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548. 女子旅 part2 ㉚ (森の我が家で/イシルの場合)


「妾がついていながらこのような事になりすまなかったな」


森のイシルの家のリビング。

サクラを送り届けたヨーコが 申し訳なさそうにイシルに謝った。


「ヨーコさんのせいじゃないですよ、サクラさんの性格です」


「そうじゃぞ、ヨーコ、気にするな、サクラは世話焼きだからな!」


一緒についてきたリコが横から口を挟む。


「……」

「……」


「でも、無茶はいかんぞ?ん?考えなしで動いて命まで落としてはかなわんならな~」


「……」

「……」


元を辿ればお前のせいだ!

横でウンウンと頷いているリコに、イシルとヨーコがそう言いたげな目でみつめている。


(これはイカン!)


空気の読めないリコに、ひくり、イシルの眉が動いた。

折角立ち直ったのに、リコの印象がすこぶるよろしくない!

サクラは急カーブを切って話題を変え、イシルの視点をリコからそらす。


「あ!イシルさん、味噌!味噌すみませんでした!」


「……え?」


「それから、えと、、え~っと、、生姜、ネギ、ゴボウも」


「ああ、持ち出した食材ですか」


こっち向いた!イシルさん。


「野営で出してくれたシシ鍋が、ちょと野性味溢れる味でして、手直しをしたんですよ」


「野営?」


ん?表情が険しくなったぞ?

この話し、ダメ?そしたら、えーと、、


「ハイドンさんが、イシルさんに会いたがってましたよ!」


「ハイドンに会ったんですか?」


「あれ?」


話が噛み合ってない。

イシルがどこまで知ってるのかわからないサクラは、チラリ、ヨーコを見る。


「イシル殿には何も話しとらん。妾は魔力切れをおこし気を失くしたお主についておったでな、リコを止めるためにお主が力を使ったとしか……」


うお!これは余計なことは言わない方が良さそうだ。

道を外れて森を通ったなんて言ったらアイリーンが怒られる。

よし、シシ鍋で押しきろう!


「そうなんですね。討伐の指揮を()っていたのがハイドンさんだったんですよ。盗賊団退治の事をイシルさんから聞いて、ハイドンさんの事を憶えていたから、お礼を言ったんです。ルヴァン達を助けてくれて、ありがとう、と」


「ああ、それで。しかし……」


イシルにツッコまれそうになり、さらに言葉を続けるサクラ。


「お礼が言えて安心しましたよ。ハイドンさんは私にも良くしてくれてですね、シシ鍋を振る舞ってくれたんですが、料理担当の人が上手じゃなくて、ケモノの匂いが強くて、、しょうがないから生姜をいれました!!」


「……」

「……」


「ぷっ、、くくく、、しょうがないから生姜、、くくく、、生姜、“ない”のに“入れ”られる、、ふっ、ふふふ///」


あ、なんかリコがツボってる。









【side:イシル】


「イシルさんの味噌のおかげで、皆美味しいって、シシ汁完売、全部食べてくれたんですよ~」


家についてから畳み掛けるように言葉を繰り出しているサクラ。

ツッコミたいことは山ほどある。


途中の街道が立ち入り禁止ならアザミ野の街を出る時に止められただろう。

それなのにハイドン達討伐隊に出会ったということは、道を反れて森に入ったということだ。

あれほど念押ししたのに、あのムスメ(アイリーン)は、まったく……


「そう、ですか、、」


サクラは今、自身の身体も本調子でないにも関わらず、リコを気遣い、場に溶け込ませようと話題を変え、更にはアイリーンが怒られないよう庇いながら話し続けている。

ここで自分がツッコんでは、余計にサクラを疲れさせてしまうだろう。


イシルはおとなしく聞き手にまわる事にした。


「ハイドンさんも、味噌を気に入ってくれて、オーガの村の味噌ラーメンの話しもしときましたから、アンジェラちゃんと一緒にラーメン食べに来てくれますよ、きっと」


「娘はアンジェラという名前なんですね」


オーガの村の宣伝もしっかりしたようだ。

娘の話しもしたと言うことは、ハイドンにも気に入られただろう。


どこまでも、良かれと思ったら止まらない。

サクラの良いところだが、自分をかえりみないのがたまにキズ。

今回のように、魔力切れで倒れてしまったら、本人が危険なのに……


「皆にシシ鍋配りながら、ラーメンにくわえて、迦寓屋(かぐや)のお風呂も、ドワーフ村のカレーやバーガーの話しもしときましたから、大盛況間違い無しです!」


(ん?皆に??)


