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437. 暗中模索 ◎

料理じゃないイメージ写真挿入(2021/7/4)




オズが連れてきた治療師は、気付け薬として緑色のドロッとした薬を置いていっただけで、結局なにも手を施すことが出来なかった。


宿に強制送還されたサクラは イシルの眠るベッドの脇で凄まじい顔をしている。


「心配したりむくれたり、イライラしたり忙しいな」


ランの言葉にサクラはシカトを決め込む。

今口を開いたら確実にキタナイ言葉を口にしてしまうから。

ランに八つ当たりしてしまうから。


ランはサクラのためを思ってやったことだし、今はケンカをしている時間はない。

ここから出てジャスミンに会いに行かなくては……


「抜け出したらイシルを連れて消えるからな」


「うぎ、、イシルさんを人質にとるなんて卑怯な、、」


サクラの本気でムカついてるレア顔。

しかしランも引くわけにはいかない。

サクラはジャスミンに自らを差し出し、イシルとランに手を出せないよう取引するつもいでいるのだから。


「何とでも言え。恨み言をいう暇があったら別の方法を考えろ」


別の方法、、

このウサギの中からイシルを救いだす方法――


「ランは どういうことだか、わかったの?」


サクラが怒りを抑えた苦々しい声でランに質問する。


「コイツは生き人形だ。コイツの中に宿る何者かがイシルを掴んで離さないでいる。だからイシルは出てこれない」


「生き人形、、生きてるってこと?クマの人形のアールみたいに?」


「アイツは、アールは付喪神だな。ツクモガミは大切にされたモノから生まれた者だが、生き人形は人の魂が入った者だ」


「人、、レイスってこと?」


「レイス、あるいはゴースト」


レイスは生きている人の魂、生き霊で、ゴーストは死んでしまった人、すなわち幽霊。


イシルは今はレイスの状態で捕らわれている。

だけど、このまま、49日がたってしまったら――


「イシルさんは私を庇って捕まったんでしょう」


「厳密には違う。あの場にいた全員を庇って、だ。呪いの発動は俺も感じたし、回りにいた奴らも感じていた。そして、イシルが対抗出来なかったって事は、あの中にいるのは多分複数。イシルみたいに捕らわれているのかもしれないし、自ら悪さをしているのかまではわからないけどな」


「どうしよう……」


()()()は信用ならないからダメだが、アスに頼んで別の夢魔を……」


サクラはランの言葉に首を横にふる。


「アスは今、ご当地キャラの生産のために別の街を行き来していて、ラ・マリエにはいないの」


「チッ、使えねーな、、ヨーコなら何か――」


「ヨーコ様はアスに付いていって観光に……」


「もしかして、古竜もか?」


こくり、サクラが頷く。


「何やってんだあの三老は、平和ボケしすぎだろう」


詰んだ、と、ランがどかりとベッドサイドに腰かけた。


サクラはイシルの枕元のウサギのぬいぐるみを見つめる。

白いウサギのぬいぐるみはくったりとして、今はただのぬいぐるみのようにみえる。


「呪いって、あの耳鳴り?ウサギのぬいぐるみは急に現れたみたいだけど、どうやって発動したの?」


原理がわかればサクラは銀色の魔法が使えるかもしれないと思い、ランに質問した。


「条件が揃ってたんだよ」


「どんな」


「今日は、フルムーン、満月だ。魔の力が最大になる」


そうだ、サクラの従魔になる前のランは 新月の時は子猫にしかなれず、満月に近づくにつれ獣人、人化とパワーアップしていた。

月が侵されるブラックムーンの時は苦しそうだった。


「そして、魔が動き出し、人を惑わす時刻、黄昏、逢魔が時。さらに、場所。辻は異なる道が交差する場所だ。それが 人の世と 人ならざる世の道の交わりを(かたち)どり、そこに門ができる。天然の魔方陣のような空間が作られたんだ」


