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537. 女子旅 part2 ⑲ (ニュクテレテウス討伐:西『アイリーンの婿取物語 13』) ★

挿絵挿入(2022/1/9)




スターウルフに乗って 西の地区へやって来たアイリーン。

可愛い女の子の登場に 討伐に来ていた男達がざわめく。


「大丈夫ですか!?」


アイリーンは到着するや否や、すぐさま怪我人に駆け寄り、治療を施した。


「あ///ありがとう」


礼を言うのはアザミ野の緑の隊服を着た隊員だ。


「頑張って下さい」


「はい///」


アイリーンはにっこり微笑むと、戦場の中を走り、次なる怪我人へと向かう。


(さあ、見極めるわよ。全員チェックしなくっちゃ!)


隊服を着ていない冒険者はスルー。

根なし草、危険と隣り合わせ、収入不安定な彼らに用はない。

結婚に冒険なんていりません。

結婚指輪をしている男もスルー。

人のモノに用はない。

愛が欲しいんじゃない、家庭が欲しいのだ。


緑の隊服、アザミ野の兵士の胸にはワッペンがあり、ソコには小さなアザミの花と、V字のラインが入っている。

ラインの数が多い程階級が上。


(あの人、胸に勲章ついてる!)


治療しながら素早くチェック。

しかし、そうゆう男は指にもシンプルな指輪がはまっている。


(チッ、既婚者か)


青の隊服、カトレアの兵士の胸にもワッペンがあり、やはり街のシンボルのカトレアモチーフ。

そこには階級にあわせた星の数。

星の数が多い程階級が上だ。


また、シンボルのカトレアのモチーフの下に()()を示す刺繍がある。

剣隊なら交差する(つるぎ)、魔法攻撃部隊なら交差する杖、回復部隊は翼のマーク

わかりやすい。


今回合コンする予定だった男は四人。

三等兵、星一つの オーウェン(剣隊)、カーター(魔法攻撃部隊)

二等兵、二つ星の エイダン(剣隊)、ハリソン(回復部隊)


(西(ココ)にはカーターとハリソンがいるって言ってたわね)


アイリーンは 治療しながら名前をチェックし、戦況を見る。


″ウキュウッ″

″ギャンッ″

″グワッ″


戦況は討伐隊が押していた。

カトレアの青い隊服を着た隊員の中に、強い男が一人いるのだ。


一ツ星を胸に、さらに功績を讃える勲章をつけた若い男。

指輪はしていない。

逞しく鍛えた躰、気の強そうな顔は男らしく、自信に溢れている。

短い茶髪は、地属性魔法を使うのだろう。


アイリーンは その男の戦いっぷりを見て 押しているにもかかわらず 何故ここは怪我人が多いのかがわかった。


男がニュクテレテウスに斬りかかる。

ニュクテレテウスは両手を前に出し、やめてという身振りをする。

それでもかわまず、男はニュクテレテウスに斬りかかった。


″ズバッ″


“ウキュウッ!!”


ニュクテレテウスは 斬られると地に倒れ、人の姿となった。


「ううっ、、」


「ジェイデン!大丈夫か!?」


斬られた隊員に仲間が駆け寄り治癒魔法を施す。

男が斬ったのはニュクテレテウスの主、狸妓(リコ)に術をかけられ、ニュクテレテウスにされた仲間だったのだ。


「いい加減にしろ、ワイアット!」


仲間を斬った男、ワイアットは、フンっと鼻を鳴らすと、再びニュクテレテウスに向かう。


(なんてヤツ)


戸惑わないのだ。

相対しているのが仲間かもしれないのに 迷わず切り捨てる。


(三ツ星をつけているからといって、人柄まで三ツ星とは限らないわね)


やはり来て正解だった。

三ツ星と勲章、見た目の男らしさ、その高スペックに隠れて、合コンではこんな性格見えないだろう。

なるべく()()()は引きたくない。


「すまない、ハリー」


治療を受けた隊員が 回復魔法を施してくれた男に礼を言う。


(ハリー、てことは、あの人がハリソン?)


アイリーンはハリーと呼ばれた人物を観察する。

カトレアの青い制服、優しい顔立ちの、金髪の男。

胸に回復要員のシンボル翼のマーク、そして、二ツ星。


(きっとそうだわ)


仲間思い、そして、上級の一ツ星相手にも意見を言える、ちゃんと、自分をもった人物。


(悪くないわね)


回復部隊ならそう簡単に死にはしないだろう。

アイリーン、ターゲットロックオン!!





ワイアットの前に 人の背ほどもある、脚の長い蜘蛛が現れた。

アクア・アラーネア、アメンボのような見た目の水属性の魔物だ。


「ニュクテレテウスだろうがアクア・アラーネアだろうが関係ねぇ、、斬るだけだ!」


アクア・アラーネアは尻の方から糸を出すのではなく、口から粘性のある水玉を飛ばし、敵を動けなくする。

巣を張り、()()()ではなく、()()()()をする魔物だ。


注意するのは粘着性のある水の玉。

ワイアットは アクア・アラーネアが水玉を繰り出す前に懐に入り込むと、八本あるうちの二本の脚に斬りつける。


“キシシ……”


