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463話 ѕαкυяα ιи ωσи∂єяℓαи∂ 26 (サクラvsうさ耳小人) ★

挿絵挿入(2021/9/24)

イメージ壊したくない方は画像オフ機能をご利用下さいm(_ _)m




鏡の中のワンダーランドには、左右が逆だがイシルの家があった。

サクラはロバのロシナンテに乗ったまま、懐かしき森の家の前庭へと進み入った。


前庭の木陰に七匹のうさ耳小人、その小人が取り囲んでいるのは ガラスの、、


(棺――)


サクラは息をのむ。


ガラスの棺の中には、真っ白なバラが敷き詰められ、その中には白い正装に身を包んだ白雪姫――


ではなく、イシルが眠っていたからだ。


「イシルさん!?」


眠ってるの?

眠ってるだけだよね?


「あっ!王子様だ!」

「白馬に乗った王子様だよ!ロバだけど」

「王子様!」

「王子様!!」


サクラを見つけたうさ耳小人が、もったもったとオシリを揺らしながら、わらわらとサクラのもとに集まってくる。

″お気楽ファニー″を中心に、ほんわか、ほがらか、能天気な空気を醸し出して。




挿絵(By みてみん)





サクラはロバのロシナンテの鞍から左右に吊り下げてある、足を置く(あぶみ)を踏み、自転車から降りる要領で片足を後ろに回し、飛び降りた。


呆然とイシルを見つめるサクラは、小人達に囲まれて 棺のそばまで連れていかれる。


「イシルさん……」


やっと見つけたイシルさん。


長い睫を伏せ、閉じられた瞳。

流れるにまかせた 美しく長い金の髪。

編み込んでいないイシルの髪は、サクラのために切った前髪がイシルの顔を隠している、


サクラは手を伸ばし、イシルの目にかかる前髪をそっと払った。


形のいい眉が現れ、サクラはそれを指でやさしくなぞる。


(良かった、温かい)


呼吸をしているようには見えないが、触れた指先にはイシルの体温を感じる。

サクラは胸に組まれているイシルの手に触れ、手首を取った。


親指の下。

そこに指を当て、イシルの脈を見る。

ゆっくりだが、ちゃんと脈があり、サクラはひとまず安堵の息を吐いた。


「王子様、お願い」

「王子様、助けてよ!」

「旦那様が目を覚まさないんだ!」


″怖がりフィアー″の不安そうな顔が全員を不安にする。

棺なんかに寝かせないでよ、紛らわしいな、縁起でもない。


「何でガラスの棺なんかに寝かせてるの?」


病人ならベッドでしょ?

温かくして、楽な服装させて、医者を呼んでくれ!


「だって、決まりだから」

「そうだよ。お姫様が倒れたら、綺麗な棺に寝かせて、王子様が通るのを待つのが常識だもん」


だもん、じゃないよ、この小わっぱ共!


「綺麗でしょう?」


「そりゃ、綺麗だけどもさ」


イシルさんはお姫様じゃないからね?

綺麗だけど、男の子だからね?


「王子様、早くしてよ」


″せっかちファスティー″が 早よしろ、早くとせかしたてれば、まわりの小人もそれに習う。


うさ耳小人達は期待に満ちたキラキラの瞳でサクラを見上げている。

なんだ、このワクワクした瞳は(汗)


「旦那様を起こしてあげて」


「起こすって、どうやって?」


「やだなぁ、とぼけちゃって」

「言わせないでよね、常識でしょ!」


もじもじと″はにかみやシャイ″が頬を染める。

まわりの小人達も恥ずかしそうにきゃときゃとお互いをつついている。


おとぎ話の常識。


毒リンゴを喉につまらせた白雪姫を目覚めさせたのは、通りすがりの王子様の――


″くちづけ″


「なっ///」


サクラは顔を真っ赤にして狼狽えた。


イシルさんにキスしろっての!?

この純真そうな小人達の前で!?


「キス、、」

「キス、、」

「キスしてよ、王子様」


「いや、だから、私は王子様じゃなくて、、」


わたわたあせるサクラに、小人たちがジト目でサクラを追い詰める。


「カボチャパンツ!」

「パフスリーブ(←肩の袖の膨らみ)!」

「赤いマント!」

「王冠に、」

「白馬!」

「その格好はどう見ても王子様じゃないか!」

「与えられた役割はちゃんとこなしてくれないと困るよ!」

「お仕事でしょ!」


仕事なの!?


