442. ѕαкυяα ιи ωσи∂єяℓαи∂ 5 (眠りネズミ) ★
挿絵挿入(2021/7/11)
イメージ壊したくない方は画像オフ機能をご利用くださいm(_ _)m
サクラは緑のマーブルクッキーを食べてネズミサイズになると、荷馬車を追うために ランの背に乗り しっかりと掴まった。
「にゃんっ!(飛ばすぞ!)」
ランがぐんっ、とスピードをあげて、荷馬車へと走る。
馬にも負けない脚力で。
次の瞬間――
″スルッ″
(えっ?)
掴んでいたランのふわ毛がするんと抜け、サクラの体が浮く。
(抜け毛――!?)
春は猫ちゃん抜け毛の季節ですね!
夏毛に変わる準備です。
ラン、しばらく猫になってなかったから ブラッシングしてない!!
「ふわあ!」
慌てて掴み直そうとしたが、届かずに、サクラはそのまま後ろに転げ落ちた。
すってん、ころりん。
カエル王子様衣装のマントのおかげで擦りむきはせず、かぼちゃパンツがクッションになり、怪我はしなかった。
見た目に似合わず王子コス優秀!!
「ラン、まって!」
だけど掛け声むなしく、ランは気づかずに荷馬車を追って走って行く。
「ラン――!!」
″ガシッ″
(ん?)
サクラはランを追いかける間もなくがっしり肩を掴まれ、次の瞬間、フワッと体が中に浮いた。
「うわっ!」
(今度は何事!?)
「こんなところに王子が落ちているとは」
「これは、女王蜂様に献上せねば」
(蜂!?)
プーンと甲高い羽音をさせながら 手足の長い蜂がサクラの肩を掴んで飛んでいた。
「しかし、重い王子だな」
「羽があるのに飛べんのか?一枚羽なんて珍しい」
「私、蜂じゃないし王子でもないよ、離して!」
体よ、早く元の大きさに戻っておくれ
そこへ今度は黄金虫が飛んできて、王子を寄越せと蜂にいちゃもんをつける。
「その王子、一枚羽だが、赤く艶やかな美しい羽をしている」
「そのずんぐりむっくり体型は蜂ではなく黄金虫だ!返せ!」
いやいや、黄金虫ではありませんっ!
おっしゃる通り、体系的には蜂より黄金虫寄りですがね。
そしてこれは、赤いビロードで美しいですが、羽じゃなくマントですよ。
「その王子をこっちに寄越せ!」
「玉姫様に献上するのだ」
サクラを巡って空中バトル勃発。
ブーン、ブーンと飛び回りながらサクラを奪い合う。
サクラはバスケのボール宜しくあっちにパス、こっちにパス。
イケメンに取り合いされるならまだしも、虫は勘弁してくださいな。
(目が回るぅ~)
「ややっ、こやつ、よく見ると手が四本しかないではないか」
「本当だ。おかしなやつだな、こんなの連れて帰ったら女王蜂様にしかられてしまうわ」
「玉姫様に首をはねられる!」
今度はやいのやいのとサクラの押しつけ合い。
挙げ句の果てにサクラはぽいっ、と放り出された。
「うひゃ~っ!」
幸い、落ちる途中で元の大きさに戻ったから、難なく地上まで到達したのだが――
「ここ、何処よ」
全くわからぬ森の中。
サクラは放り出された森の中で途方にくれる。
(はじめも、こんなだったな)
神(医者)に飛ばされた異世界で、着の身着のまま、飲み水さえ持たずに放り出された。
イシルに出合った時もこんな状況だった。
「イシルさん……」
初めて会った時の事を思い出す。
″サクラさん″
涼やかで、優しい声を思い出す。
「声が、聞きたいなぁ……」
″サクラさん″
柔らかく笑う笑顔、澄んだ眼差しを思い出す。
「会いたいなぁ……」
やべ、目元がじんわりしてきた。
立ち止まっては駄目だ!誰も助けは来ないのだ。
(とりあえず、歩けば村に着くはずだ。うまくすれば森のアリスの家につけるかも)
自らを奮い立たせ、立ち上がったところでガサガサと草むらが揺れた。
(ひいぃぃっ!熊か!?虎か!?猪か!?サーベルタイガーか!!?どれにしろ死ぬ!死ぬー!!)←来た時から成長なし。
「どうかしましたか?」
人の声……
「イシルさん!?」
誰もいない。
遂に幻聴が!?
「こんなところでお困りでしょう、よかったらうちに来ない?」
足元で声がして、サクラは視線を下げる。
草むらから出てきたのは小さなネズミだった。
えーっと、カエル、蜂、黄金虫、ネズミって、あれですか?親指姫ですか?
私もう親指サイズじゃないですが、次はもぐらの嫁にされるんですかね?
「オイラは、この先の『三日月亭』てところに間借りしてる 眠りネズミのレムです」
よかった、地中じゃないらしい。
ネズミのレムさんは 森に木の実を取りに来ていたらしく、背中にカゴを背負い、手には袋を持っていた。
しかし、カゴも袋も空っぽだ。
「木の実は集めなくていいんですか?」
「ん~、朝から集めに来てたんだけど、寝ちゃってね。いつもの事だよ」
それは仕事じゃなく昼寝に来てるって事でよろしいですか?
「怒られないんですか?」
「怒られるよ~」
「……何か採りましょうよ」
一緒に怒られるのはゴメンです。
ここでお手伝いだけして、さっさとアリスの家の場所を聞いてお別れしよう。
「ん~、じゃあ、木苺摘んでくれる?」
サクラは眠りネズミのレムさんから袋をもらうと、木苺を摘んで入れていく。
眠りネズミのレムさんは、木苺を摘んでいる間もウトウト、船を漕ぐ。
「レムさん、アリスさんの家って、この辺りにあるんですか?」
「(。-ω-)zzz」
「レムさん、寝ないで~結構急いでるんです、私」
サクラは袋が一杯になり、眠りこけるレムさんの背中のガゴにポイポイっと木苺を入れる。
えーっと、ガゴに10個も入れるといっぱいなんですけど、いいんですかね?
食材採取はもっと適した人が来るべきではないんですかね?
「んー、、あんた、アリスの結婚式に行くのかい?」
「ええ、だけど 仲間とはぐれてしまって」
「(´ω` )zzZ」
「レムさ――ん!!」
「んぁ?ああ、それなら三月うさぎがいいもの持ってるよ、人を探せる魔法の杖さ」
結局サクラは 三日月亭の主人、三月うさぎに会いに行くことにした。
◇◆◇◆◇
一方、こちらはサクラを落っことしたラン。
サクラを探して来た道を戻る。
(おかしいな、ここでサクラの匂いが消えている)
それは、サクラが蜂にさらわれた場所だった。
ランはスンスンと鼻を効かせる。
サクラの匂いと一緒に漂う、あの、独特の香草の匂い。
捨てろって言ったのに(←伝わっていない)クッキーと一緒にポッケに入れていたパクチーの匂い。
サクラの匂いは消えても、あの匂いが鼻につく。
(こっちだな)
ランはパクチーの匂いを頼りに サクラの後を追った。
(くそっ、猫じゃなかったら……)
話が通じた。
はぐれなかった。
サクラを守れた。
ランはサクラを想い、スピードをあげる。
パクチーの匂いが強くなるほうへ。
(こっちだ)
そして、遂に――
(サクラ――)
……パクチー畑へと到着した。
(じゃねぇ!!)
「う″に″ゃ――――――っ!!」
ラン、迷走中(ФωФ)




