441. ѕαкυяα ιи ωσи∂єяℓαи∂ 4 (カエル紳士) ★
挿絵挿入(2021/7/10)
イメージ壊したくない方は画像オフ機能をご利用くださいm(_ _)m
兎穴から無事に脱出したサクラとラン。
「……なんか、ヨダレでベタベタなんだけど」
「シャーッ!!(贅沢言うな!!)」
ランにキレられた。
時計ウサギのチコとスローロリスのロリスは この世界にも村人がいると言っていた。
サクラはしばらくランの背に乗って アリスの居場所を聞くために村を探して走る。
ハーフリングの村からも兎穴は遠くなかったから、多分近くに村がある筈だ。
5分程走ったところでサクラの体が元の大きさに戻ったので、ランから降りて(←乗れないから)ランの後を走って追った。
すると、馬車道の真ん中に 黒い物体がうずくまっているのが見えた。
サクラとランは足を止める。
「どうかしましたか?大丈夫ですか?」
うずくまっていたのは 身成りのいい、立派な髭をはやしたカエルの獣人だった。
どれくらい立派かと言うと、メガネ髭の髭ねように立派だった。
「ミ、、ミズ……」
「水、ですか?」
「ミ、、ミ、ズを……」
これは困った。
水なのか、それとも名前を出すのも嫌なあの軟体の長い虫なのか(←カエルは食べるから)
喉が渇いて干からびているのか、腹が減って動けないのかわからない。
お食事ですか?飲料ですか?どっちですか?
(とりあえず、水で腹を膨らませてもらい、お食事は自分でゲットしてもらおう)
アレ触れないし、近寄れないし。
「ラン、水場が近くにないかな?」
ランはピンっと耳を立てると、水の音を聞き取って、″にゃん″と鳴いて先に走り、サクラを誘導する。
「よっ、こい、しょっ、、」
サクラは自分より少し小さなカエルに肩を貸すと、ふらふらと抱えながらランについて水場へと向かった。
幸いにも すぐ近くに川があり、サクラはカエルを川の近くに下ろす。
カエルは頭を川の中に突っ込み、ごくごくと水をのむ。
元気になったところで服を脱ぎ、川へと飛び込んだ。
サクラはカエル紳士が帰ってくるのを水辺で待つことにする。
村を探さなくても カエル紳士がアリスの家を知っているかもしれない。
服を脱いだと言うことは帰ってくるだろうから。
(しかし、お腹減ったな~、、あれ?このニオイ……)
サクラはスンスン、と ニオイをかぐと、誘われるようにニオイの元の場所に向かった。
「やっぱり!」
強い香りの香草、パクチーだ。
(パクチーサラダ食べ放題!)
ここに醤油と胡麻油があれば無限に食べられるのに残念だ。
サクラはパクチーを摘んで 川でザブザブ洗ってそのまま食べる。
″もぐっ、もぐっ、″
野生のパクチーは香りが強いね!
(生春巻、食べたい、、餃子にまみれさせて食べたい、、お蕎麦に入れても美味しいのに……)
脳内で料理を思い出しながらパクチーを食む。
ふいっ、と、横を見ると、、
ランが離れたところで、口や目を半開きにして、唇を引き上げ、変な顔をしていた。
猫のフレーメン反応、臭いのだ。
(これまたぶちゃ可愛い///)
「ラン、食べる?」
うり、と サクラがランに近寄り、ランが変顔のまま身を引いた。
「ほら、いい匂いだよ」
うりうり、と、サクラがちょっとイジワルそうな笑顔でランに詰め寄る。
ランは耳を後ろに引き毛を逆立てると――
″ペペペペペペ″
ランの連続猫パンチ炸裂!!
にゃん可愛い!!!
「いや~、助かったよ、干からびて死んでしまうかと思ったケロ」
わかりやすく語尾にケロケロありがとう。
カエル紳士のケロッグさんは、水から上がるときっちり着替えてサクラに礼を言った。
「仕立て屋に結婚式のための礼服を取りに行く途中でロバから落ちてしまってね、動けずにいたら日にさらされてもっと動けなくなってしまったケロよ」
おまぬけですね、ケロッグさん。
「結婚式!アリスさんのですか?」
「ああ、そうだ。君達も行くのケロ?」
「はいっ!」
サクラは即答する。
招待されたわけじゃないが、目的地はそこだ。
アリスの結婚相手はイシルさんなんだもん。
ケロッグさんについていけば、イシルさんに会える!
しかし、サクラの返事にケロッグは訝しげな顔をした。
「あの、、何か――」
「君は、その格好で行くのケロ?」
「へ?」
「その、ベタベタに汚れた服のまま結婚式に行くのかと聞いているケロよ」
「あー……」
そこですか。
「よし、助けてもらった礼に 私が服をプレゼントしてやろうケロ」
「ありがとうございます」
サクラとランはケロッグと一緒に村の仕立て屋さんへと向かった。
「アリスさんの家も村にあるんですか?」
「アリスの家は森の中にあるケロ」
「村の近くですか?」
「いや、村から少し大回りに……」
ケロッグが また訝しげな顔でサクラを見る。
「君は、本当にアリスの結婚式に呼ばれたのかね?招待状を見せるケロ」
ヤバイ、怪しまれている。
「招待状は、、荷物を落としてしまって、礼服も招待状も全て失くしてしまったんですよ、ははは~」
「そうか、それは、お困りケロな」
えっ!信じた。
「よし、私がなんとかしよう」
ケロッグさんありがとう!