かわいい小人達に しっかりしてよねと怒られた。


こんなことならランを先に到着させるべきだった。

そしたら美しいキスシーンが見れたのに!(←個人的趣味)


しびれを切らした小人の一人、″お気楽ファニー″が歌うように調子をとってコールする。


「キ~ス……キ~ス」


どこにでもいるんだな、お調子者って。

それに会わせて 他の小人も声を合わせる。


「「キ~ス、キ~ス」」


「なっ///」


それはやがて、七匹の合唱となり――


「「キ~ス」」


「あ、そーれ」


「「キ~ス」」


「よいしょ」


「「キ~ス」」


「もいっちょ」


「「キ~ス」」


「さらに」


「「キ~ス」」


「オマケで」


「「キ~ス」」


「盛大に!」


「「キ~ス」」


結婚式の二次会ですか!?

ノリノリですね?


「わかったから///静かにしてくれない?」


心の準備がいるんです。

自分のタイミングがあるんですよ!


小人達は ぴたりと静かになってくれた。

なってくれたのだが、その目はキラキラと好奇心に満ち、大きく見開かれている。


目は口ほどにモノを言う。まさに!


「向こうむいて――」


見るなとサクラが言おうとしたら、うるっ、と、″泣き虫サッド″を中心に、全員が眉を下げてとても悲しそうな顔をした。

なんとも罪悪感をおこさせる顔だ。


やめてよ、その顔。私がイジワルしてるみたいな気分になるじゃん!


「……いいよ そのままで」


サクラはあきらめて棺の中のイシルに向き直った。


まずは深呼吸。


(大丈夫、相手は寝てるんだし……)


サクラは身を乗り出した。

しかし、その寝顔を見たら、、


(美しいっ!!)


眩しすぎて腰が引ける。


(イシルさんのためなんだし……)


サクラは一度引いた身をもう一度乗り出した。

小人達も固唾をのみ、見まもる。


イシルの、その唇に――


(そういえばイシルさん、私の事を忘れてるんじゃ……)


目を開けて知らない女がキスしてるなんて、どうよ?

美女ならまだしも、モブ顔フツメン、ぽっちゃり、コスプレ女って、どうよ?


またしてもサクラが途中で止まる。


「ああん!王子様、ヤキモキするから早くしてよ!」

「焦らさないで!」

「いい加減にしてよね」

「こっちの息が止まっちゃうよ!」


また怒られた。

″おこりんぼカンガー″大爆発。

七匹の小人は、一人一人は個性的だけど、同調し、それを増幅させ、七匹が一体となって激しく主張してきやがる。

数の暴力!?


「あんまり焦らすとしらけるよ?」

「……すみません」


サクラは小人達に後押しされ、イシルに顔を近づけた。


「おでことか……」

「頬とか……」

「まぶたとかだめだからね」


ギクリ、サクラが止まる。

くそっ、逃げ道をふさがれた。


「わ///わかってるわよ」


イシルの、、


唇に、、


サクラの唇が近づいて……


イシルの唇にふれようとしたその時――


″ぐうっ″


「……」

「「……」」


″ぐるるきゅうっ″


サクラのお腹が盛大に鳴った。


「「王子様っ!!」」


七匹の小人達が声をそろえてサクラにつっこむ。


キス、未遂!


「もうっ、王子様、何でお腹鳴らすかな!」

「雰囲気台無し!」

「この空気どうしてくれるの!?」


「すみません」


サクラは小人達に向き直り、正座して反省中。


「謝ってすむ問題じゃないよ?」

「仕切り直しだよ!」

「登場からやり直せ!」


「ごめんなさい」


可愛い顔して容赦ない。


「前代未聞の王子様だよ!」

「歴史に名を刻めるね」

「悪い方でね!恥ずかしいなぁ」

「同じ場面を構成する僕らの名にも傷が付いちゃうでしょ!」


「面目ない」


「まったく、ちゃんとしてよね!」

「今度こそキスしてよ?」

「お腹空いたんですか?サクラさん」

「口に、ぶちゅっと!!」


「ぶちゅっとって、、ん?」


「「ん?」」


あきらかに小人たちじゃない声がまざっていた。


聞き覚えのある声。


今、なんて言った?


サクラは棺の方を振り向く。

小人達も目をむける。


硝子の棺の中の人物が 子首をかしげている。


そこには、眠っていたはずのお姫様が――


「何か、作りましょうか?サクラさん」





――お姫様は目覚めのキスではなく、王子様の腹時計によって目を覚ました。




















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