表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
483/557

483. ハーフリング村 (パンディーの夢の架け橋)




「ローラー滑り台は動力のないコンベアみたいなもので、乗ってる人の重みによって一つずつのローラーがすべり、回転して前に進むの」


「ちょっと待って、サクラ、今スケッチブック持ってくるから」


「筆記用具必要でしたらこれを」


イシルが亜空間ボックスから筆記用具を取り出し、パンディーに渡した。


パンディーはありがとう、と、イシルから受け取ると、サクラの説明を熱心に聞き、サラサラと絵を描いていく。


「こんな感じ?サクラ。ローラーの中心部に()を入れて浮かせ、回転するように作り、()の両はしを枠で挟んで組んでいくのかな?」


「多分、そうかな。ローラー自体はもっと細いよ。そして、みっちり」


「ふんふん」


「私も ローラー滑り台すべったことはあっても、構造まではよく知らなくて」


「でも、イメージは伝わったよ。ありがとうサクラ」


パンディーは描いた図をながめながら考えをめぐらしてゆく。


「滑るとき 手を挟んだり、服が巻き込まれないような工夫が必要だね。そうすると、、ローラー自体も軽くないといけないのか、、軽くて丈夫なもの、、木製だと無理かなぁ~材質は何だったかわかる?」


子供の頃はアルミだったかな。

最近は騒音軽減とオシリのためにシリコンゴムでコーティングされてるのも見かける。

アルミで通じるのかな?


「アルミだったり、それをゴムで薄くコーティングしてあったり」


「やっぱり軽いんだ」


通じたようだ。


「全てではなくても、木を中心に、丈夫でなくてはいけないところは金属にしてみては?木製にこだわりがあるなら、パンディーさえ良ければ、僕が補強の魔法をかけますよ?」


「本当に!?僕、金属加工は上手くないから、ローラーは細い青竹を考えてたんだ。あれなら中が空洞で軽いし、踏んでも割れないからさ。強化してくれるなら使えるかも。ありがとう、イシルさん!」


「ただ、一人で作るには大変ですね。作業もですが、材料調達も」


「うん……」


イシルは改まってパンディーに提案する。


「パンディー、これは、村長(むらおさ)に話をあげた方がいいと思います」


「えっ?」


イシルの言葉にパンディーが戸惑った。


「いや、でも、、」


「これは君の夢ですから、自分一人の手で造り上げたいというのであれば、それでも構わないのですけれど」


「ううん、僕の夢は、子供達がその滑り台で遊んでくれることだよ。そうじゃなくて、、僕の夢に皆を巻き込むなんて、そんな大それたこと、、」


パンディーの声が小さくなる。


「僕はこの村の出身じゃないし、、」


ゴニョゴニョ、消え入るような声。

その背に 怒ったような声が飛んできた。


「アホなこと抜かすな、パン」


やって来たギランが ゴイン、と パンディーの頭を小突いた。


「お前は俺の息子やないか」


「ギラン……」


「ギランやのうて、父ちゃんと呼べや言うとるやろ」


「うん、、父ちゃん///」


ギランが小突いたパンディーの頭を撫でる。


「お前はこの村の子や。俺の自慢の息子や」


ああ、ほっこり。


「ほな、話を摘めまひょか~」


そんなほっこり雰囲気を一気にオズが破壊し、ギランとパンディー、イシルを交えて、『パンディー夢の架け橋計画 ローラー大作戦』を進めていった。


資金面、人材なんかの話になると、サクラがいてもしょうがない。

伝えることは伝えたし、、


「ちょっと、運動してきますね」


サクラは食べた糖分を分解すべく、パンディーのアスレチックランドを巡ることにした。


「オレも」


ランもサクラについて 一緒に運動。





「サクラ、そっちがわに乗れよ」


「……イヤだ」


「何で?これ、一人じゃ遊べないだろ?」


サクラはツン、と、()()をスルー。


え?何かって?

