466話 ѕαкυяα ιи ωσи∂єяℓαи∂ 29 (トルコライス) ◎
後書きに料理写真挿入(2021/8/15)
「サクラさんは何が食べたいんですか?」
パスタを茹でるイシルがサクラに聞いてくれる。
「え?私は、、何でも」
イシルさんが作るなら何でも。
「何でもが一番困るのですが……」
ですよね。
母にもよく言われましたよ、何でもが一番困ると。
せめて『和食』『洋食』『中華』とか、『茄子』『芋系』『辛いの』とか、なんでもいいから言ってほしい、と。
「ですよね。じゃあ……」
パスタを食べるなら、糖質の少ない野菜とか、チーズとか、卵とかが合う?
スペイン風オムツ、みたいな。
「本当に食べたいものを食べても大丈夫ですよ」
悩むサクラにイシルが素敵な言葉をくれる。
「ここは『夢の中』なんですから」
「夢の、、中?」
「ええ。糖質、関係ありません」
マジでか!!?
「今、サクラさんも僕も『生身』じゃありませんから」
私も?
てことは、夢でラプラス(当時はラプンツェル)に会った時みたいに、鏡に飛び込んでワンダーランドにやって来たのは私の意識だけだったんだ……
えっ!?じゃあ私とランの『本体』は あの鏡の前にいるの!?
鏡の前でぶっ倒れていると!?
うわぁ、、今頃騒ぎになってないかな、
″旅人二人 年の差カップルの心中――か?″とか(←『か?』だけ新聞の折り目の反対側にあって見えない)
オズ、面倒かけてごめんよ~
今さら心配しても仕方がない。
今は腹を満たそう。
「あの、私が作っていいですか?」
「僕じゃ作れないものですか?」
「いえ、イシルさんも作れますけど、材料が特殊なので」
「ああ、食材がこの世界にはないものなんですね」
「はい」
「じゃあ、僕がお手伝いします。味つけはサクラさんお願いしますね」
サクラは魔道具の食材ボックスに手を入れる。
人が思い描く食材は なんだって取り出せる 夢のボックスだ。
サクラは食材ボックスから、小さな粒の入った袋を取り出した。
「それは、何ですか?」
「これは――」
硬い半透明の小さな粒状のもの。
サクラが取り出したものは、、そう、
「『米』です」
「コメ?穀物のようですが、麦とは違うんですね?」
「はい。米は私の世界での『主食』なんですよ。麦よりもっちり粘りけがあって、噛むほどに甘みが増すんです」
「甘いってことは、糖質が多い、と」
「そうですね」
米は麦よりもデンプンが多い。
デンプンは人のだ液により糖にかわる。
だから噛むほどに甘みが増すのだ。
糖質制限で穀物や芋類を控えるのは、大量にデンプンをふくんでいるからなんです。
「私やシズエさんがやってるが『糖質制限』では、真っ先に摂取量を減らせと神(医者)に言われる食べ物です」
水をいれ、シャカシャカと米をとぐサクラの手元を眺めながら、イシルがふむ、と 思い出した。
「そう言えば、シズエも『コメ』が食いたいとぼやいていましたね」
サクラはイシルの記憶がちゃんと戻ってることに安心しながらイシルに答える。
「多分、神によって私やシズエさんが異世界に飛ばされたのは、この世界に米がないからなんだと思います」
「そうですか、では僕は 感謝しながら この『コメ』を食べなくてはならないですね。シズエにも、サクラさんにも会えたのだから」
イシルがサクラに笑いかけた。
久しぶりの日常感。癒されますなぁ。
「私も///イシルさんに引き合わせてくれた米に感謝です」
珍しく、本音に甘い空気を含ませたサクラに イシルは満面の笑みをくれた。
↑注※二人きりなら押し倒してた
それからサクラが取り出したのは『ケチャップ』
ケチャップ大さじ1杯(15g)あたり糖質量は3.9g
マヨラーサクラの好きなマヨネーズは大さじ1杯(12g)0.4gと、糖質は少ない。
しかし、脂質は多いよ?
因みに中濃ソース大さじ1杯(17g)5.1g
ウスターソース大さじ1杯(17g)4.5g
何故、ケチャップを取り出したかと言うと、、
ケチャップライスが食べたいんです!!
サクラとイシルは早速料理に取りかかった。
白兎のぬいぐるみのジャックがスローロリスのロリスとカエルのケロッグにお茶をいれ、食卓の準備をしていると、時計ウサギのチコがやって来た。
チコはお茶に加わろうとしたところをジャックにつかまり、そのまま食卓の準備を手伝わされる。
さすがジャックの片腕だ(笑)
今まで動いて疲れかたからと ランは昼寝していて(←夢の中で昼寝とか)
アリスはランの眠る隣で 絵本を読み、時折ランの寝顔を眺めては 気恥ずかしそうに頬を染めていた。
ジャックから生まれたもう一人の″J″であるジョーカーは 少し面白くなさそうにしながらも、遠目でアリスを見守っていた。
「うまそうな匂いだな」
しばらくして、料理が出来上がる頃に 匂いにつられてランが起きて来た。
いつもながらいいタイミング。
「運ぶのくらい手伝ってよね」
「おうよ」
いつもなら、もっと前、食卓の準備から手伝わさせるのだが、ランは今日は頑張った。
サクラを探して走り回り、守り、戦い、すごく頑張ったから、許してやろう(←飼い主だから上から目線)
サクラが出来上がった料理をランに渡し、食事の支度が整ったところで、全員が食事の席に着いた。
今日のメニューはサクラの出身地、長崎のご当地グルメ『トルコライス』
ひとつのお皿にピラフ、パスタ、トンカツが乗っかった『大人のお子さまランチ』
名前の由来は諸説あるが、中華のピラフ、和食のトンカツ、洋食のスパゲッティの食文化のミックス感が、東西の文化が交わるトルコに通じるということで、トルコライスというんだ、とか、三色のトリコロールカラーだから、とかいう説がある。
サクラが食べたかったのは、この大人のお子さまランチ。
炭水化物(ご飯)+炭水化物+炭水化物(トンカツの衣)の、カロリー、糖質がっつり飯!
