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459. ѕαкυяα ιи ωσи∂єяℓαи∂ 22 (サクラ vs ジャスミン 2) ★

挿絵挿入(2021/8/10)

イメージ壊したくない方は画像オフ機能をご利用くださいm(_ _)m




満月のコンパクトによって本当の姿を表した夢魔 ジャスミン。


カマキリを思わせるマスクに、なまめかしい肢体に不釣り合いな長い尾尻(おじり)

長い足の片方は青銅で出来ており、もう一方の足はロバの足だ。


戦隊もの悪役、魅惑の女怪人ジャスミン、シビレマス!!

ああ、ここにカメラがあれば『一枚良いですか?』と撮影会が出来るのに!


(あれ?)


その特徴的な長いおみ足、サクラはその風貌に見覚えがあった。

年甲斐もなくはまったソシャゲ(ソーシャルゲーム)の 美麗カードの中に、ジャスミンと同じように青銅の足とロバの足をもつ魔人がいた。

なんだっけ?


夢魔と言えばサッキュバス、インキュバスの名が浮かぶけど、それらにそんな足の特徴は無かったはず。


ナイトメアも、違う。

そんな有名どころじゃなく、もっと聞いたことないような名前だった。


リリス?リリン?リリム?


リリスは全ての悪魔の母だったっけな。

目の前のジャスミンは そんな大層な悪魔には見えない。

アスモデウス、、ラ・マリエの館の悪魔、アスみたいな何ともしがたいようなえげつなさはない。

その部下のマルクスさんでさえ、ジャスミンより全然危なそうだ。


(ゲームの魔物カード★6が最高レア度の中でも あのカードは★4だったし)


★4、ザコではないが、普通くらい。使えなくはない(←使わなかったけど)


絵画で有名なアルプ?

眠っている女の人の上に乗っかってる猿みたいなヤツが頭に浮かぶ。

背後に馬が描かれていたけど、ジャスミンは馬の方か?ちがうな。


う~ん、、ラミア?……いや、あれは蛇だ。

ジャスミンはカマキリだから……


(あ!)


サクラはカマキリで思い出した。


植物に擬態するカマキリの一種で、ヨウカイカマキリ科に属する細いカマキリ!

ヨウカイカマキリ科て(笑)って思った。

悪魔的なビジュアルから、悪魔の名前で命名されていたのを憶えている。

アイツの名前は、たしか……


「エンプーサ」


サクラの呟きに ギクリ、ジャスミンの動きが止まった。


「え?何?呪文?」


サクラの発した不思議な発音の言葉にジャスミンが止まったのを見て アリスが聞き返す。


「ジャスミンの正体は∈∞♭Ο$Å(エンプーサ)よ」


「???」


もう一度名を言うが、アリスもジャックもハテナ顔。


「その言葉はこの世界では発音できない。他の者にはわからないわ」


ジャスミンが忌々しげにサクラに伝えた。

どうやらジャスミンの名前は サクラ以外にはわからないようだ。


「何故その名を知っている?何者だ、お前は」


「……教えない」


ふう、と ジャスミンが改まってサクラに対峙する。


「まあいい、知っていたところで問題ないし。()()()を得ただけだもの」


そうなんだ。

支配できるわけじゃないんだ。

でもこれで一方的にやられることはなくなった。


「交渉、する?」


(交渉かぁ……)


はっきり言って不得意だ。

接客すら苦手意識があるのに、売り込み営業で相手を負かすなんてもってのほか。

人の腹の中なんて探れないよ。


しかも、悪魔との交渉なんて!

言葉、特に日本語は難しい。

『いいです』のひとつとっても、『OK』『NO』の どちらともとれる。


悪魔は嘘をつけないが、その分言葉の取り方、使い方を熟知している。

絶対、負ける自信がある!


サクラが悩んでいると、ジャスミンがクスリと嗤った。


「交渉は初めてのようね」


(うっ、早速バレてる)


ほらね、むりむりむり!交渉なんて絶対に無理!ポーカーフェイスは苦手なんだよぅ、すぐに顔に出ちゃうから。


初めてなのがバレてるからこの際開き直って聞いてやる。


「交渉のルールは?」


「ふふふ、お互い望みを叶え合うのよ?素敵でしょ?」


うわあ、あれだ!望みを叶えてもらったら、変わりに魂抜かれちゃうとか!?

異世界で魂抜かれたら現世ではどうなるんだ?

神が何とかしてくれるのかな?

今度神に会ったら聞いとこう、今度があればだけどね。


「交渉しないって言ったら」


「交渉決裂、即好きにさせてもらうわ」


どっちにしても後がない。


「サクラは自分を犠牲にしてまで この幻の国を助けたいのかしら、見ものね」


ふふふ、と ジャスミンが嗤った。


(交渉以外に何か方法はないかな……あっ!)


