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431. ハーフリングの村へ 11 (おかしなお菓子) ◎

あとがきに料理写真挿入(2021/6/26)




男は店内の小さな丸テーブルにサクラを促す。

うちの味、、てことは、この人がディオールさんで、さっきのは弟さん?


カップに紅茶を注ぐイケメンと、先程出迎えてくれた少年。

二人の雰囲気はとっても似ている。


いやいや、ディオールはハーフリングのはずだ。

オズも、荷馬車のおじさんギランさんも、さっきの少年と同じくらいの身長だったから、あれがハーフリングの平均なんだろう。


目の前の男はどう見ても人間サイズ。

じゃあ、この人は職人さん?従業員?


「あの、お兄さん」


「ディオって呼んでよ」


えっ!この甘やかな微笑みイケメンがディオール?


「ディオ、さん」


ディオはにっこりと微笑む。


「ディオさんは ハーフリングじゃないんですか?」


「ハーフリングだけど?」


「でも人間に見えます」


ディオはふふっ、と笑うとサクラに一歩近づき、サクラの髪をさらりと撫でる。


「どういうことか、知りたい?」


近寄ったディオール――ディオからは、ふわんと甘い香りが漂う。


うわっ、これ、関わっちゃダメなやつだ!

アスと別の意味でフェロモンでてます。

なんて甘やかな人なんだ!

近くにいるだけで肌から糖分吸収しちゃうよ!!


「またの機会にお願いします。外で二人待ってるし……」


「男は待たせてなんぼでしょ」


それはモテる女のセリフです。


「ケーキ、嫌い?」


「……好きです」


「じゃ、どうぞ。はじめてのお客さんにはうちの味を試してもらわないと売れないよ」


ううっ、このかわいい焼き菓子達は是非ともお土産に買って帰りたい。


「それに……」と、ディオが続ける。


「君みたいな人のために僕はここにいるんだ」


どういうこと?


ディオがサクラの背を支え、椅子へと誘う。

サクラは仕方なく席に着いた。





ディオは、サクラを丸テーブルに着かせると、一度厨房に入り、小皿にクッキーをいれて持ってきた。

緑色のマーブルクッキーと、プレーンの中にココアが牡丹の花のようにダイナミックに入れられたクッキー。


ディオはサクラの向かいの席に着き、緑色のマーブルクッキーを手に取ると、サクッ、と 半分噛み砕いた。


サクサクと良い音をさせ、飲み込む。


「!!」


すると、目の前のイケメンが縮んでいき、始めに出迎えてくれた少年の姿になった。


「なっ!?」


少年のディオは、今度はココアいりのクッキーを手に、ガキッ、と 半分噛み砕く。


ゴリ、ゴリッと、歯応えのある音をさせて、ごくりと飲み込んだ。


すると、先程の 長身イケメンディオールに早変わり。


「こういうこと」


緑色のマーブルクッキーは小さくなり、

ココアのクッキーは大きくなる。


(メ○モちゃんクッキー!!)


赤いキャンディー、青いキャンディー、知ってるかい?


「僕は今、ここでこのクッキーの改良を重ねながら 君みたいな人達を待ってるんだよ」


()みたいな人?


「まだ、大きくなったり小さくなったりしかできないけど、痩せたり、太ったり出来るようにね」


「あ……」


見るからにぽっちゃりサクラ。

だから、″君みたいな人″のために、だ。


「このクッキーはさ、まだ改良中なんだ。10分くらいで効き目は切れちゃうし、食べすぎて太っちゃわないよう計算中だし」


「凄い研究ですね」


「お菓子は美味しくないとね」


現世だったら迷わず投資しますよ?


