454. ѕαкυяα ιи ωσи∂єяℓαи∂ 17 (職業:イケメン) ★
挿絵挿入(2021/7/30)
イメージ壊したくない方は画像オフ機能をご利用くださいm(_ _)m
(ランの髪が黒じゃ、ない!ネコ耳が、ない!?)
満月のコンパクトは真の姿を写し出す。
鏡に写ったランの姿は黒猫のそれではなく、呪いの解けた元の姿。
「やはり、わたくしの目に狂いはなかったわね」
イケメンハンター卵肌婦人は 人の姿に戻ったランにご満悦。
「わたくしの手に口づけることを許しましてよ?」
卵肌婦人が ほっそりと長い手をこちらに差し向けてきた。
ランはサクラから離れると、卵肌婦人の前に歩みより、美しい姿勢で片膝をつき、その手をとり、極上の笑みを浮かべた。
「光栄です、卵肌婦人」
袖無し普段着黒シャツ一枚なのに 燕尾服をきた若いツバメたちより断然かっこいい。
ランは卵肌婦人手の甲に唇を寄せ、敬愛を示す。
(うおっ、絵になる!)
卵とイケメン。
珍妙なとりあわせなのに絵画のような光景。
そこはまるで別世界。
花、背負ってますね!お二人とも。
ハーレクイン、愛の激情!!
サクラは 紳士的なランの振るまいに 何が起こっているのか、あっけにとられて目をぱちくりさせるばかり。
ランは口づけを終えても婦人の手を握ったままに、婦人を見上げて その手を親指で慈しむように撫でた。
「///」
卵肌婦人が頬を染めるのを見たランは、立ち上がると、くっと軽く手に力を入れた。
「あっ///」
小さな悲鳴をあげて、よよよ、と 婦人がランにもたれかける。
ぶわっ、と 花びらが舞う(←イメージ)
ランは胸に倒れかかってきた婦人の耳元に顔を寄せ、くすぐるように甘い声を出した。
「役に立つ武器が欲しいんだけどなぁ……」
まさかのおねだり!?
(びっくりした、今度はランが何かの術にかかったのかと思ったよ)
術中にはまったのは卵肌婦人の方だった。
卵肌婦人はすっかりランの虜のようだ。
サスガ!生まれながらにして 職業:イケメン!
てか、卵の耳がどこにあるかよくわかりましたね、ラン様。
ランの唇が 婦人の肌に触れそうで 触れない、絶妙な距離を保つ。
ランの息が婦人にかかり、婦人がふるふるっ、と 身震いした。
プルプル白身が揺れて、大変美味しそうです。
ランのおねだりに卵肌婦人がイケメンツバメに目配せをすると、御意とばかりに二人の燕尾服姿のとりまきが 剣をもって現れた。
婦人は右の剣を指差す。
「お前が欲しいのは この金の宝剣か?」
黄金色に輝く大剣は赤い大粒ルビーがはめ込まれ、細やかな彫刻に星屑のようにダイヤがちりばめられている。
見るからに高そう。
が、ランは違う と首を横にふる。
「では、こちらの銀の宝剣か?」
銀色に輝く細身の剣は 青いサファイアがはめこまれ、すっきりとしたフォルムに 海の光を放つ真珠の飾りがふんだんに使われており、蒼の王子 ラン様に良く似合う。
それも、ノー。
ランは金の剣も、銀の剣もいらないと言う。
「宝剣じゃなくて、実用的な、魔剣とか、封剣とかのいいんだけど、ダメ?」
首をかしげて可愛くおねだり。
上目使いで もっといいのが欲しいと言う。
正直者ではなく強欲者がここにいます。
「仕方ないわねぇ///」
ああ、卵肌婦人がランの手のひらの上でコロコロと転がされている……
三人目のとりまきツバメがレイピアを持って現れ、恭しく献上する。
「正義の剣″ダルタニアン″よ この剣は意思を持つ剣で、正義を貫くためなら何者をも切り裂いてくれる伝説の剣――」
おっと、ダルタニアンは剣でしたか!
