表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
430/557

430. ハーフリングの村へ 10 (荷馬車に揺られて) ★

挿絵挿入(2021/6/25)

イメージ壊したくない方は画像オフ機能をご利用くださいm(_ _)m




ハーフリングのギランさんが サクラ達を荷台に乗せてくれたのは 親切心だけではなかった。


「いやー、いつもは息子のコットルが一緒やから、どないしようかと思っとったけど、助かったわ~」


道の悪いところに差し掛かると、イシルが荷台から降りて馬を誘導し、ランが荷台をフォローしながら通過する。


「兄ちゃん達、えらい仕事できるなぁ~」


うん。

さすがオズと同じ人種。

打算的(笑)


「御者代わりますよ」


イシルがギランの代わりに馬を操る。

心なしか馬も嬉しそうに見えますよ。


「こんな森の中に干し草を取りに来てるんですか?」


不思議に思ったサクラが、荷馬車の後ろから御者席のイシルの隣のギランに声をかけた。


「ファルファの丘はやらかい草が多いんや。そいつを食わせた牛はええ乳が出るさかい、丘まで取りに行ってるんよ」


「へぇ~」


「あのあたりの野生の牛は肉も美味しいですからね」


イシルがギランの言葉につけ足した。


「そうやー。今はお好みちゃんやたこ焼きちゃんが人気やけど、ハーフリングの村に着いたら牛を食べにゃ損するで~」


オーガの村は豚のスペアリブが絶品だったけど、ハーフリングの村は牛。

これは、お昼が楽しみ!


何気ない会話でのんびり馬車を走らせ、そろそろ村につく と、ギランさんが教えてくれたところで、ランがスンッ、と、鼻をならした。


「なんか、甘い匂いがする」


サクラもランと同じように鼻を効かせてみる。

バターとミルクのまざったような、甘い匂い。


「ホントだ」


「ああ、ディオやな」


「ディオ?」


「ディオールっちゅうんやが、村はずれで菓子を作っとる」


「お菓子やさん!」


サクラの目がキラキラと輝く。

食べられなくても見たい!

アイリーン達にお土産に買ってもいいしね!


「行ってみますか?」


「行きたいです!」


しかし、ギランはちょっと困った顔をした。


「行くのはかまへんけどなぁ~、入れんかもしれん」


「今日はお店お休みですか?」


店主の気まぐれで開ける店なんだろうか?


「いや、そうやないけど、、変わりもんやからな~アイツは」


ギランはサクラをチラッと見る。


「まあ、嬢ちゃんなら大丈夫やろ」


「「???」」


サクラ達三人は、ディオールの店の近くで荷馬車から降ろしてもらい、ギランに別れを告げた。





◇◆◇◆◇





ドワーフの村とハーフリングの村を繋ぐ馬車道から 甘いかおりに誘われて 森の中の小道を歩くと、小さな家が見えてきた。


ハーフリング村の家の特徴なのか、まるっこくて、ちっちゃくて、かわいらしい。


そこがディオールの店のようだ。


ドアは閉まっているし、看板はない。

一見(いちげん)さんお断りの店なのだろうか。


看板の代わりに、ドアには張り紙がしてあった。


″イケメンお断り″


「……なんだこりゃ」


ランが張り紙を見てすっとんきょうな声をあげる。

イシルが構わずにドアに手を掛けた。


「イシルさん、イケメンお断りって、、」


「はい、僕はイケメンではありませんから」


イシルがイケメンスマイルを浮かべてサクラに答えた。

誰基準!?


″ガチャッ″


店のドアが開く。


しかし、開けたのはイシルではなかった。

中から少年――

いや、ハーフリングだから、少年に見える人物が 現れた。


作業の途中だったのか、ホイッパーを手に持っている。


長めの前髪は真ん中からさらりと左右に流れ、見上げる瞳は少しタレ目で、優しい顔立ち。

キレイな顔だなぁ……


(この人が、ディオール?)


ディオールはサクラ達三人を見ると イシルとランをビシッ、ビシッと指差し、


「お前とお前、却下」


そう言ってサクラの手を掴み、中に招き入れ、バタンとドアを閉めた。


″ガチャリ″


ご丁寧に カギまでかけて。


「……」

「……」


ハーフリング 力はないが 素早さだけは 一級品。

ディオールのお菓子やさんの前には取り残されたイケメンが二人。


「……けやぶりますか?」


「案外大人げないな、イシル。村人(一般人)だぞ」


やめとけよ、と ランがイシルを止める。


「ですが、サクラさんの身が危険です」


「あんな小僧、平気だろ待ってりゃすぐ買って出てくるさ」


玄関脇の手すりに ランがひょいっと腰かける。

しかし、イシルは心配なようだ。


「見た目は小僧でも中身は大人ですよ」


「大丈夫だって、ハーフリングはドワーフみたいに力が強いわけじゃねーしさ、オズだってサクラには勝てねーだろ」


「サクラさんはギルロスみたいにあからさまな『男』には警戒するのに、子供には弱いんです」


確かに。

ランが子供の姿の時は甘々だ。


「しかし、僕の懸念はそこじゃありません」


「?」


「彼の職業が問題なんです」


「職業、、菓子職人?」


「ええ」


「サクラさんは 何よりも食べ物に弱いので」


「あー……」


「易々と甘いものを口にするとは思えませんが……」


イシルの懸念はサクラの胃袋だった。

強敵現る!?





◇◆◇◆◇





「仕上げてくるから店内見てて」


ハーフリングなのに関西弁ぽくない喋りをするディオールは、サクラにそう言って、奥の厨房へと入っていった。


ここはパティスリー?

クッキーやパイ、タルトなどの焼き菓子、ロールケーキ、カップケーキ、ふわふわの甘々!

しかも星やハートがちりばめられていて、かわいいったらありゃしない。

パステルな店内は、キラキラと輝いている。


カントリー調の店内に売っているのはお菓子だけじゃなく、ちょっとした食器や調理器具、ジャムや小物が並べられ、一席だけ丸テーブルが置かれ、ショールームのように小さなさ世界を作っていた。


お店というよりは、メルヘンな小人のお家。

そこにインテリアのようにお菓子が飾られているお菓子の家。


店内を見てまわりながら 手持ちの小さいかごに、お土産用のお菓子を選びながらいれていると、サクラの目の前にケーキが出された。


ふわふわスポンジに、先程ディオールが立てていた生クリーム。


「どうぞ」


「いえ、私はお土産を買いに来ただけで、ケーキは――」


断ろうと顔をあげると、そこにいたのは先程の、見た目少年ディオールではなく、背の高い甘やかな笑顔をたたえた、キラッキラのイケメンだった。


「えっと、、」


どなたですか?




挿絵(By みてみん)









評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[良い点] イシルさんがなんだかはじけてて、クスクスです。 ぜったいこれ終始笑顔だよ! と思うともうっ サクラさんたちと過ごすここまでの日々で、自分を覆う重い殻を破れたんだな、と思うとなんだかうれしい…
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