475. 骨董市(三日目) ★◎
挿絵挿入(2021/8/28)
イメージ壊したくない方は画像オフ機能をご利用下さいm(_ _)m
あとがきにイメージ写真挿入(2021/8/31)
朝食後、部屋でゆっくりお茶を飲んだ後、出掛ける支度をして サクラとイシルは宿の出口へと向かった。
ランはまだ部屋で寝ている。
今日は三人別行動になるからね。
イシルは本を、ランは短剣を買いに骨董市の店をみてまわり、
サクラは 昨日アスと約束した通り、ディオのお店に アスとヨーコとラプラスを連れて行く予定なのだ。
サクラはまだ文字がうまく読めないし、武器の良し悪しなんてわからないから、よくよく考えれば、サクラがいない方がイシルとランは 欲しいものをじっくり探せるのかもしれない。
アスとヨーコとラプラスは ハーフリング村にある もうひとつの宿『鹿鳴館』に部屋をとったようで、頃合いを見てこちらに来ることになっていた。
(あ、いた!)
サクラは宿の外にいるヨーコの後ろ姿を見つける。
アスとラプラスの姿が見当たらないけど……
「ヨーコ様、お待たせしました!」
サクラがヨーコに駆け寄ると、ヨーコがこちらを振り向いた。
(!!?)
振り向いたヨーコは、左手に小さな子供を抱き、右側に これまた小さな子供の背を支えていた。
ヨーコの左手に抱かれた子供は 金の髪のロングの癖毛で、タレ目つり眉のキレイな顔の男の子。
右にいるのは ウサギのぬいぐるみを抱き、水の流れのように涼やかな銀の長い髪を背に垂らした、瞳を閉じたままのこれまた美しい男の子。
もしかして……
「アスと、ラプラス?」
「あら、やっと来たのね子ブタちゃん」
「遅いぞ、待ちくたびれたわ」
やっぱり!
チビッ子になったアスとラプラスだった。
「……どうしたの?二人とも」
「今日訪問する店は『イケメンお断り』なんでしょ?」
「コレなら文句あるまい」
二人とも自分でイケメンとか言っちゃうし。
実際イケメンだけど。
「愛いであろう?抱いてもよいぞ?」
自信満々ラプラスがサクラに手を伸ばす。
「……いや、いい」
「なっ、何故だ!お主子供は好きであろう!?」
「だってラプラス冷たいし。私、凍えちゃう」
「毛布でくるんでくれれば良かろう!」
「面倒」
「ぐっ、、」
ていうか、可愛げがない。
お顔は大変可愛らしいですよ?
だけど、何故かふてぶてしさが増している。
小さくなったってだけで威圧オーラ俺様大爆発ですよ?
声太いし。
絶対、子供じゃ、ない!!
「ふふっ、竜ちゃんはヨーコに抱いてもらいなさい、さ、子ブタちゃん♪」
アスはヨーコの腕から飛び降りると、サクラに両手を伸ばし、抱っこをせがんだ。
しかし、サクラはずざっ、と 後ろに身を引く。
「子ブタちゃん?」
「遠慮しておきます」
「何で!?しかも、何で敬語!?」
キケン!危なすぎる!!
子供ビジュアルでなんちゅー色気を醸し出すんだこの悪魔!
そんなアハン顔の子供抱っこしてたら犯罪者扱いですよアタしゃ!!
こいつも、子供じゃ、ない!
後ずさったサクラの頭をイシルがなでなで。
「?」
何故撫でられてるんだ?
そしてイシルさん、なんで機嫌良さげなの?