しかもなにやら大層なものらしい。
しかし、ランはこれにも首を横にふる。
「正義なんてクソくらえだ。勝ちゃいいんだよ」
ランの低く荒い言葉にゾクゾクっと婦人が身を震わせ、恍惚の表情を浮かべた。
クリーンヒット!クリティカルヒット!!卵肌婦人のドストライク!?
卵肌婦人は 紳士でもなく、可愛いショタでもなく、悪い男がお好みでしたか!!
オレ様、ラン様、唯我独尊!
ここでランがたたみかける。
「あんたはタブーの『満月のコンパクト』を持ってたんだ、他にもあんだろ?″J″に抵抗出来るブツがよ」
出せよ、と ランが卵肌婦人に迫る。
「いえ、いいえ……」
「隠してんのはわかってんだぜ?」
ランがグイグイ婦人に迫り、婦人は後ろの椅子にぽふんと倒れるように座った。
ランは婦人越しに椅子の背もたれに手をついて壁ドンならぬ椅子ドンで、のし掛かるように婦人に迫る。
婦人の身を案じたとりまき達がレイピアを抜こうとするのを 婦人が手で制した。
ランはそのまま婦人の腰に手まわす。
「あっ///」
卵の胴回りは大きいんですよ。
ランはぎゅうっと婦人を抱きしめる形になった。
「もっと///もっと強く抱いて、、」
いやいや、それ以上力入れたら貴女は卵サラダになってしまいますよ!?
「貴方になら壊されてもいい///」
ダメですよ!ハンプティは壊れたら 王様の馬や家来でも元に戻せないんですから!!
ランは腰から手を離し、婦人のドレスの裾をたくしあげた。
優しく、撫でるように――
「あっ///そこは、、」
ニヤリ、ランが嗤う。
「ココだったか」
″スルリ″
ランは婦人のドレスの下、婦人の腿のガーターベルトから 剣を抜き取ると、婦人から離れた。
どうやらランは 婦人が剣を所持しているのをわかっていて、身体検査をしていたようだ。
なんてアダルティな検査しやがるんだ、まったく。
婦人は居ずまいを直し、椅子に座り直すと、こほん、と咳払いを一つ。
こちらも慣れていらっしゃる。
おそろしや、貴族社会。
「魔戻りの短剣よ。護身用の剣だけど」
「魔戻り……魔法攻撃を反ねかえすんだな」
「ええ。″J″の繰り出す魔法を切り裂くことが出来るわ」
へぇ、、と、ランが口のはしをあげて嗤った。
悪い顔、してますね。
「これでいいや」
ゾッとするほど美しく悪い顔をするラン。
婦人はその顔をうっとりと眺めながら 魔戻りの剣の鞘をランに差し出した。
「式場に行くのよね?ツバメに送らせるわ」
「サンキュー、卵肌婦人。世話になったな。事が終わったら、きっちり喰ってやるからよ」
「お待ちしてます///どうかご無事で」
剣を鞘に戻し、腰に差すランの姿に見惚れながら 卵肌婦人が見送ってくれた。
「サクラ、お前は先に式場に行ってイシルの記憶を戻せよ」
「はい」
「……」
「……」
「オレは時計ウサギを取っ捕まえてから合流すっから」
「わかりました」
「……」
「……」
「サクラ……」
「はい」
「……てめぇ、、なんでまた敬語に戻ってんだよっ!!!」
「ひいいぃっ」
ずざっ、と サクラが後ろに下がる。
「髪が青くなっただけだろうが!」
「いや、なんだかおそれおおいですよ!オーラが、、眩しいんです!!」
サクラがしぱしぱ 目をしばたかせる。
キラキラ、眩しすぎて直視できないよ、ラン様。
最早別人です!
少し離れて遠くから眺めていたいタイプです。
ブラウン管越しくらいに(←古)
「お前、見た目に惑わされすぎだろ!!」
「うわーん!来ないでぇ!」
やっと人の姿に戻ったのに、サクラとの心の距離がまた開いてしまったラン様でした。