ランがサクラを誘ったのはシーソー。

それは軸を挟んで両側に座り、ぎっこん、ばっこん。

上下に跳び跳ねる遊具です。


何故嫌がったか。

だって、()()ですよ?

重い方が下に、軽い方が上に上がるんです。当たり前だけど。

ランの身長体重なんて知らないけれど、サクラの方が重い可能性は十分にある。

そんなの目でみちゃったら、、

現実を叩きつけられたら、、


体重知られていても立ち直れない _| ̄|○


(シーソーなんて、絶対やらない!!)


なけなしの乙女の心を折らないでおくれ。ラン。


サクラはジャングルジムへと向かい、懐かしさを感じながらよじ登る。

木製のジャングルジムは 木の香りがして優しい。

手を痛めたりとげが刺さったりしないよう、なめらかに、でも細かく切り込みが入れられて、滑らないように仕上げられていた。

パンディーの 遊ぶ子供達への配慮が見て取れた。


ジャングルジムはそのま見張り台の小屋に繋がり、うんてい梯子やクモの巣のようなネット、滑り台にターザンロープと繋がる 複合遊具になっている。


「ちょっと高さがあるだけでも随分遠くまで見えるな」


牧場は元々広くて見晴らしが良いのだが、見張り台からは更に牧場の奥まで見渡せて、爽快感がある。

風がさわさわと心地いい。


「そうだね。ローラー滑り台ができたら、もっと凄い景色が見られるんだね」


サクラは見張り台から繋がる滑り台をすべって降りる。


″つるるる~っ″


滑り台の滑り部分は 百日紅(サルスベリ)の木のようにツルツルで、短いけれど結構なスピードが出た。

でも、最後のスロープを長めにとってあり、すんなり止まることができた。

着地点には芝のようなものが植えられており、転んでもクッションのかわりをしてくれる。


(パンディー、、愛があふれてるね)


こんなふうに工夫が凝らされた遊び場、是非とも多くの子供達に遊んで欲しいものだ。


サクラはもう一度見張り台に登る。

今度はジャングルジムからではなく、木の壁をよじ登って。

木の壁は 少し傾斜をつくり、ロッククライミングのように、ポコポコと凹凸があって、登れるように造られていた。


サクラは壁を登りきって、ランはどこかと探せば、ランは はん登り棒から()()()()でこちらにやってくるところだった。


(うお///カッコいいな、ラン)


腕に力が入り、きゅっと筋肉がしまり、手首から腕、肩へのラインがたまりません。


(眼福♪眼福♪)


心に栄養、ゴチソウサマデス。

因みにサクラはうんてい出来ません。


うんていの梯子の下は ロープで組んだクモの巣ネットがある。

クモの巣ネットで遊べるだけでなく、もし()()()()棒から落ちても あのクモの巣ネットが受け止めてくれるんだね。


「サクラ、コレやろうぜ」


ランはサクラのところまでやってくると、サクラをターザンロープに誘った。


「ラン、先に行っていいよ」←見たい


「何言ってんだよ、一緒にやるんだよ」


一緒に?

ターザンロープを??

どうやって???


ランはターザンロープを持つと、サクラを自分の前に立たせて、二人いっぺんにロープの輪をくぐり、ロープを尻に引っ掻けた。


「なっ///」


サクラはランの膝の上に乗っかる形となる。


「ちょっと、二人は無理デショ!?ロープ、キレる!」


「大丈夫、大丈夫」


てか、この格好が大丈ばない。

オシリに、、硬いモノが当たってる!?


「いや、ラン///私一人で乗れるから、、」


サクラが立とうとするのを ぐいっとランが引き戻し、再びサクラはランの膝の上に、ペタンとしりもちをついた。


″ぐりっ″


(ひっ///)


「あ、ゴメン、サクラ、当たっちゃった?」


それ、聞く!?


「いや、あの、その、、」


「痛かったよね?」


いや、君の方が痛いだろう!ラン、今、結構強くぐりっと踏み敷いたよ!!


「亜空間ボックスに閉まっとくから」


「え!仕舞えるの!?」


大事なモノを!?