「なるほど」


サクラはふむ、と考える。


「つまり、特別な日、特別な時間に、空間と空間を繋ぐ通り道ができれば そこに行けるってことね」


「なんだよ、サクラ、何かわかったのかよ」


「多分、、でも、うまく行くかはやってみないとわからない、ちょっと、行ってくる」


「行くって何処に?まさか夢魔に――」


「ジャスミンさんには会わないよ」


「オレも行く」


「駄目だよ、イシルさんを一人には出来ないじゃない」


「サクラ一人じゃ夢魔をふりきれないだろ」


「う~ん、どうしよう」


″ガチャリ″


サクラとイシルが悩んでいると ドアが開き、オズが入ってきた。


「治療師のセンセ送ってきたで~」


″ガシッ″


オズは部屋に入ったとたん、サクラとランに肩を捕まれる。


「へ?」


「イシルさんの事」

「頼んだぞ」

「「オズ」」


サクラとランは、それだけ言うと、オズを通り越してドアを出ていった。


「ちょ、どこ行くんや、二人とも!?危ないことしぃなや!?わて、イシルの旦さん起きた時、怒られるの嫌やでぇ!!ちょ、待ってーな!!」





サクラとランがやってきたのは 昼間に来たハーフリング村の中央広場だ。


ここは大きくて持ち運びが困難な商品がが集まっていて、昼間と同じく商品がズラリと並べられたまま、見張りの雇われ冒険者が巡回している。


(ラン、昼間見た三面鏡って いくらだったか見た?)


(いや、見てないけど、台座が天然の大理石だったし、結構すると思うぞ)


(買えない、よね)


(……何に使うんだよ)


(えーと、、三面鏡の13番目の自分が映ってる所 は違う世界に繋がってるって、イシルさん言ってたでしょ?私のいた現世にも似たような都市伝説があってね、、)


(都市伝説?)


(言い伝え。夜中の0時に合わせ鏡をすると、霊の通り道が開く。だから三面鏡は、使わないときは常に閉じておくか、布を掛けておけって)


迷信だけど。


(道が繋がっていれば、私の銀色の魔法で入れるかもしれない。やってみる価値はあるかなって)


(なるほど。じゃあ買わなくてもいいんじゃね?)


(見張りの人に話す?)


(いいや、0時までまだ時間があるしな)


ランはニヤリと悪巧みの顔をして、亜空間BOXから酒を取り出すと、見張りの冒険者達の元へと歩み寄っていった。





見張りの冒険者達が ランの差し入れの酒でいい感じにほろ酔いになった頃、ランはサクラを招き、例の鏡の前にやってきた。


「ラン、見張っててね」


「おう」


サクラが鏡の前に立つ。

満月の明るい光が 鏡の中にサクラを写し出した。


(お(イシル)様の光が、きっと導いてくれる)


サクラは全身に銀色の魔法の光を纏わせてゆく。


「鏡よ鏡よ鏡さん、この世で一番美しいイシルさんを写して」


無限に続く合わせ鏡、

サクラはその中から

負や不浄、反対を表す左側の13番目の鏡の窓を探す。


1、2、3、4、5、、


不安な顔をした自分が自分を見つめている。

大丈夫かと問うように。


負けない、大丈夫!絶対見つける!


不安をはねのけ、顔を引き締めると、全ての自分が応援してくれる。


もっと、奥に――


6、7、8、9、10、、


ずっと見ていると、写っているのは自分なのに自分じゃないみたいに思えてくる。


迷うな、進め!怖がるな!


自分を奮い立たせ、その先へ――


11、


12、


13――


(あっ!)


白いウサギが見えた。

あのぬいぐるみだ。


それから、、女の子?


女の子が誰かの手を引いている。


キラリ、金色に光る長い髪、

あの後ろ姿は――


「イシルさん!!」


サクラは名を叫び、13番目の鏡に向かって手を伸ばした。


″ずぶぶっ、、″


銀の鏡に波紋が広がり 伸ばしたサクラの手が 鏡の中に沈みこんでゆく。


「俺も!!」


「え?」


見張りをしていた筈のランが サクラの腰に手を回し、抱きついてきた。


「行くなら、一緒だ」


「ええっ!!」


ランがサクラを後押しする形で、鏡の中に加速が付いて飲み込まれてゆく。


″とぷんっ″


サクラとランは 二人して鏡の世界に飛び込んだ。





挿絵(By みてみん)




























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― 新着の感想 ―
[良い点] 面白い!続けて3話読みました(事情により)!すごい、一気に引き込まれます! [一言] 読まずに我慢した2日間・・・うう、自分をほめるっ 面白いです~ すごい、これはなかなか会えない(読め…
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