「そのケーキも、あんまり甘くないから、食べてみてよ」


ダイエッターの味方ディオの言葉に、サクラはケーキにフォークを入れる。


「いただきます」


ぷすり。そして、、


″ふわん″


ふわふわのスポンジを 一口。


″クシュッ″


口の中で、スポンジが くしゅっとつぶれた。


「んっ///」


ふわふわ、しっとり、しゅわりと潰れるエアリーな食感。

これは、、


「シフォンケーキ!」


ディオが、わかる?と、嬉しそうに笑った。


たっぷり空気を含んだスポンジは、くちどけ軽やか。

そこに、甘さ控えめの生クリームがたっぷりとかけられ、大粒苺の甘酸っぱさが広がる。


「んん~///」


シフォンケーキは使う小麦粉の量が少ないから、他のケーキよりも糖質は少ない。

糖質量は17cmの型で1切れ13gくらいだったかな。


使う材料は他のケーキと変わらないのに、卵白の起泡性を利用して、メレンゲの力でふわふわにしているから、空気が沢山含まれていて、一個あたりのグラムが軽いというのもある。


「おいひいぃ///」


久しぶりのスポンジケーキに、サクラの魂がふるえる。


「そんな、泣く程?」


こくこく と、涙目のサクラが首を大きく縦にふり、これでもかという程頷いてみせた。


「あはは、かわいいね」


さらに、もうひと口。


「はむ、もぐ、、」


口に入りきれないほどたっぷりの生クリーム。


口に当たる生クリームは滑らかで、さやしい。

舌でミルクのコク深さをまさぐり、味わう。


「んふっ///」


笑みしかでない。


「そんなに美味しそうに食べてもらえると嬉しいな」


「ミルクの濃厚な風味があるから、甘さ控えめなのに、甘く感じます!このスポンジに、凄くマッチしてますよ!」


「ギランのとこのミルクは特別だからね。お菓子に使ってるバターもギランの牧場のものだよ」


ああ、ファルファの丘まで干し草を取りに行ってるだけありますね!ギランさん!


「材料にも拘ってるんですね。でも、砂糖控えめでこんなにふわふわに作れるなんて、、凄腕ですね、ディオさん、メレンゲ立てるの大変でしょう?」


きめ細かくなめらかで、しっかりしたメレンゲを作るには砂糖は欠かせないはずだ。


サクラの言葉に ディオが確信をもって尋ねた。


「君、サクラでしょ」


「え?」


何故に名前を?


「オズが騒いでたからさ。お好みちゃんの伝導者サクラを案内するんや~ってね。このケーキ、ちょっと食べただけで色々わかっちゃうなんて、さすがだね」


いや、甘さに飢えていたので甘みに舌が敏感になってるだけです。


「ねぇ、サクラ」


ディオが少し口調をかえて、ちょっと甘えるようにサクラに問いかける。


「僕と一緒にここでお菓子の研究、しない?」


「へ?」


「サクラがいたら研究も進みそう」


甘い、甘い、お菓子の王子様の誘惑……


「僕にも色々教えてよ」


「私、お菓子の事はあんまり……」


「サクラは食べてくれればいいから。あんな顔されたら、頑張れる。もっと作ってあげたくなるよ」


誘うように、懇願するように、キラキラの瞳でサクラを見つめる……


「どんな風にサクラが感じるのか、知りたいな……」


テーブルに置かれたサクラの左手に、ディオの手に伸びてきて――


「お菓子のことだけじゃなくてさ」


握られそうになり、サクラはサッと 左手を引いた。


「照れちゃって、かわいいね」


いやいやいやいや、、


「私より、イシルさんの方が料理は詳しいですよ!!」


「イシルぅ~?」


イシルの名前に、ピクリ、と、ディオの眉間にシワがよった。


「″イシルの旦那″てオズが言ってた、あのエルフの事やろ」


ケッ、と、キレイな顔を歪めて、やさぐれ気味。

あら、関西弁出ましたね。

これが素かな?


「あんな奴ら、全員チビになったらええんや」


(あれ?ディオさん、もしかして、″イケメンお断り″って、、)


低身長コンプレックス?















挿絵(By みてみん)


ディオのおかしなお菓子イメージ。

ビスコッティを焼いてくれた時に一緒に贈られてきたクッキーです。

抹茶マーブルはサクサクで、ココアはちょっぴり固めで歯応えが楽しい。


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― 新着の感想 ―
[一言] わあー、またもやおいしそう!目が喜んでいます<(_ _)>(*^-^*)
[良い点] このクッキー!凄く美味しそう、と写真を見ても分かります! きれいな模様が描いたみたいに見えて、これは魅力的~!と食べたくなりました! そしてイケメンが齧る(笑) お菓子を作るイケメンの秘密…
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