アクア・アラーネアが脚を斬られ、膝を折り、斜めに傾いた。


ワイアットは、傾いたアクア・アラーネアの高くなっている方の()を 下から押し上げて、、


「むんっ!!」


一気にひっくり返した。


″ズド――ン……″


ひっくり返されたアクア・アラーネアは、起き上がろうとじたばたもがくが、起き上がれないでいる。


「トドメだ!」


ワイアットは 剣先を下に、槍のように剣を持ち直すと、アクア・アラーネアの腹に突き刺す――


「そこまでだ!ワイアット!」


「なっ!?ハリソン、何を、、」


何故か、ハリソンが剣を持つワイアットの腕にしがみつき、ひき止めている。


「今回の討伐は ニュクテレテウスを南に追い立て、集め、主をあぶり出す事だ、殺す事が目的じゃない!」


「どっちだって同じだろ」


「同じじゃない!!ひとつひとつに命があるんだ!ヤメロ!」


「魔物に同情かよ」


「魔物にだって役目がある。アクア・アラーネアはファイア・ファラエナを駆逐してくれる。森に必要なんだよ」


ファイア・ファラエナは火属性の魔物で、火の鱗粉を撒き散らす。

火を嫌うアクア・アラーネアはそれを消火し、ファイア・ファラエナを狙い、食料としている。

図らずとも、山火事を防いでくれているのだ。


「ニュクテレテウスだってそうだ。この山の茸がよく育つのは彼らのおかげ、だからなるべく殺さずに、南に追い立てる作戦になっただろう!」


「そんな甘ちゃんだからお前はいつまでたっても二ツ星どまりなんだよ、男として恥ずかしくないのか!」


「別に二ツ星でも構わないさ、僕は仕事をするだけだ」





「あの二人、同期なんすよ」


治療しながらワイアットとハリソンのやりとりを見ていたアイリーンに、治療されていた隊員が声をかけてきた。


「珍しいピンクの髪、アイリーンさんすよね?オレ、カーターっす。今日、会うはずだった」


「えっ!あ、、」


アイリーンが今治療している 赤い髪の男は、胸に杖の交差するマークと一ツ星をつけていた。

ハリソンと同じくこの西に配属された今日の合コン相手、魔法攻撃部隊のカーターだった。


「手紙、間に合わなかったんすね、すんません」


「いえ、、」


「こんなとこまで来てくれて、治療してくれて、嬉しいなぁ///」


「私でお役に立てるなら」


アイリーンは笑顔を作る。

情報源、げっとん!!

早速ターゲット:ハリソンの情報収集だ。


「あの二人はいつもああなの?」


「そうっすね。ワイアットは向上心の固まりすからね。能力的にはひけをとらないハリソンさんが目障りでしょうがないんすよ。人望も厚いすからね、ハリソンさんは」


ふむふむ、実力はあるのね……φ(..)メモメモ


「勲章も、ハリソンさんが貰うはずだったのに、辞退したんすよ、あの人。先に立って命張ってる訳じゃないから貰えないって。でも、その時の指揮はハリソンさんがとってたようなもんですよ。やりたい放題のワイアットを今みたいに諌めてさ」


ナルホド、人間が出来てるわ……φ(-ω-`)カキカキ


「オレ、あの人大好きっすよ。ハリソンさん程、カトレアの街を思ってくれてる人はいないっすもん」


誠実、人望も、あり。と……φ(´▽`〃)るんっ♪


カーターはおしゃべり好きなのかハリソンが好きなのか、ペラペラと話してくれた。


ハリソンは、今の行動からもわかるよう、中々の人物のようだ。


アイリーンがカーターから情報を聞き出していると、ビュウッ、と一陣の風が吹いた。


「うわっ!」

「きゃっ!!」

「何だ!?」


その場の全員が 飛ばされないよう身を低くする。


「待て!狸妓(リコ)!」


(この声……)


早すぎて姿は見えなかったが、そのすぐ後に ヨーコが風を追って通りすぎたようだ。


(あの疾風が狸妓(リコ)だったのね)


風がおさまり、隊員達が立ち上がる。

アイリーンも衣服を直し、髪を整え、言い争いをしていた二人を見た。


(あれ?)


おかしい。


ハリソンの隣に立っていたワイアットがいない。

今の疾風で飛ばされた?

ひっくり返っていたはずのアクア・アラーネアもいない。


代わりに、そこには ニュクテレテウスが二匹、ハリソンを見上げてちょこんと可愛らしく立っていた。


ワイアットだけではない。

争いがおさまり、二匹一組のニュクテレテウスが、ぽつり、ぽつり。


「一体何が……」


「今の疾風は ニュクテレテウスの主、狸妓(リコ)だったようです、ハリソンさん」


戸惑っているハリソンに アイリーンが声をかける。


「君は?」


「今日、会うはずだったアイリーンすよ、治療してくれてるんす」


カーターがハリソンにアイリーンを紹介する。


ナイスアシスト!カーター!

アイリーンは控えめな感じでニコリとするだけで済んだ。

自分で言うより人からの紹介の方がでしゃばらないでいい感じ。

第一印象大事です。


「じゃあ、ワイアットは その狸妓(リコ)に術をかけられたと?」


「そうだと思います」


アイリーンに言われ、ハリソンはニュクテレテウスに向き直る。


「えっと、、ワイアット?」


ハリソンが訪ねると、二匹のニュクテレテウスがコクコクと頷いた。




さて、どっちがワイアット?





挿絵(By みてみん)















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― 新着の感想 ―
[一言] 金目猫様 うわー!二匹のニュクテレテウス(⋈◍>◡<◍)。✧♡ かわいいですね<(_ _)>(*^-^*) あいくるしい! アイリーンの男を見る目(家庭を作るための観点)も 現実的でイ…
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