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97. スパイ





今回のシャモアも 解体しても 何の異常も見られなかった。

特殊個体ではなかったのだ。


ただ、シャモアの胸元には 三羽とも 小さな穴が空いていた。

これはディコトムスのときにもあったのだ。

確証がなかったから保留にしていたが、今回は三羽ともにあった。不自然だ。


明らかに、人為的に埋め込まれたもの。

そして、無理矢理取り出されたもの。


ディコトムスやシャモアに魔法が効かなかったのは その()()のせいだろう。


魔法を吸収する道具。厄介だ。これからの敵には迂闊に攻撃魔法を使えないな。


普通シャモアが ()()を狙うなら まず子供だろう。

だが今回のシャモアは ノーガードだったアイリーン、ララ、テトには見向きもしなかった。

危険をおかしてまでサクラだけを狙うのはおかしい。


人買いが狙ったのも サクラだった。


目的は サクラだ。

サクラの力を欲している者がいる。


「一体誰が……」


イシルは考えを巡らせる。

怪しいのは この村に滞在を希望している者。


「ラルゴ」


……いや、ない。ないな。

イシルは自分の見たものを信じる。


「ギルロス」


サン・ダウル王国がサクラの事を知ってしまえば 欲しがるだろう。

だが、ギルロスはサクラが何者であるか知らない。

銀色の魔法の事を知らない。

ギルロスがサクラを()()のは あくまで個人的に、一人の男として、だ。


「アイリーン」


彼女は現場にいた。シャモアに狙われなかった。

ギルロスも彼女には何かあると 疑っていた。


イシルは考える。

いや、自分の見たアイリーンは そうじゃない。


サクラに対するアイリーンのさっきの様子がフェイクだとは思えない。


「リベラ」


今はオーガの村に帰っているが、警備隊入隊希望者だ。疑いすぎか。


「そして、シャナ」


ディコトムスと遭遇したという場所は 腑に落ちない事が多かった。

イシルを村から遠ざけるためだったのでは?


イシルをサクラから離してしまえば、

ギルロスだけなら 魔法の効かないシャモア三羽で、サクラを連れ去ることが出来ると考えたのだろう。


従魔の存在、ギルロスの狂戦士化、警報。

それが誤算だったのだろう。

なんともお粗末だな。おかげで助かったが。


「仲間とはぐれたと言ってたが、捜す感じでもなかったな……」


シャナは ()()を通っている。

シャモアの胸から ()()を取り出す事が出来たはずだ。


一番怪しいのは シャナだ。


治療院にシャナの姿はなかった。

シャナは一度治療院に戻り、薬草を採りに出掛けていた。

しばらくの滞在を希望しており、その間 宿代のかわりに 薬師としてメイの手伝いをするという。


「イシルさん?」


メイの治療院を出て、組合会館へ戻ろうとすると 後ろからシャナに声をかけられた。


「無事に帰ったんですね。安心しました。薬草を取りに行っていたんですか?」


イシルは シャナから薬草のガゴをとると、シャナの手をつかみ、手のひらをみる。


「あの///イシルさん」


微かに 血液反応がみえる。

人のものではない。


「無理に手綱を握らせてしまい すみませんでした 大丈夫でしたか?」


そう言って イシルはシャナの手のひらを魔法で癒す。


「はい///あの、広場の魔物は……」


「ああ、見たんですね。魔物の襲撃があったので あわてて戻ったんですよ。()()のおかげで間に合いました」


「警報……」


シャナに動揺がみられる。

ディコトムスの時には 警報なんてなかったのだから。


「警備隊もそろそろ人が集まりそうです。今日のようなことはおこらないでしょう。安心してください」


遠回しに牽制する。

シャナの声が震える。


「……はい」


シャナは()()することに慣れていない。

隠蔽工作も 杜撰(ずさん)すぎる。


これは、裏に誰かが居る。

何か事情がありそうだ。


「あの、イシルさん、明日お時間ありますか?」


「明日?」


明日はサクラは()に会いに行く日だ。

時間はある。


「組合会館の地下に古い薬師の本があると聞いて、探しに行きたいんですが……」


「わかりました。案内しましょう」


「ありがとうございます」


敵はより近くに置け。

それが安全な時もある。




◇◆◇◆◇




組合会館広場にて


解体したシャモアを村の者が取りに来た。

羽根は中の柔らかい綿羽は 枕や布団になり、

外の真羽は 武器強化の素材として使われる。

骨と肉は今日の鍋大会でいただいてしまう。


ランとギルロスは 只今血に染まる地面の浄化作業中。


「シャモアはサクラを狙ってただろ」


ランがギルロスに話しかける


「アイツは旨そうだからさ、狙われやすいんだよ。人買いにも、獣にも」


旨そうだからかどうかは置いといて、狙われてたのは確かだ。


「だから……」


ランが真剣な眼差しで ギルロスに訴える。


「オレに剣術を教えてくれよ」


強い意思を宿した瞳で。


「魔法がなくても サクラを守れるくらい」


魔法の効かない相手を前に、思うところがあったようだ、

いい顔してるぜ、坊っちゃん

お前の母親にも見せてやりたい。


「手加減はしないぜ?」


「望むところだ」




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