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498. ジョーカーとアール (ジョーカーの場合)




ジョーカーはコワモテの悪魔マルクスと共に『冒険の書――ωσи∂єяℓαи∂――』の複製を行うべく、スライム″ぽよんちゃん″の部屋に来ていた。


紫色のスライム″ぽよんちゃん″に、マルクスが本を差し出すと、ぽよんちゃんはそれをトプンと飲みこんだ。


「二つに」


マルクスがそう告げると、ぽよんちゃんは、ぶるぶるっと震え、ぽよん と 二つに分裂する。

二つに別れた二匹のぽよんちゃん。

それぞれの体の中に 本を宿して。


(こんなことが出来るのか)


スライムにそんな能力があるなんて聞いたこと無い。

特殊個体ってヤツだな。


二匹のぽよんちゃんはマルクスの腕にぴよんっ、と飛び乗ると、マルクスの腕に本だけを残して ずるりと下に流れ落ち、また一匹に戻った。


そして 寝床であるクッションまで戻ると再び眠りにつく。


「こちらで間違いないか?」


マルクスは二冊のうちの一冊を ジョーカーへと差し出した。


「うん。こっちが原本だ。サンキュー」


これで再び ワンダーランドの物語りは 世に知らしめられるだろう。

ジョーカーは 本を胸にきゅっ、と抱き締めた。


「この後は別の者が案内する。扉の外で待て」


マルクスはジョーカーにそう言うと、薄暗い部屋の影に入り、そのまま影に吸い込まれるように消えてしまった。


(悪魔、、か)


悪魔ってこんなに親切でいいの?

ここのやつらはかわってる。





本の複製を終えたジョーカーがぽよんちゃんの部屋を出ると、扉の外に クマのぬいぐるみが立っていた。


クマのぬいぐるみは明るい声で 屈託なく話しかけてくる。


「はじめまして、ジョーカー。ボクはアール。宜しくね。この後はボクが『ラ・マリエ』を案内するよ」


(こいつも、憑喪神だ)


人形は魂が宿りやすい。

アールは人懐っこく話しかけてくる。


「嬉しいな♪仲間ができて」


アールは主人と一緒に このラ・マリエに世話になっているそうだ。


「ボクも最近ここに来たんだよ」


人の世で主人と一緒に過ごせるなんて うらやましい。

アリスが生きていた頃、ジョーカーはジャックの()にいたし、そのジャックでさえアリスの()()()でしか一緒には過ごせなかった。


「アールはいつから人の世にいるんだ?」


「ここに来てからだから、最近だよ。それまでは ミケランジェリ、、ボクのご主人様だね。ミケランジェリと話すことも出来なかったんだ。だけど、サクラがやって来て、ミケランジェリの世界を壊し、その後アス様がミケランジェリを連れ出してくれたんだ。そしてボクを動けるようにしてくれたんだよ」


「サクラ、か」


サクラはどこへ行っても、誰に対してもお節介なんだな。


「ジョーカーは召喚士なんだってね、カッコいいなぁ、、ボクはモンク(格闘家)だから。魔法はちょっとだけしか使えないの」


宿る精霊は主に似る。

空想好きのアリスからは召喚士ジャック(ジョーカー)が生まれた。

アールの主人はあまり魔法が得意ではないらしい。

力業が得意な、強引な主人のようだ。


「お庭も素敵なんだよ、こっち!来て来て」


アールがジョーカーの手を引き、薔薇の庭園へと連れ出す。

主人同様 アールも強引だ。


「ほら、見て!」


アールに連れてこられた薔薇の園は かぐわしい香りに包まれ、色とりどりの薔薇が咲き乱れていた。


薔薇のアーチに薔薇のトンネル。

噴水は水を湛えてキラキラと陽に輝き、水の玉が薔薇園を光りか輝かせている。

薔薇に宝石が飾られているみたいに美しかった。


薔薇の迷路には動物の形に刈り込まれた植木がオブジェのように植えられている。


(アリスが 好きそうな風景だな)


アリスの事を思っていると、アールが少し遠慮がちに話しかけてきた。


「ジョーカーはさ、ご主人様を待ってるんでしょ?」


「……ああ」


「じゃあさ、ご主人様が戻る時のために、沢山素敵な場所を探しておかないとね」


「!!」


「この薔薇園とかさ、見せてあげたいよね、ご主人様に」


そうか、アールはオレの事を――


(励ましてくれてるんだな)


