ー第一話ー 今までの終わりと、これからの始まり
ぼんやり映し出された自分のデータを、感情なく眺めていた。
レントゲンとCTとMRIを確認するための、ディスプレイを見るために薄暗くされた診察室で、医者が言うには、若年性の脳腫瘍とリンパ腫を発症してるらしい。
脳腫瘍の方は進行が遅いらしいが、リンパ腫の方は進行が読めず、どのくらいで動けなくなるかは、わからないらしい。
「まだ若いので、進行が早いかも知れません」
ディスプレイから医者は視線を向けると、諭すようなトーンでそう言った。
「まあ、進行が読めないのは、病気次第ですか。」
じっと考え込んだ。この4ヶ月、仕事が忙しすぎて、体がダルイだけだと思ってた。
大規模案件の構築ディレクションをしていたので、休んでないのが祟っただけだと思ってた。ただ単に過労だと思っていたのだが、ガンだとは思って見なかった。
「摘出、できないんですか?」
「実は、脳の方が摘出するには難しい場所にあるんです。国内でも調べてみたのですが、手術でうまく行った例がありませんでした。」
若い医者だった。非常に疲れた表情をしてて、この為に時間をかけてくれたんだとわかった。
そうか・・・と思ってた所、その症状を読み取ったように、続けた。
「ですが、脳の摘出手術をせずに、薬と経過観察で5年以上生き続けた方が多くいらっしゃる場所でした。むしろ、手術した方が早く亡くなる。」
医者から視線をそらした。
投薬治療なら、手術よりも長く生きることが出来る。
人生でこんなにも、生きる、ということを突きつけられた事はなかった。
でも、手術よりも生きることが出来るのならば、と反芻した。
「今まで通り、仕事ができるんでしょうか?」
「今まで通りの仕事は、どのくらいのペースでしたか?」
「朝出て、夜帰ってくる・・・ペース。」
少しごまかした。その表情は見逃されなかった。
「今はまだ、今まで通り働けるでしょう。ですが、リンパ腫の方の影響がでて、仕事しにくくなります。朝から仕事してて、午後3時ぐらいまでで体力が持たなくなったら、生活スタイルを変えましょう」
深く頷いた。今のままの生活が続かない事に自分を納得させた。
「他の人と比べて、注意することはありますか。」
「肥大がまだ大きくありません。なので、投薬と放射線治療で対処します。まだ体力ある年齢なので、時間はまだあると思ってて下さい。とりあえず、1年を目指しましょう。」
1年が今の自分でいられる残された時間。
病院から出たらすぐに浮かんできたのは、仕事のことだった。
(1年もあれば、今の案件、片付くけど、新規案件受けるの怖いな)
とりあえず、上司に電話をかけた。