既に単なる地ならしではなく、大きな巨体の足跡であることが分かる。


ミシミシと音を立てる教会。怖い...けど外に逃げ出したくてもまだ夜が明けるのには時間がある。




「ラモン。もしかしてこれってさっき私が、扉の外に出てしまったから?」



ミシミシと音がなる。ラモンの表情は複雑で読み取れない。




ガルルルルゥ



教会の扉を大きな爪で突き破ったのは、真っ黒色のサーベルタイガーのような魔獣だった。




ヤバイ!これは殺される。私はラモンの手を強く握ると教会の教壇下に隠れ、その地面を強く押した。

暗い地下には階段が続いていてラモンをそこに押しやる。



「ラモン。石を持っているって言うのは嘘なんでしょう?私を庇ってくれてありがとう。本当はいろいろ知ってそうなあなたともっと話をしてみたかったけど...ここを進めば街に着くと聞いたことがあるの。先に行って!」



「ソフィーはどうするんだ?一緒に行こう。」



でもこの石の扉、上から閉める人がいないと閉められないし...



その時、強烈な爆発音と光が教会を包んだ。



ギャルルルルル



教会の扉の方を見るとそこに人影が。誰かが魔法を使って撃退してくれたのだろうか。

この後幾度か魔法が繰り返し放たれ、応援が駆けつけくれたような足跡がした。



「お怪我はありませんか?」



手を差し伸べられ顔を上げると、そこにはサラリと揺れる闇夜の髪色とは対称に、すんだ青空を思わせる瞳をした美しい男性がいた。絵本の中に出てくる王子というのはこういう人のことを指すのかもしれない。あんなに危機迫る状況にいたというのに思わず顔が赤くなってしまう。



「助けていただき感謝します。」



後ろを振り向くと鉄壁スマイルを浮かべたラモンがいた。










読んでいただきありがとうございました。

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