「コレだろ」


ランが左手をひょいっとサクラに見えるように差し出した。

それは、ランが骨董市で買った 卵肌婦人の″魔戻りの剣″だった


「へ?短剣?」


サクラの間の抜けた声に ランがクスリと笑う。


「なんだと思った?」


「いや、、別に……」


「ふーん」


「///」


ああ、勘違い。

くそう、恥ずかしいな、もう。


「良かった」


「?」


「オレをちゃんと男として見てくれてたんだな、サクラは」


わかってんじゃんか!当たったのがなんだと思ってたか!!


「だから///違うって!!」


ランは言い繕うサクラの耳に口を寄せて、ぼそりと一言。


″オレのはもっとデカいよ″


そして、タンっ、と、スタートステップを踏み出した。


「うわっ!!」


ぐんっ、と 体が宙に投げ出される。


(安全ベルト、してねぇぇ!!)


″しゅるるるる~っ″


ターザンロープが二人分の勢いをもって、加速する。


(ひいいっ、ロープ軋んでるっ!!重量オーバーだっちゅーのっ!)


「あはは、やっぱ二人の方がスリルあんなぁ~」


ロープがキレるスリルですかぁ!?

ランはサクラを膝の上に、風を受けてご機嫌なご様子。


(ヒイイイィ!!)


この、、


「セクハラ大魔王おぉぉぉ――――!!!」





◇◆◇◆◇





「わああぁー!!!」

「あははははは」


サクラの叫びとランの笑い声が牧場に響く。


「えらい楽しそうやな」


「あの二人はいつもああですよ」


「せやな」


打ち合わせをしながらのイシルとオズの会話。

牧場主のギランもそこに加わった。


「子供の笑い声がするんは、やっぱりええなぁ」


いや、サクラもランも良いオトナですよ、ギランさん。

パンディーは楽しそうなサクラとランの様子をチラチラ見ている。


「なんや、パンも遊びたいんか」


「えっ?いや僕は、、」


遠慮するパンディーに、ギランが優しい言葉をかけた。


「ええから、お前も行ってこい。久しぶりやろ」


「でも、これは僕の夢の事だし……」


「かまへん、かまへん、わてらはパンディーの夢に乗っからせてもらうんや、手伝いは惜しまんて。パンディーはエエもん造ること考えてくれたらええんや。楽しいもん造るためにも遊んで来ぃや」


「うん、ありがとう、オズ」


オズの後押しにパンディーが立ち上がり、サクラたちの元へと走る。

むにむに走る後ろ姿がかわいらしい。

イシルも立ち上がり、その後を――


「ちょちょちょちょ、イシルの旦さんどこ行きはるんで?」


「え?僕も遊びに――」


イシルの言葉が終わらないうちに、ガシリとオズがイシルの上着の裾を掴む。


「待ってぇや、これから村長んとこに話し持ってくのに もっと詰めんと、人員やら材料費やら、クリアせなあかんことは山積みや!」


「それは自分達でやってくださいよ」


「そんな冷たいこと言わんと、助けて~、同盟村の発展のためやでー!?非力なわてらだけでは建築は無理やし、ドワーフやオーガの村にもオタスケマン頼みたいんや~、旦さん旦さんイシルの旦さん!姐さん(サクラ)の喜ぶ顔見たいでっしゃろ?姐さん(サクラ)の笑顔が一番でっしゃろ?なぁなぁ、()()()の イシルの旦さん!!!」


「うっ///」


サクラの名前を出されたら手伝うしかない。


「……わかりましたよ、さっさとまとめましょう」


オズはパンディーには優しかったがイシルは逃がしてくれなかった。


(パンディー(もふもふ)と遊ぶサクラさんを眺めたかったのに……)←両方大好き
































評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[良い点] ちゃんと村の子として・・・ギランの優しさにホロッとします。 丁寧に加工した遊具の様子。思い遣りが沢山! [一言] ぐりっと(笑) 勘違いしますねぇ~これは~ 亜空間にしまえるのかと驚くのも…
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