アールが強引だったのはジョーカーのため。

ジョーカーを元気づけるため。


「ボクもご主人様と話せない辛さはわかるからさ」


アールが恥ずかしそうにはにかんだ。

心のキレイなクマのぬいぐるみ アール。


まっすぐに主の事を考えていて、人がよくて 控えめに優しくて ()()()を思い出す。


「ジャックみたいだな、お前」


「え?何?」


「いや、何でもない」


ここにいるのも悪くないかもしれない。

ここにいる間に、もっと強くなって、アリスを守れるように頑張ろう。


そう思えた。





しばらくアールと薔薇の園でお喋りしながら打ち解け、次は水族館なるとこに連れていってくれると言うので ラ・マリエの中に入ろうとしたその時、


″ゾクリ″


ジョーカーは激しい悪寒に襲われた。


(何だ!?どこだ!?)


ジョーカーは辺りを見回す。


「どうしたの?ジョーカー」


心配するアールに返事も返さず、ジョーカーは怯えたような様子で悪寒の元を探った。


すると、庭園の裸婦像の陰に――


″(( ̄_|じ~っ″


こちらを見つめる人影発見!


(アイツだ!!)


その人物は 閉じた瞳でジョーカーと目を合わせると、にんまりと口のはしをあげ、懐から人参をとり出した。


古竜ラプラス登場!!


ラプラスはニンジンをジョーカーに差し向けちらつかせると、ジョーカーを呼ぶために声を出した。


″ルールルルルル″


(……)


″ルールルルルル″


それはキツネを呼ぶときの声だ、ラプラスよ。


「あれ?古竜様、そんなところで何してるの?」


アールがラプラスに気づいて 無邪気に駆け寄っていく。


「あっ、バカ、行くな!」


″ズボッ″


「わあ!」


「アール!!」


アールの体が地面へと沈む。


(罠!?)


言わんこっちゃない。

アールはラプラスの前に開けられた落とし穴へ落ちてしまったのだ。


罠にかかったのがジョーカーではなくアールであったことに、ラプラスがチッ、と 舌打ちをした。


そして、ジョーカーを見て くちの両はしをあげ、にんまり笑うと、おいでおいでと手招きをする。


(ひいいっ!狙われてる!!)


ジョーカーはラプラスから逃げるため、ラ・マリエの二階の窓へと飛びついた。


「ぬっ、何処へ行く!?人参食わんのか」


「別に人参好きじゃねぇ!」


全てのウサギが人参好きだと思う無かれ。

オレは肉が好きだ。


「待て!我と獣魔契約をしようではないか!さあ、我の胸に飛び込むが良い!」


ラプラスが二階のジョーカーに向けて両手を広げる。

窓辺でラプラス愛の告白!?

熱烈ラブコール。


(そんなの絶対ゴメンだね!)


ジョーカーは 窓からラプラスを見下ろし、その手から逃れるべく、『冒険の書――ωσи∂єяℓαи∂――』の表紙に手を置いた。



″「陽」の気を持つ白色(はくしょく)と、

「陰」の気を持つ黒色(こくしょく)

