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546. 女子旅 part2 ㉘ (キャベツのお味噌汁卵おとし)◎

料理写真挿入(2022/4/3)


サクラはリコを引き止めるために ありったけの力をリコに放つ。


行かないで

行かないで、リコ

お願い!


魔力切れを起こしかけているのはわかっている。

僅な力しか残っていない、だけど、それでリコを止められるなら、ありったけの銀色魔法をリコにぶつける。

私の、想い――


「誰かがとかじゃなく、私が、、」


心からの、願い――


「私が、死んで欲しくないんだよ!リコ――――!!!」


薄れ行く意識の中で リコの背中が小さくなって行く。


ああ、ダメだった……

私ではリコを止められなかったよ……


ごめん、ヨーコ







誰かが 優しく頭を撫でてくれている。


「気がついたようじゃな」


どれくらい気を失っていたのだろうか、サクラが目を覚ますと、目の前にはヨーコの顔があった。


「あ、、う、、」


(リコ、、リコは!?)


「無理して話すな、サクラ。本来なら明日まで目が覚めぬはず。妾の加護があるから今気がついただけじゃ」


起き上がり、話そうとするサクラを、ヨーコが優しく制止した。


(ダメだったよ、ヨーコ……私じゃリコを止められなかったよ)


ヨーコの優しい言葉に目頭が熱くなる。


(ごめん、ヨーコ)


それでもサクラはなんとか起き上がろうと力をいれる。


「これ、まだ無理じゃと言うに、、」


(私の事より、リコ!リコは!?)


「おっ、気がついたか」


(えっ!?)


ひょっこり、ヨーコの後ろから、当のリコが顔を覗かせた。


「リ、、コ、、」


サクラは声を振り絞る。

ヨーコの手を借りて、ヨーコにもたれかかるように身を起こすと、サクラはもう一度リコの顔を見た。


「リコ、、」


「なんじゃ、サクラ」


(なんじゃじゃないよ!心配かけやがって!!)


確かにリコはこの場から立ち去り、死地へと向かったはずだった。

ヨーコがリコを止めてくれたのかと、サクラはヨーコの顔を見上げる。

そんな戸惑いを見せるサクラに構わず、リコが嬉々として話し出した。


「サクラ、サクラ、わし、出逢うた!」


「……へ?」


「出逢うたんじゃ!!」


きゅううっ、と、リコがサクラの頭に抱きつく。


(うおっ///胸)


リコはヨーコに抱きつく感じになり、サクラはヨーコとリコ、二人の美女に挟まれ、ラブコメ主人公ラッキースケベ状態に。


「わしのドキドキがわかるか!サクラ!」


(ムグ///)


私も、ドキドキです、リコさんや。


「コレ、リコ、サクラが苦しんでおる、離れぃ!」


「べっ、オマエの指図は受けんのじゃ、サクラをヨコセ」


リコがぐいっ、と サクラを引っ張る。


「お主のせいでこうなっておるのじゃろ!サクラには妾の加護が付与してあるのじゃ、サクラが動けるようになるまで妾の元からははなさん!控えぃ!」


ゴオッ、と ヨーコがリコを威嚇し、リコは痺れたようにフラフラとサクラから離れた。


サクラを肩に抱き、フフン、と ヨーコがリコを見下ろす。

ドヤ顔ヨーコ様、おめずらしいです。


「リコ、、何が、、」


あれから一体何がどうした?

リコは何と出逢ったの?


「サクラと別れてからな、ワシ、小腹がすいて、パンをモグモグしながら、森の中を走っとったんじゃ」


(パン?魔法で出したのかな?)


「そしたら、獣道にでた瞬間、男と、、ぶつかってな」


(ん?)


「その男は、ぶつかって転んだワシに、大丈夫かと優しく手をさしのべてくれて、、」


リコがモジモジ顔を赤くする。


(これは、、もしや、、)


あれですか、リコさんや、『遅刻、遅刻~』と、パンをくわえて急ぎ走る少女が、少年と出会い頭にぶつかり、恋に落ちる少女マンガの定番シーン、遅刻する食パン少女ですかぁ!?