「戦地の中を歩き回ったんですか?」


つっこまないハズが思わず口に出てしまった。


「だって、持ち場を離れられない人は食べられなくて可哀想じゃないですか。まだ戦地じゃなかったから心配ないですよ」


(“だって”じゃないですよ!いつ戦地になるかわからない場所で、よその(ヤロウ)共にそんなことまでして、、)


「それに、ミケーレさんがついてくれてましたし」


「ミケーレ?」


「料理担当のミケーレさんです。シシ鍋に(いた)く感動しててですね~」


(嫌な予感がする……)


「お礼に今度、アザミ野の美味しいトマト煮込みの店に連れていってくれると言ってくれましたよ」


(やっぱり!!)


「そのお店、前菜も凄く美味しいらしいんですよ~

熟成された豚もも肉の塩漬けプロシュート……

薄切りの生牛肉にパルミジャーノ・チーズとオリーブオイルをかけた牛肉のカルパッチョ……

薄くスライスしたバケットにニンニクオイルをぬって、フレッシュトマトとバジルのブルスケッタ///」←全て暗記


(サクラさん、攻略されてる!!!)


「トマト煮込みはどんなだろうなぁ……くふふ///」


(ミケーレ、、また“ミケ”ですか!ミケランジェリといい、ミケーレといい、貴女ミケに弱すぎますよ!いっそ僕も“イシル”から“ミケル”に改名しましょうか!?)


「お友達も一緒に、て言ってましたから、イシルさんも一緒に行きましょうよ」


(違う、違うよ、サクラさん、その“オトモダチ”に (ヤロウ)は含まれてないんですよ!?)


無邪気に言ってのけるサクラにめまいを覚えるイシルさん。


「イシルさん、どうかしましたか?」


「……いえ」


「具合、悪そうですよ?」


貴女のせいです。


(やはりついていくべきだった……)


イシルはソファーに投げた上着を手に取ると 羽織りながらヨーコに話しかけた。


「すみません、ヨーコさん、今夜はサクラさんについていてもらえますか?」


「うむ、構わんが、出掛けるのか?」


「ちょとハイドンに会ってきます。ちゃんと収拾されたか気になりますから」


「うむ。あの場にいた者達には 妾がやったことにしてある」


「ありがとうございます」


ハイドンがそれで誤魔化されたとは思えない。

サクラは食材を持ち出すときにもあの銀色魔法を使っていたのだ。確認、しなくては。


それに――


(……ミケーレ)


邪魔者は早めに排除するに越したことはないでしょう。

イシルはヨーコにサクラを託すと、そのまますぐにアザミ野街へと出掛けていった。








「すみません、ヨーコ様、何から何まで」


「気にするな。今は養生せい」


「ありがとうございます」


“ズバ――――ン!!”


イシルと入れ違いに玄関のドアが凄まじい音を立てて開いた音がした。


「ランかな」


“ダダダダダダ……”


「“ラン”とは?」


リコがサクラに尋ねる。

サクラを心配してくれたのか、玄関からバタバタと走ってくる音がする。


「この家にもう一人、猫の男の子がいるんだけど……」


“ダンッッ!!がばっ”


「あ、おかえ、、り?」


リビングに入ってきたランはサクラを見つけるなりがばっとサクラに抱きついた。


ランを見て、再びリコがサクラに尋ねる。


「コレ、男の子か?」


「あれ?」


男にしては柔らかいカラダ――


「うわ――ん///サクラ――!!」


「ア、アイリーン?」


入ってきたのはランではなく、アイリーンだった。












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