「何かあったらヨーコさんの後ろに隠れるかランを呼ぶんですよ?」
「わかりました」
撫でていたサクラの頭を寄せて 当たり前のように頭に唇を落としキスをすると、それじゃ、頼みましたね、と ヨーコに念押しし、イシルは骨董市へと出掛けていった。
「では、参ろうか、サクラ」
「///はい」
サクラはイシルにキスされた頭を撫でながらヨーコに並んで歩きだす。
後ろに納得いかなそうな顔をしたチビッ子アスとチビッ子ラプラスを従えて、ディオの店へ。
アスとラプラスは チビッ子になってもディオに拒否られるだろうなと思いながら。
↑チビッ子アス(悪魔)を抱っこするヨーコ様(妖狐)
ジョーカー(付喪神)を抱っこするチビッ子ラプラス(古竜)
ヨーコ様、尻尾はしまい中
ラプラス、髪の毛しまい中(笑)
旅は色々身軽にね♪
◇◆◇◆◇
(子供なら誰でもってわけじゃないんですね、サクラさん///)
ほくほく顔のイシルは 本を探しに骨董市の中を巡る。
中央広場から小道へ入り、さらにその奥へ。
路上に広げられている店をひやかしながら、色んな商品が並ぶ間に置かれている本を手にとってはパラパラとめくって歩いた。
ドワーフの村とは違い、ハーフリングの村は細い裏道がいくつもあり、迷いやすい。
逃げ、隠れることを得意とし、小柄であまり力の強くない種族の村だから、というのもある。
(サクラさんを連れてこなくて良かったな)
薄暗い小路。
この辺りは看板のない店や、貴族相手の怪しい店が並んでいる。
たまに女が立っていて、イシルに声をかけくる。
ハーフリングではなく、人族の女だ。
花町はないが、そういう宿はあるのだ。
求めるものがいると、それは自然と発生し、商売となってしまう。
お互いがいいのなら別に構いはしないが、その分治安は悪くなる。
ハーフリングという種族は 戦闘に不向きで、村の警護はほぼ他種族の冒険者で構成されている。
ドワーフの村の警備隊も寄せ集めだが、ハーフリングと違い、ドワーフは戦士、村人でさえ強いのだ。
警備隊の雇われ冒険者は 長く留まる者もいれば、流れ者もいる。
良くないものと癒着する者も出る。
ドワーフの村が平和すぎるだけだ。
(幸か不幸か今までドワーフ村は アジサイ街とアザミ野の町に挟まれた三つの村の中で一番訪れる者が少なかったしな)
それでも雇いの冒険者が門から離れ、魔物が侵入したり、金を持ち逃げしたり、はたまた冒険者自体が泥棒だったりしたこともあった。
今はギルロスがいて管理、統一、教育してくれている。
イシルは心でギルロスに感謝した。
人目のつかないこんな場所には、それなりに訳アリ商品が集まってくる。
盗品だけではなく、曰くつきのものや、持ち主の亡くなったもの、勿論掘り出し物も多く、面白いものが手に入る。
路上に ポツリ ポツリ点在する店を見ながら、イシルは本を探し歩いた。
(この辺りは、猫が多いな)
建物の陰や窓の縁、屋根の上、結構な数の猫を見かける。
ネズミ取りのために買っている家が多いのか?
キラリ、イシルの進む前方、道の影にも、猫の目が光った。
(?)
それは、不思議な毛並みの猫だった。
黒でもなく蒼、、いや、紫か?オレンジにも見える。
夜の色というのだろうか?
どんな景色にもとけ込むような不思議な毛色をした一匹の猫。
右は金目、左は銀目のオッドアイ。
その不思議な猫は、イシルをじっと見つめると、ふいっ、と横の小路に入っていった。
(何だ?)
何故か気になり、イシルは猫の消えた小路を覗く。
すると、すぐ脇に店を広げて座っている男がいた。
暇なのだろう、こくり、こくり、舟を漕いでいる。
(不用心だな)
先程の猫は、、いた。
一冊の本の上に乗っかって丸まっている。
イシルが近づくと、その不思議な毛並みの猫は 針金のように目を細め、にしゃりと三日月型に口を広げて嗤い、、
(!?)
本の中に溶け込むかのように、すうっ、と、消えていなくなった。
イシルは猫が乗っかっていた本を手に取る。
『冒険の書――ωσи∂єяℓαи∂――』
かなり 古い本だ。
イシルが子供の頃に読まれていた本。
今は使われていない言語で書かれているため、もう読める者はいないだろう。
おとぎ話、夢の国の話し。
はじめての冒険、未知との遭遇、謎の数々。
たしか、いくつかシリーズがあったはず。
イシルは懐かしく本のページをめくった。
病気の母の為に虹色の草を探し旅立つ主人公。
不思議の国ワンダーランドに住むおかしな住人。
§ウサギ穴§
§蛙の唄§
§蜂と黄金虫の大戦争§
§お茶会に招かれお菓子の家で大騒ぎ§
§ツバメの城の貴婦人§
イシルは丁寧にページをめくる。
(アスに翻訳させれば復刻版が作れそうだな。そしたらサクラさんも読める――)
″虹色の草″の手がかりを持つウサギを追って ワンダーランドをかけめぐる。
(あれ?)
§″盾″の乙女と″剣″の勇者§
イシルは見覚えのない『章』を見つけた。
(こんなの、あったか?)
その章は記憶をなくした王子を救うべく、二人が奔走する話だった。
(これは、、)
サクラと、ランの事だ。
うさぎ穴からイシルを追って、助け出すまでの物語り。
イシルがその章を読み終えると、スウッ、とそこだけ消えてなくなった。
イシルはページを一枚めくる。
″コロン″
本の間に小さな小石が挟まっていて転げ落ち、イシルはそれを拾い上げ、てのひらに乗せて眺めた。
イシルの瞳と同じ 透きとおった翡翠色の小石。
ティアドロップ型の石の中には 小さな白い薔薇が一輪閉じ込めてあった。
裏を返すと、月の形が刻まれてある。
サクラが彫った、不格好な三日月の形が――
″ニャー″
どこからか猫の鳴き声が聞こえた。
『ちゃんと、お返ししたのねん』