「ああ///あの大きな手///」


間違いない、リコは恋に落ちている。


「トモヤに似た優しげな空気感、なのに、白黒きっぱりはっきりしたヤツじゃった///」


恋の傷は恋で癒すんですね、正解デスヨ。


「ウンメイノヒトじゃ!サクラ!!」


さっきまで死ぬと大騒ぎしてましたよね、アナタ……


(何にしても、良かった、思いとどまってくれて)


「して、その人は――」

「おっ、来た来た♪」


どんな人かと聞こうとしたサクラの質問は登場した人物によって遮られた。

やって来たのは――


「気がついたんですね、サクラさん」


「……イシル、、さん?」


イシルだった。


「すみません、ドワーフ村で待っているつもりでしたが、無理でした」


寂しそうな笑顔。


(心配、かけたんだな、すみません)


「出来た?出来たか?イシル!」


サクラと話すイシルに、リコが嬉しそうにぴょんぴょん飛びはねながら、まとわりついた。


(リコのウンメイノヒトって、、)


「出来ましたが貴女のではありませんよ」


「そんなこと言うなよ、イシルぅ~くふふふふ///」


「サクラさんが先です」


(うわ、イシルさん、そんなきっぱり、はっきり!)


イシルは鍋を手に持っていた。

まとわりつくリコを無視し、サクラの前までくると、鍋のふたを開ける。


“ふわん”


鍋からは湯気とともに柔らかな味噌の香りが漂ってきた。


(あ、お味噌汁……)


「サクラさんのカバンから味噌を拝借しましたよ、持っていっちゃうから……」


鍋の味噌汁を椀によそって、イシルがヨーコにもたれるサクラの元へ来る。

リコはそれをじーっと見つめている。


「サクラさんは疲れるとお味噌汁飲みたがるでしょう?」


イシルがスプーンで味噌汁をすくい、ふーっ、と息をふきかけ、少し冷ますと、サクラの口元へ――


“じーっ”


(はっ!)


リコの視線を感じ、サクラはイシルの持つ味噌汁の椀に手を伸ばす。


「じ、自分で、食べられます、もう、ダイジョブ、それに、お味噌汁はすすった方がおいしいですから……」


「そうですか?気をつけて」


苦しい言い訳をし、サクラはイシルからお味噌汁の椀を受け取る。





挿絵(By みてみん)





「いただきます」


“ずずっ、、”


ああ、あったかい。

ほんのり甘いほっとする味。

この味は、、


(あげと、、キャベツ?)


白菜かと思いきや、キャベツの味わいだ。


“はむ、もくっ”


うん。

やわらかくなっているけど、白菜よりほくっとした、キャベツの芯が口の中に甘みをひろげる。


「美味しいですか?」


味噌汁を食べるサクラを見て、嬉しそうにイシルが微笑む。

サクラに食べる元気がある事にホッとしたようだ。


「美味しい///です」


あげとキャベツ。

良い。

油揚げはじゅわっと味噌汁をふくんでいて、揚げた香ばしさとともに、さっぱり味噌汁に味わいをプラスし、

あげの油感をキャベツで拭いさる。

相性バツグンコンビですね!


そして、卵。


“ぷつん”




挿絵(By みてみん)




ああ!半熟卵!こんにちは!!

キャベツとあげを半熟とろとろ黄身にくぐらせて、絡ませて口へ。


「ん~///」


濃厚!

まったり!

黄身がからまり、なんて贅沢な味わい!!