カエルには恩を売っとくもんですね!
近くの村は″すずらん村″という村で、人の背丈ほどもあるすずらんが爽やかな香りを放ちながら 風に揺れていた。
なんとも美しく、のどかな村だ。
仕立て屋に入ると、サクラは早速着替えさせられた。
ケロッグさんは 仕立て屋の主人と二人で話しながら、テラスで優雅にお茶を飲んでいる。
サクラは着替をすませると、恥ずかしそうに出てきた。
「これは、、見事にお似合いですねぇ~花のよう!星のようにお美しい!」
仕立て屋があからさまに持ち上げてサクラを褒め称える。
「うん、いいケロ」
ケロッグさんも満足そうだが、サクラは恥ずかしくてしかたがない。
(なんで、、何でかぼちゃパンツなの!?)
かぼちゃパンツに白タイツ。
絵に描いたようなおとぎ話の王子様ルック。
ご丁寧にマントまでありがとう。
「あの、、本当にこれを?」
「うむ、これは我がケロッグ家の盛装ケロ。これを着ていればどこへ行っても顔パスケロよ」
招待状を失くしたサクラのためにケロッグさんが考慮してくれたカエル王子の装い。
「サクラどのは恩人であるからな、遠慮はいらんケロよ」
「……ありがとうございます」
ランが足元で肩を震わせている。
これは、言葉が通じなくてもわかる。
笑いを堪えているんだ。くそっ、、
「ささ、サクラ殿もお茶をどうぞ」
仕立て屋がサクラにもお茶を進めてくれた。
ふわん、と香るアップルティー。
(ん?アップル?)
出されているのはアップルティーに、アップルパイ。
これはもしや、スローロリスの果樹園の『忘却の実』なんじゃ……
香りはアップル。
見た目にもサクサクの生地に、ふわんとシナモンが香る焼きリンゴの層が折り重なっている。
しっとりカスタードの黄色が美しいですね~
しかし、ガマン!
食べてイシルさんの事を忘れちゃったら困る。
糖質制限ダイエッターの力を見せるのだ!
ああ、食べたい……
「あの、まだ結婚式には行かないんですか?ケロッグさん」
「ああ。まだこれから床屋に行ってだな、帽子屋、靴屋、エステと、磨き上げねばならんケロよ」
床屋で髭の手入れを?
しかもエステ?
これは時間がかかりそうだ。
帽子やには会いたい気もするけど(←きっとイケメン)そんな時間はないっ!
どうしようか、場所だけ聞いて先に行こうかと悩んでいると 仕立て屋の使用人の小僧さんが 服を手にやって来た。
「旦那様、こちらのお洋服ですが――」
小僧さんが持ってきたのは、白のタキシードだ。
スッキリしたフォルムにさりげなく品のいい装飾、光沢のあるタイ。
「ケロッグさんが着るんですか?」
「まさか、白は花婿と決まっているケロ」
花婿!イシルさんがこれを!?
見たい!!
「これでようやくアリスも幸せになれる。私は傷は治せても心は治せないケロなぁ……」
「なにをおっしゃいますか、外科医の先生様が」
気落するケロッグさんを仕立て屋の主人が持ち上げた。
みんな、アリスのこと好きなんだね……
「じゃあ、花婿に届けてくれ」
「畏まりました」
花婿に届ける?あの小僧さんに着いていけば、結婚式前にイシルさんに会えるんだ。
アリスには同情するけど、イシルさんは渡せない。
「ケロッグさん、ありがとうございました!ご機嫌よう!サヨウナラ」
「ああ、また結婚式で会おうケロ」
出来れば結婚式前にイシルさんを連れて脱出したいですよ!
小僧さんを追って サクラとランが表に出た時には、小僧さんは荷馬車にスーツを積んで馬を走らせていた。
「あそこだ、ラン!」
「にゃっ!」
サクラは緑のクッキーをポイポイポイっと口に入れると、ネズミの大きさになり、ランの背にまたがった。
「にゃっ!(しっかり捕まってろ!)」
「うんっ」
こういう時の心は一つ。
サクラはランのふわ毛をしっかりと掴む。
それを確認すると、ランは馬車へと走り出した。
魔法は使えなくても身体能力はそのままだ。
「にゃんっ!(飛ばすぞ!)」
ランはぐんっ、とスピードをあげて、馬車へと走る。
馬にも負けない脚力で。
(もう、少しっ、、)
そして、荷馬車のすぐ後ろまで来ると――
″ひゅっ、、″
素早く荷馬車へ飛び乗った。
(やったぜ、サクラ!)
ランは背中のサクラにどうだとドヤ顔をしてみせる。
(あれ?サクラ?)
返事がない。
(サクラ?)
そろそろ元の大きさに戻ってもいい頃なのに――
「ニャニャニャニャニャ!?」
落とした――――!!?