「「いただきます!」」
サクラはフォークを持つと、トルコライスに手をつけた。
喫茶店で注文すると、スプーンとフォークが出てくるが、サクラはフォーク一本で食べる。
いちいち持ちかえたりしない。
食事に集中したいからね。
プレートにはサラダも一緒にのっているが、今日はベジファースト必要なし!
食べたいものから、食べる!
(やっぱり、ご飯!)
ご飯はピラフではなく、ケチャップライス。
たっぷりケチャップは糖質いっぱいなので中々お目にかかれないが、今日は解禁!
ケチャップライスの上にはトンカツではなく、小人達が作ったハンバーグがのっている。
そして、なんと、その上にかかっているのは、、カレー!
ケチャップライスとカレーが合うのか?
くどいんじゃないかって?
食べてみればわかりますよ。
サクラはフォークでご飯をすくい、口に入れる。
″はむっ、、むぐ″
「んんっ///」
口にいれた瞬間、ケチャップの甘酸っぱい口当たり。
そこにビーフのエキスがたっぷりにじみ出たカレーが絡まり、ケチャップライスの酸味があることで爽やかな味わいになっている。
コク深く、濃厚なのに、くどさは全く感じられない。
「おいひぃ///」
ケチャップライスも、カレーも味の主張が激しい食べ物。
でも、どちらもまけていない!
それを結びつけているのが、主食の『米』だ。
″もぐっ、もぐっ″
噛むほどに米の甘みを感じる。
「はぁ///」
ああ、泣ける!
麦も美味しいよ?でも、何十年と慣れ親しんだ米の味わいは、体が覚えていて最高に美味しい!
″はむっ、もぐっ″
サクラが炊いた米は、少し硬めで、一つ一つの粒がたっている。
米という字は八と十と八で構成されている。
お米を作るためには88回手間がかかっているそうだ。
だから子供のころ、農家の人に感謝して、米は88回噛めといわれた。
そんなに噛めませんが、農家の人、ありがとう!!美味しいです!
「はうぅ///」
添えてあるパスタはナポリタン。
これよ!これこれ!
玉ねぎ、ピーマン、ウインナーと、トマトソースではなく甘いケチャップのナポリタン!
これが食べたかったの~
フォークにくるりと巻いて口に入れる。
″ちゅるん、もぐっ″
今日はケチャップ尽くしだ!コノヤロウ!
炒めたケチャップは甘さが増すね!
ほろ苦ピーマン、玉ねぎの甘み、ハムの塩気とあいまって、パスタに絡みつく!
パスタはアルデンテより少し柔らかめ。
ベーコンではなくプリンと歯ごたえウインナー入り。
これぞ喫茶店のナポリタン!!
「ん~っ///」
″じーっ″
サクラは視線を感じ、横を見ると、七匹の小人達がサクラを見ていた。
あれ?口にケチャップついてる?
私より君たちのほうが口の回り、凄いよ?
(ああ、ハンバーグ)
トルコライスの上に乗ってるハンバーグ。
これは小人達が作ってくれたもの。
食べろってことか?
サクラはハンバーグをフォークで割って口に入れた。
″あぐっ、、もぐっ″
表面はこんがり焼かれ、パリッとしているが、中は柔らかい。
ふわふわと柔らかいのは 豆腐が入っているからだ。
優しい口当たりで柔らかいけれど、しっかりと肉の味わいが感じられ、噛むと肉汁が溢れてくる。
これ、何個でもいけちゃう!
「ん///おいしいね」
サクラは小人達に笑顔で感想を伝えた。
小人達が一斉にテレる。
はにかみやシャイなんか、リンゴみたいに真っ赤だ。
「王子は///その、美味しそうに食べるね」
「僕達の作ったの、そんなに美味しい?」
「うん、美味しいよ、ありがとう」
七匹はもじもじと恥ずかしそう。
「もっと///食べてよ」
沢山食べろと せっかちハスティーがサクラをせかす。
すると、サクラの反対隣に座るイシルが立ち上がり、サクラを小人達から隠すように間に入った。
「サクラさん、席を変わりましょう」
「?」
なんだか知らんが、サクラはイシルと席を代わった。
「旦那さま~」
「見えないよ~」
「王子を隠さないでよ~」
「見せて~」
「見せません」
イシルはサクラを自分の影に隠して小人達に告げる。
「君たちにはまだ早いです」
小人達がブーブー文句をたれる中で、サクラはイシルの陰で
トルコライスを口に入れる。
″はむっ、もぐっ″
くううっ///幸せ絶頂!!
しかし、一体何が、早いんだ???