その二つの調和を身に纏いし灰色の時魔導師よ

我が呼びかけに応え その姿を現せ――″



ジョーカーの呼びかけに『冒険の書――ωσи∂єяℓαи∂――』が光り、風もないにページがペラペラとめくれる。

あるページに来たところで、一層強い光が輝き、本の中から風が舞い上がった。



″世界の扉は開かれた。

いでよ!時の魔導師、、チコ!!″


「ほ――――い♪」


ジョーカーに喚び出され、、


本の中から 背中に大きな時計を背負った灰色のウサギが飛び出してきた。





◇◆◇◆◇





【ラプラスvsチコ】



「うわぁ、すごーい!」


落とし穴の中から這い上がってきたアールが、ジョーカーの召喚魔法を見てパチパチと手を叩く。


「へへーん、白ウサギの右腕、時計ウサギのチコ様の登場さ!さあ、俺様の相手はどこのどいつだい?」


アールのキラキラ憧れの目差しと拍手に気を良くする灰色ウサギのチコちゃん。


「ほう、コレまた可愛らしいウサギであるな、さて、お前は何をしてくれる?」


ラプラスは遊び相手が登場したことにウキウキと近寄って来た。


「ふふっ、お前が俺様の相手か、刮目せよ!」


チコは相変わらず相手の度量が見抜けないようで、口だけは一人前。

ラプラス、目つぶってるから刮目出来てないけどね。


「いくぞ!タイム・カード!!」


チコが叫ぶと、ラプラスの周りの時間がトランプカードとなり、パラパラとピラミッドのように積み上がり、ラプラスを覆いつくした。


チコは間髪いれず呪文を叫ぶ。


「それ、タイム・ボカ~ン!!」


″ボン、ボン、ボン、″


ラプラスを覆いつくした 時のカードが一斉に爆発を始める。

しかし、爆炎の中のラプラスは動じることなく、無傷で煙の中から出て来た。


「ふむ、中々面白い技を使うな。良いぞ♪良いぞ♪」


一歩、チコに近づこうとするラプラスに、チコは続けて攻撃呪文を唱えた。


「これでもくらえっ!タイム・スリップ!!」


″つるん″


「おっ?」


ラプラスの足元の時間が滑る。

ラプラスはバランスを取るためにもう一歩、踏み出す。


″つるん″


「ふはははは、滑る滑る♪」


つるつる、つるつる。

楽しそうにバランスを取るラプラス。

それはまるで波乗りしているようである。


「何だよ!何でお前時間の上を歩けるんだよ!なんでそのまま流されない!?」


チコが不本意そうにラプラスに叫んだ。


「時間を操るのは我も得意でな」


時の川も越えられます。


先程のタイムカード攻撃も、ラプラスは内側の自分に面した側の時間を止めてガードしたようだった。


「次はこちらからも行くぞ、、」


ラプラスがてを前に掲げると、そこにふわんと光の球が浮かび上がった。

ラプラスはその球を大きく振りかぶって――


「ふんぬっ、」


チコに向かって、投げた!


″ゴオッ!″


180キロの豪速球!

チコはその球を迎え撃つために構える。


「こなくそっ、タイム・リー・ヒットぉ!!」


″カッキーン!″


チコはそれを打ち返し、時の玉の鋭い一撃がラプラスめがけ迫った。

これはタイムリーヒットではく、ピッチャー返し。


『スロウ』


ラプラスは目の前に迫る一撃に 速度を下げるスロウの時魔法をかけ、威力を落とす。


「甘い!″クイック″」


チコはそれを、速度を上げる″クイック″の魔法で上書きする。ラプラスにそのまま 痛烈な一撃、なるか!?


『カーブ』


しかしラプラスは光の珠がぶち当たるすんでのところで 目の前の空間を湾曲させた。

すると、時間の玉はくるりと弧を描き、スロープを滑るように チコの方へ方向転換した。


「げっ!」


今度はチコがピンチ。


「た、た、た、タイム・ゾーン!!」


チコは目の前に小さなブラックホールを作り、光の玉を飲み込ませ、それを回避する。


「ふふふ、中々良いな」


チコとのキャッチボールに ラプラスご満悦。


「では、我も主に敬意を払い、真剣に勝負してやろう」


「へ?」


まだ真剣じゃなかったの?

チコちゃん、結構いっぱいいっぱいで、既に肩で息をしてます(←最初から全力投球)



ラプラスはうっすらと 閉じていた瞳を開く。

ラプラスの瞳の奥には宇宙が広がっていた。


(キレイだな、、)


チコはその美しい瞳に心を奪われ、目をはなすことが出来なかった。


ラプラスの瞳に捕らえられたチコは――


「あわわわわわ」


いつの間にか宇宙のど真ん中にいた。


(もしかして、コノヒト、とんでもないヒト?)


ようやく相手との力の差を感じたチコが恐る恐るラプラスに尋ねる。


「あの、、あなた様は何様でございますか?」


「我か?我はただの古き竜だ、うはははは」


古き竜、、てことは、、


(えんしぇんと・どらごんんっ!?)


何てモノと戦わせるんだジョーカーは!


(逃げよう!)


チコは逃亡のための呪文を叫んだ。


「コメットさ~ん!!」


流れ星に乗って、地上へ!!

しかしラプラスがそれに被せるように 呪文を唱える。


怒羅魂・聖夜(ドラゴン・ナイト)


どっかんどっかんと 彗星の雨が降り頻る。

チコのコメットの上位魔法、『メテオ』だ。


光り輝く彗星群が降り注ぐその様は 聖夜の如く美しい。


「ぴぎゃっ!!」


チコの呼び出した流れ星群コメットは ラプラスの彗星群メテオにことごとく打ち砕かれ――


『無限回廊』


チコはあっけなくラプラスに捕らえられてしまった。


「うわ~ん」


くるくる、くるくる、


捕らえられた無限回廊の中で 回し車のハムスターのように走るチコ。


「ふふふ、怒羅魂・聖夜(ドラゴン・ナイト)、中々良いネーミングであろう?」


ちょっと中二入ってますよ、ラプラス様。


































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