465話 ѕαкυяα ιи ωσи∂єяℓαи∂ 28 (遅れてきた強敵) ◎
後書きに料理写真挿入(2021/8/14)
風を切り現れた敵に対し、サクラはイシルの眠るガラスの棺の前に立ち、通せんぼをするように 両手を広げ、仁王立ちする。
現れたのは ランだった。
「どけよ、そこに寝てるのはイシルだろ?」
寝てるなら好都合、目を覚ます前に、イシルがサクラを認識する前にぶん殴って記憶を戻したいラン。
「どかないよ」
サクラは気迫を放ち、ランを睨んだ。
(イシルさんの頭髪は、私が守る!!)
サクラvsラン!
ランは足に力を込めて、地を蹴った――
″ひらり″
「あっ!」
サクラがランのスピードに勝てるはずもなく、ランは余裕でサクラの横をすり抜ける。
(だよね、仕方ない)
「イタイっ!」
「えっ!?」
当たったはずないのに 痛がるサクラの言葉に対し、ランが反応。
停止し、振り向いた。
(かかった!)
フェイクだ。
ずるいけど、ハンデでいいよね?
サクラはランが振り向いた隙にランを追い越して、寝ているイシルの頭に被さるようにして守り、抱え込んだ。
「イシルさんには触れさせないから!」
「お前、、離れろよサクラ!」
「い・や・だ!」
ぎゅう、と、イシルの頭を抱える。
「離れろって!」
「い・や」
ぎゅう。
「お前、イシル窒息するから」
「へ?」
「……」
「わあ///」
必死すぎて胸でイシルの顔を塞いでしまったサクラは あわててイシルから離れた。
「ごめんなさい///ごめんなさい///」
サクラはイシルに平謝り。
「……いえ、大丈夫です、息は」
むしろご褒美!?
息は大丈夫だが、反応に困るイシルさん。
サクラは再びイシルを庇うようにランとの間に入った。
「イシルさんの髪は切らせないよ」
「……何言ってんだ、お前」
「だって、丸坊主……」
「そんなことしねーよ。やったらオレがサクラに丸坊主にされるんだろ?」
そうだった。
「ぶん殴るだけだから」
いや、爽やか笑顔で言われても、それもダメだから。
「……話が見えませんが、、何で僕がランに殴られなきゃいけないんですか」
事態がのみ込めないイシルが怪訝そうにランに質問する。
「いや、ぶん殴れば思い出すかと思ってさ」
イシルさんは昭和の家電じゃありません!
「あれ?イシル、お前、記憶あるの???」
ランの名前を呼んだイシルに対し、ランがイシルの記憶があることに気づいた。
「ええ。目が覚めたら思い出しましたよ。まだここに来てからの記憶が少し飛んでますが、まあ、大丈夫でしょう」
「そうか……」
ランはイシルの様子に明らかにホッとした顔をした。
「ははっ、なんだ、そうか」
笑みまで浮かべて。
ランの嬉しそうな様子に イシルも、ふんわり笑みを浮かべた。
「心配してくれてたんですね、君も」
「っ///そんなんじゃねーよ」
照れ隠しでツンになるランは、わらわらとよってきた七匹の小人に囲まれ、ぎょっとする。
「うわあ!王子様だ!」
「本物の王子様だよ!」
「カッコいいなぁ~」
「素敵だなぁ~」
「うわっ!何だ?お前ら」
うふふ、あははと、七匹のたれミミうさぎがはしゃぐ。
「旦那様も~」
「本物の王子様も~」
「帽子屋マッドなんか目じゃないね!」
「他の物語に自慢できるよね~」
「かーっこいー」
「「「ねーっ♪」」」
ランの膝上程の身丈の小人が 足にまとわりついてきて、キラキラした瞳でランを見上げる。
「っ///そんな澄んだ瞳でオレを見るんじゃねぇ!」
うん、わかるよ。
何も知らないような無垢なあの瞳でキラキラと見つめられたら、なんだかごめんなさいと言いたくなるよね。
″くぅぅ……″
「あっ///」
またしてもサクラのお腹がなってしまった。
「お腹減りましたよね、すぐに作りますよ」
サクラの悲しげな腹減りの音と、ランの妨害に、イシルはキスを諦めて立ち上がる。
キッチンへ向かおうとして、少しふらつく。
サクラは慌ててイシルを支えた。
「私も手伝います」
「旦那様」
「旦那さま~」
小人達も、ふらつくイシルを心配してもいもいと寄ってくる。
集団行動、かわいいね。
「「僕たちも手伝いたい~」」
サクラは思う。
隠れもふもふ好きのイシルさんは、アリスにではなく、この子達にやられたんじゃなかろうか、、と。
◇◆◇◆◇
ワンダーランドには魔力はないが、キッチンには魔道具が揃っていた。
人の夢の国、ワンダーランド。
手に入らない食材はない。
肉も、魚も、野菜も、人が思い描くものはなんだって。
当然、お豆腐も(笑)
イシルは牛と豚の合挽き挽き肉と、卵、ネギ、豆腐を出し、七匹に渡した。
こねこね、こねこね、七匹の小人が挽き肉をこねる。
豆腐ハンバーグだ。
「ウサギの形にしていい?」
「僕は星方!」
「僕は満月!」
いや、満月は普通の丸いハンバーグじゃね?
七匹が楽しげにハンバーグを作っている間に(←放置)イシルはパスタを茹でる。
「何をしているの?」
すると、アリスとジャックがキッチンに入ってきた。
その後ろには――
(あっ、、ジョーカー!)
きれいに傷の治ったジョーカーが、所在なさげについて入ってきた。
(良かった、アリスに会えたんだね)
その後ろには、消えたはずのスローロリスのロリスとかえるのケロッグさんの姿もあった。
アリスの力で復活したのだ。
「皆で食事にしようと思ったんですが、もっと作らないとですね」
「腕がなりますね、イシルさん」
イシルは新たに食材を取り出した。




