429. ハーフリングの村へ 9 (カートンドッグ) ★
挿絵挿入(2021/6/23)
イメージ壊したくない方は画像オフ機能をご利用下さいm(_ _)m
カートンドッグって知ってます?
ホットドッグをアルミで二重にまいて、牛乳パックの中に突っ込み、牛乳パックの口に火をつけて燃やし、牛乳パックだけを燃料として作る料理です。
牛乳パックが燃え尽きたら自動的に完成してしまう超お手軽なキャンプの朝食レシピ。
「出来ましたよ」
まわりの箱が焼けて、むき出しになったアルミを開くと、少し焦げ目のついた熱々のホットドッグが顔をだす。
ジャンキーに、ケチャップとマスタードをかけて――
「熱いからランは気をつけてね」
「うぃーっす」
「「いただきます!」」
″かぷっ、ぱしゅんっ″
はじけるソーセージに、かりっと焦げ目のついたコッペパンは、外側さっくり、中は蒸気が閉じ込められてふわっふわの、あっつあつ。
「はふっ、はむん、、」
葉野菜はしんなりなっちゃうから入れていない。
パンとソーセージ。
そこにケチャップとマスタードのわかりきった味。
この、高速道路のサービスエリアで売ってそうな、少しちゃっちい感じがたまらない(笑)
野菜はブロッコリーのミネストローネでカバーです。
トマトの入らない緑色のミネストローネは、玉ねぎ、キャベツ、セロリにブロッコリー。
春の野菜が入った優しい味わい。
特に味付けしなくても 柔らかい春野菜の甘味がブイヨンにとけだしている。
ベーコンで塩気を足して、トロトロに煮込まれたミネストローネ。
しゃきっと噛みごたえがあるのは、ブロッコリーの茎とヤングコーン。
これで今日の午前中のエネルギーチャージはOKデス!
食事を終える頃、先に旅立つターニャが サクラの元に挨拶にやって来た。
「サクラ、色々ありがとう、楽しかったよ」
たった一日の出会いだったけど、すっかり友達になってしまった。
「旅が終わったら ドワーフの村にも遊びに来てね」
「うん、絶対行くよ」
アスベルと一緒に来れるといいね。
頑張れ、ターニャ!
ターニャが別れ際に、サクラにそっと耳打ちする。
″ᛆᛔᚮᛚᛚᚮᚿ″
それは不思議な発音の猪熊族の古い言葉。
「オレ達の神の名前だ。サクラに太陽の加護がありますように」
「ありがとう、ターニャ」
サクラにだけ教えてくれたその名前。
不用意に人に教えてはいけないんだろうなと思った。
大事な神の名前を教えてくれたターニャの気持ちを大事に胸にしまう。
サクラは 商人達に『迦寓屋』のチラシを配り、しっかり立ち寄り銭湯の宣伝をして、ターニャ達を送り出した。
◇◆◇◆◇
ターニャ達を送り出した後、サクラ達もテントをたたみ、火の始末をすると、ハーフリングの村へ向けて出発した。
清々しい朝の空気を堪能しながら、広くなった道を一時間程歩き、小休止、更にもう一時間。
ハーフリングの村からドワーフの村へ向かう旅人や貴族の馬車とすれ違いはしたが、特に何の問題もなく、快調に歩みを進める。
昨日の冒険詰め合わせが嘘のように穏やかだった。
「大分歩いたので疲れたでしょう、そろそろ抱えましょうか?」
イシルが両手を広げ ″おいで″ と サクラを促し、
「オレが背中に乗っけてやるよ」
ランがサクラの隣にぴっちょりくっついて、″激しくしないから″とささやく。
ラン!言い方!!
ああ、もう、この人達は甘すぎる。
正直二時間近く歩いているから疲れてはいる。
でも、、
「もう少し、頑張れます」
どっちに頼っても小っ恥ずかしいよ!!
提案を聞き入れないサクラに、イシルとランが不服そうに言葉でつっついてきた。
「ハーフリングの村に着いたら動けないなんてことにならない程度でギブアップしてくださいよ?」
イシルがちくり。
「サクラは自分の事がわかってないからなぁ~」
ランも追い討ち。
「ちょっと、2人結託して私をディスるのやめてくれないかな?」
おっしゃる通りですがね。
「これでも学生の頃は遠足で一日かけて山にのぼったんだから」
「いくつの時だよ」
「うっ、、」
過去の栄光を持ち出すのは年を取った証拠です。
予定では昼頃ハーフリングの村について、オズと合流し、食事した後、骨董市を見ながら オズの案内で村を巡る事になっている。
勝手に見てまわるからいいと断ったのだが、どうしてもオズはサクラ達をもてなしたいようだった。
再び休憩を入れ、少し歩いたところで、前方に立ち往生している荷車を発見した。
このあたりはまだ道の整備がされてなく、地が慣らされていないために、狭い上に大きめの石も多い。
石に乗り上げて傾いたのか、干し草の束があちこちに散乱していて、子供、、いや、子供の背丈程のハーフリングのおじさんが 干し草を拾い集めていた。
「大丈夫ですか?」
「いや~、傾いた拍子に馬が驚いて逃げてしもうてなぁ~」
のんびりとした関西弁のおじさんに、イシルは″馬は僕が探してきますから″と、言うと、走って馬の後を追っていき、
サクラとランは 荷台から落ちてしまった干し草を拾うのを手伝う。
暫くすると、イシルが逃げた馬に乗って帰って来た。
馬に乗るイシルさん!
やっぱりカッコイイすね!
白馬じゃないのに王子様!!
「あんたら、ハーフリングの村に行くんやろ、荷台に乗ってったらええよ」
「ありがとうございます」
ちっちゃいおっちゃん、ハーフリングのギランさんが、ハーフリングの村まで荷台の後ろにサクラ達を乗せてくれた。




