543. 女子旅 part2 ㉕ (しあわせのかけら 2)★★★
挿絵挿入(2022/2/16)
外伝『流れ星』~しあわせのかけら~より。
リコが現世での出来事を話して聞かせます。
「そうしてワシはトモヤの犬として、現世で過ごすことになったんじゃ」
いきさつはわかった。
リコは異世界と現世を自由に行き来できるわけではなく、神によって現世へと落とされたのだ。
「私と逆バージョンですね。神に異世界に飛ばされて、出会った人に助けられて……」
「ふむ?サクラも神に飛ばされてこっちの世界にきたのか。現世で何か悪いことをしたのか?」
「いや、悪いことというか、不摂生が過ぎて、生活改善を……」
『暴食』という名の大罪です。
「いや~、『現世』とは魔物もおらず、平和な世界じゃった。初めて見るもの、触れるものは面白くてな、『魔力』がなくとも皆が同じように『力』を使える。すいっちひとつで 世界の事がわかる(テレビ)、湯が沸かせる(コンロ)メシがたける(炊飯器)、食いもんが温まる(レンジ)、部屋が暖まる(エアコン)、鉄のかたまりで素早く移動が出きる(車)、、なんとも便利な世界じゃった」
↑テレビに興味津々のリコ
外伝『流れ星』~しあわせのかけら~2話より。
「そうですね~、異世界に比べたら危険は少ないですね」
「サクラがのほほんとしとるのは そのせいじゃな」
すみません、すっとぼけで。
「でも、狸のままで、大変だったんじゃないですか?魔法も使えないし」
「うむ。じゃがそこでワシはトモヤのアパートの管理人のおトキと仲良くなってな」
リコは心臓が弱いおトキの声を聞きつけて、倒れているおトキを救い、仲良くなる。
一緒に商店街に出掛け、町の皆に『倫也の犬“マイ”』として紹介され、コンビニでバイト中のトモヤに手を振って 散歩する、おトキとのガールズデートが日課となった。
「町の者はワシを受け入れてくれた。奪うのではなく、人から溢れ、与えられる感謝の精気は格別なものじゃった。妖狐が何故人と暮らしているのか わかった気がしたわ」
リコは嬉しそうに言葉を続ける。
「畑荒らしのイノシシを退治したんじゃがな、その礼として、ショウヒンケンを貰ってな、買い物して、料理して、トモヤにうまいものを食わせてやったんじゃ。トモヤがそれを旨そうに食う姿が こそばゆくてな///」
リコがうっすら頬を染める。
(リコさん、トモヤさんの事……)
サクラは頬を染めるリコに親近感を覚えた。
自分が抱いているているイシルへの想いと重なる。
「それはトモヤさん、喜んだでしょうね」
サクラの言葉に リコの笑顔が曇る。
「うむ。じゃが、ワシが作ったことは知らん」
「え?」
「だってそうじゃろ、ワシはかわゆい子狸じゃったんじゃから」
「はい」
「料理をするためには身長が足らん」
「……ですね」
「魔法は使えんじゃろ、仕方ないから身体を変化させてな」
「?」
「脚を、伸ばしたんじゃ」
「えーっと、、よくわからないんですけど」
ハテナ顔のサクラに、リコが説明を加える。
「うむ、己の内なる気を集中させ、現世の古の神、『スサノオ』の力を借りて『脚力強化』をし、脚だけをムキムキにしてな」
「それはまた、なんというか……」
画的にかなりシュールですね。
「そんなみっともない姿、トモヤにだけは見られとうない。『お鶴』だって、『千手:カンノン』を使っては機織りしとるのを見られたからショックを受けていなくなったのじゃ」
(機織り『お鶴』?あ!鶴の恩返し!)
助けてくれた若者のために翼を千の手に変えて 千手観音さながら、パタン、パタンと機を織るお鶴。
決して見てはなりませんというお鶴の言葉を聞かずに 男はその姿を見てしまう。
↑お鶴に同情するリコ
外伝『流れ星』~しあわせのかけら~5話より。
「だから、トモヤは知らんのだ。ワシが作った事など。トモヤがバイトでおらん日を選んで作っとった」
「え?じゃあ、トモヤさんは誰が作ったとおもってたんですか?特に怪しまずに食べてたんですよね?」
「トモヤには心当たりがあったんじゃ」
「心当たり……おトキさん?」
リコは寂しそうに首を横に振る。
「トモヤはおトキに礼を言いに行ったんじゃが、その時違うと言われたんじゃ」
「じゃあ……」
「うむ。ある日おトキと散歩して帰ってくるとな、部屋に人の気配がする。トモヤのバイトが早く終わったのかと、玄関のドアを開けると、キッチンに――」
そこでリコは一度辛そうな顔をして言葉を止めた。
「キッチンに、女がおったんじゃ」
最後のは外伝『流れ星』~しあわせのかけら~ 8話の挿絵です。
現世でのリコの様子を詳しく書いた10話くらいのお話になります。
よろしければそちらもどうぞ(*^^*)
『流れ星』~しあわせのかけら~(リコ外伝)
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