白身はぷるんと、口の中でぷりぷりおどり、口触りもいい。


サクラは味噌汁をすすりながらリコとイシルを見た。

リコは相変わらず熱い視線をイシルに向けている。


(イシルさんなら現世の事も少し知っているし、和食好き、リコと話しも合うだろうな……)


複雑な心境……


(でも、イシルさんって、やさしい雰囲気だけど、どちらかというと腹黒いよ、リコ)


恋は盲目、リコにはイシルがトモヤに似て見えるのだろう。


(私、私は――)


リコが現世でトモヤの事を思い身を引いたように、自分も――


「ヨーコさんもいかがですか?大好きなあげが入ってますよ」


サクラの思いをよそに、イシルが味噌汁をヨーコにも勧める。


「ワシ!ワシには!?」


「貴女は自分でよそえるでしょう、ヨーコさんはサクラさんを支えてて、自分ではよそえないんです」


(やっぱりリコに冷たい、イシルさん)


冒険者時代、仲間以外、特に寄ってくる女性には冷たかったと、サンミも言っていたのを思い出す。


「つれないこと言うなよ、イシルぅ~」


しかし、リコ、まったく動ぜず!!

イシルのほほをツンツン。


(あ、イシルさんがイラッとしてる)


イシルは珍しく笑顔のポーカーフェイスを崩し、嫌そうな気持ちを顔に出していた。


「自分で、ヤれ」


(おお!イシルさんからタメ口を引き出すとは!)


恐るべし、狸古(リコ)!!

好きと嫌いのエネルギーは=(イコール)だ。

対極に、同じくらい意識しているということ。

嫌いな相手を思い続けて好きになることもある。


(も少しやさしくしてやってよ、イシルさん、好きな相手から冷たくされたらリコが傷ついちゃうよ、折角思いとどまったのに)


しかし、サクラの心配をよそに、当のリコはたいして気にしていないのか、『世知辛いのぅ~』と言いながら、ウキウキと味噌汁をよそっている。


「久しぶりの味噌汁ぢゃ♪」


(ん?)


「ふはぁ///現世の香り♪」


(あれ?)


「ずずっ、、ん~///コレコレ♪」


(何かが、オカシイ)


リコがメロメロなのは、イシルじゃなくて――


(味噌汁!?)


サクラ、早とちり。


「どうかしましたか、サクラさん」


「……いえ」


「その顔はまた何かおかしな事を考えていたんじゃないですか?」


「え?いや、、」


「以前言いましたよね、僕の気持ちは、僕のものだと」


「ははは、は、、」


お見通しですね、イシルさん。


「イシルさん、こっちも出来たよ」


サクラが窮地に追い込まれそうになっているところへ、もう一人、ひょっこりやって来た。


「あっ、サクラ、気がついたんだね」


「パンディー!?」


パンダの獣人パンディーです。


「元気になって良かった」


「パンディー、何でここに……」


「何でって、ここ、牧場の裏山だから、、」


「あっ!」


そうだった。


どこか、遠くへ――


あの時、炎の檻に囚われて、混乱する中、サクラが思い描いた場所。

サクラが知ってる中で、アザミ野街から一番遠い場所は、ハーフリング村のはし、ギランの牧場の奥に見えていた裏山だった。


「僕はたまたま木材調達に来てたんだ。そしたら、リコにぶつかっちゃって、、」


(へ?)


サクラはパンディーからリコに目をうつす。

見ると、リコは真っ赤な顔してモジモジしていた。


(食パン少女、リコの想い人って、、パンディー!?)


確かに、白黒はっきりしてますね。































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― 新着の感想 ―
[一言] 金目猫様 いつも楽しく拝読しております<(_ _)>(*^-^*) あれですか、リコさんや、『遅刻、遅刻~』と、パンをくわえて急ぎ走る少女が、少年と出会い頭にぶつかり、恋に落ちる少女マン…
[良い点] サクラさんの全力がラッキーな出会いを招き寄せたのですね!! うわああん、よかったよ~。お幸せに!!(←気が早い) 白黒はっきり。もふもふ( *´艸`) パンディーさんは癒しです^^ 卵入…
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