サクラはエンプーサについて 更に思い出した。

エンプーサには弱点がある。

それは、なんと、『悪口』


(さっきも『おたんこなす』でフリーズしてた。『干しイモ野郎』でも怯んでたから、試す価値はありそうだ)


今考えれば、そのおかげで満月のコンパクトを使えたのだろう。


サクラは悪口を言おうと ジャスミンに向かい――


「お――……」


「?」


(『オマエの母ちゃんデベソ』とか……ジャスミンに『母ちゃん』がいるのかな)


さっきは勢いに任せてつらつらと暴言も吐けたけど、いざ悪口をと思うと言葉がでない。


「ちょっと、皆で相談して良いデスカ?」


「まあ、いいわよ」


サクラが悪魔交渉初めてとみて、ジャスミンは余裕の態度を示し、サクラの要求を受け入れた。

チョロく見られるのはいつものこと。軽くみてくれてありがとう。


「でも交渉はサクラとしか出来ないわよ?」


「わかった」


サクラはジャスミンの了解を得て アリスとジャックと 三人で円陣を組んだ。


(アリス、悪口って、言える?)

(……苦手)


だよね。


(ジャックは?)

(僕も……)


二人とも見るからに純朴そうだもんね。

う~ん、困ったな。


サクラが困った顔をすると、ジャックがこてんと首をかしげた。

こんなときだけど可愛い。癒される。


(悪口が必要ですか?)

(うん。ジャスミンの弱点は悪口なの)

(じゃあ、喚びます?)

(誰を?)

(ワンダーランドで一番悪口が上手い人を)

(喚べるの!?)

(はい)


ジャックが手に持つ本をサクラに見せた。


(召喚師です。僕)


ナイス!ジャック!


(誰が口が悪いか特定できないので、呪文の詠唱に少し時間がかかりますが……)

(わかった。私が時間かせぐよ。アリスはジャックをジャスミンから見えないよう隠して。お願いできる?)

(わかったわ)

(悪魔は人の感情が味でわかるの。なるべく暗い気持ちのまま、お願いね)


相談が終わり、うん、とうなずき合う三人。


アリスがウェディングドレスを広げ、カーテンのようにジャックを隠し、ジャックが本を開く。

用意ができたところで、サクラはジャスミンに向き直った。


「交渉の前に、いいかな」


「なぁに?」


サクラは緑色のマーブルクッキーを取り出す。


「ふふっ、最後の晩餐ね、良いわよ、お食べなさい」


「ありがとう」


サクラは緑色のマーブルクッキーを口にし、半分に噛み折った。


″サクッ″


「!!?」


ジャスミンの顔色が変わった。


「何なの?これは、、」


サクラの味覚を通してジャスミンにもその味が流れ込んでゆく。


「どうして()がするの!?」


ジャスミン、クッキー発体験。


さっくりとした噛み心地と共に、噛んだ瞬間から、バターと小麦粉の風味にのせて抹茶ミルクの香りが漂う。


「なんて深い味わい///」


美味しいでしょ!ディオのクッキー。


口のなかにこなこなしいクッキーの舌触り。

モソモソするから嫌いと言う人もいるが、噛んで増えたクッキーは、そのサクホロの一つ一つの小さな粒は、抹茶の苦味をミルクがまろやかに包み、それが口のなかを占領し、鼻へとぬけて香る。

甘いのに後味にスッキリした清涼感がある。


「これが、食べ物の味……」


初めての感覚に、ジャスミンが夢中になってサクラの味覚を一緒に味わう。


「クッキーは 初めてのようね」


さっきの″交渉は初めてのようね″の ジャスミンの言葉のお返しだ。

私をチョロくみたことを後悔しても遅いですよ~。

ディオのクッキーの虜になれ!ジャスミン!


ごくり、飲み込むと、サクラは子供になった。


ディオの緑のクッキーは、半分で子供サイズ、一個で幼児サイズになる。


ディオのクッキー、開発中だからかムラがあるな。

今度は子供サイズじゃなく、子供になっちゃったよ。


しかし、今、大事なのはそこじゃない。

ディオのクッキーの美味しさが必要なのだ。


″ぽいっ、サクッ″


サクラは残りの半欠けを口にいれる。

サクラの見た目が変わったのも気にならない程に、ジャスミンは抹茶クッキーを貪った。

サクラの味覚を求めた。


「これにコーヒーがあれば完璧なのに」


「コーヒー……」




―――― 一体どんな風に完璧なの?

これ以上があると言うの!?


ああ、サクラが欲しい。

このワンダーランドなんか目じゃない。

サクラがいれば、人の世の食べ物が全て味わえる。

サクラがいれば 他はいらない

サクラが 欲しい――



うっとりと、ジャスミンがサクラに手を伸ばし、その頬を包み込む。

柔らかな ほっぺ。

口のはしにクッキーの粉。

ジャスミンは サクラの口のはしに唇を寄せていく。


ごくり、サクラがクッキーを飲み込んだその時、、


″パアァッ″


サクラが一回り小さくなり、ジャスミンの手から するりとぬけた。

同時にアリスの後ろで青白い聖なる光が溢れる。


「この光は、、召喚!?」


アリスの後ろで ジャックが本を開いていて、光はそこから溢れてた。


「謀ったな!?」


ジャスミンが、気づいた時には、召喚が成功しており、光の中に 人影が現れた。


光がおさまり、姿がさらされる。


その人物は、均整の取れたしなやかな肉体を持つ、ブルーの髪が美しいイケメン――


(ラン様!!?)


そして、その隣には時計ウサギのチコ。


(えっと、、)


口が悪いのはどっちですか?





挿絵(By みてみん)





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