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422. ハーフリングの村へ 2 (vsオードリー) ★

挿絵挿入(2021/6/13)

植物系魔物苦手な方は画像オフ機能をご利用下さいm(_ _)m



「サクラさんは危ないから触らないで、ヒレで手を切りますよ」


アイアンフィッシュの縄張りを過ぎると、イシルはサクラにかけておいた結界を解き、ボートの上に撃ち落とした魚を拾い集めながらサクラに注意する。


「アイアンフィッシュは魚の魔物で、鱗は熱伝導の高い金属のようなものですから、弱点は火です。でも熱すると鱗が変質して 売れなくなるので、狩るのが難しく、一般流通が少ないんですよ。鱗やヒレはまとめて型に流し込んでから熱を加え、すぐに叩けばいい防具や剣になります」


ランだけじゃなくイシルさんも売る気満々ですね?


「うちはエンゲル係数が高いので助かりますね」


あいたー、食費でしたか!すみません。


()()()()は群れてるからな。火を使わないで捕獲するならある程度強くなきゃ船やられて切り刻まれて終わり。火を使って倒したら意味なし、食っても固くて旨くないしな」


食ったのか、ラン。


(私は出くわしたら迷わず即火魔法で撃退だな)


我が身がかわいい。





渓谷の間を流れる川は そのまま洞窟の中へと流れ込んで行く。

サクラ達三人を乗せた小さなボートは そのまま洞窟の暗がりの中へ。


洞窟の入り口付近は木の根や蔓が垂れ下がっていて、天井を埋め尽くすそれらに頭を撫でられ、サクラは思わず首をすくめた。


″スルリ″


長く垂れ下がる植物の蔓が首もとに触れ、サクラはぺいっ、と振り払う。


″スルッ″


鬱陶しいな……


ぺいっ、と 再び。

すると、振り払った腕に 植物の蔓がしゅるしゅると絡みついてきた。


(え?)


サクラの腕を伝い、腰に巻き付く。


(なっ!?)


″グイッ″


ヤバイと思った時には既に遅く、サクラは腰を抱えあげられ、洞窟の横穴のひとつに一気に引きずり込まれた。


「うわあっ!!」


「サクラさん!?」

「サクラ!!」


不意をつかれたイシルとランが急いでサクラの後を追おうとするが、水の中からも蔦が這い上がって来て、足元止めを食らった。


ボートごと 蔦にからめとられる。


「くそっ」


ランが魔法を放とうとする。


「火魔法はダメだ!」


「わかってるよ!」


植物への火魔法の効果は絶大だが、洞窟内では危なくて使えない。

ガスが発生していたら爆発する。

植物に水魔法は効きにくいので、イシルとランは 風魔法を使い、風の刃物で 蔦を切り刻んだ。

手が自由になったところで剣を持ち、剣と魔法でさらに斬る。

が、後から後から蔦が増殖してきてキリがない。


更に悪いことに、崩れる恐れがあるので 大きな魔法が使えず、洞窟内ではイシル達には部が悪い。

自分達は大丈夫だが、崩れたら奥に連れていかれたサクラが危ないからだ。


「くそっ、火魔法なら一発なのに」


「それをふまえてコイツらはここに住みついたんでしょう!」


カニバル・イーター、肉食植物だ。


「頼むから 行くまで喰われんなよ、サクラ」


蔦を払いながら イシルとランは サクラが連れていかれた横穴に飛び込んだ。





◇◆◇◆◇




『腹減っタ!腹減っタ!』

『飯ダ!飯ダ!飯が来タ!』

『まるまる!まんまる!うまそうナ飯ダ!』


引きずり込まれた先でサクラを待っていたのは、ぽってりとした唇の 大きな花だった。

しかも、人の言葉を喋っている。


(オードリー!!?)


シトル○ョップオブホラーズのオードリーそのもの!

口汚いところまでそっくり。

しかも、頭が3つあり、おどろしさ3倍!


(ひいぃぃぃ!!)


壁一面に張り巡らされた蔦には小さな蕾がつき、ギザギザの歯を見せながらケタケタと笑っている。

喰われたら、絶対痛い!!


(除草剤!除草剤をくれー!!)


『じゃあ、イタダキマ~ス』


真ん中のオードリーが あーん、と、大きな口をぱっくり開けてにしゃりと嗤った。

牙、いっぱいぃ!!

見た目植物、口、恐竜!?


(南無三!!)


もうダメかと思ったその時、右手のオードリーが、真ん中のオードリーを止めた。


『何故お前が喰ウ!?オレが喰ウ!』


口をアヒルのように可愛くとがらせ、ぶうぶう抗議する。

すると、左手側のオードリーも、


『イヤ、オレダ!オレが喰ウ!オレの飯!』


サクラを巡ってギャーギャー喧嘩がはじまった。


(……体は同じ一体なんだから、誰が食べても同じじゃん?)


人語を話すからといっても、知恵はないようだ。

おバカでちょっと笑ってしまった。


まあ、教えてやるなんて、敵に塩を送るなんてことはしないけど。


(ん?塩?)


サクラは はっと思いつく。

植物は塩で枯れる。

塩揉みすると水分が抜けるからだ。


(塩!塩!)


幸いオードリーはサクラの腰に巻きついているだけで、両手は空いている。


(ここから森の家までの道は覚えてるから――)


サクラは銀色魔法を使い、お馴染みとなった『扉』魔法を手の平の上で展開し、繋がった()()に手を突っ込んで 森のイシルの家のキッチンから塩の(かめ)を取り出した。


(塩揉みダイエットで鍛えたマッサージの威力を思い知れ!)


塩揉みダイエット、そんなに痩せなかったけどね。


サクラは左の小脇に抱えた塩の(かめ)に手を突っ込むと、塩をひと握りし、腰に巻き付くオードリーの蔦に 思いっきり揉み込んだ。


″むぎゅうぅ″


『『!!?』』


顔を付き合わせて言い争っていたオードリーの3つの頭が後ろにのけ反る。


″ぎゃああぁぁ!!″

″うわああぁぁ!!″

″なんじゃこりゃああぁぁ!?″


なんですか、ジーパン刑事(デカ)ですか?松○優作がいましたね!?


オードリーは苦痛に口を歪め、捕まえていたサクラを離した。


サクラに塩を塗られたオードリーの蔦の部分がしおしおとしおれ、茶色く枯れてゆく。


『やべぇ!』

『マジやべぇ!』

『コロサレル!』


怯えて後ずさるオードリー。

勝利を確信したサクラは、塩の甕を構えてじりじりと肉食植物、オードリーに詰め寄っていく。


『まさか、ソレをオレにかける気じゃないだろうな!?』


″ペイッ″


『『ひいぃぃぃ!』』


塩を撒くサクラに飛び退くオードリー。


『コイツ、根を狙いやがっタ!』

『ヤる気ダ!』

『本気ダ!コイツ、コロサレル!!』


形勢逆転。

今度はサクラが不適に嗤う。


『外道ダ!』

『極悪ダ!』

『根性悪ダ!!』


さっきまでは自分達が殺ろうとしてたよね?


『ソンナもの撒いたラ、この地ニ 草一本も生えんゾ!』

『川に流れタラ シンコクな被害がデル』

『自然破壊ハンタイ!!』


なんだ、こいつら……

しかし、一理ある。


塩は土壌では分解されないから、残留すると後から植物が生えて来ない。

塩害だ。

花や植木、作物なんかももちろん育たない。


周辺への流出の恐れ

塩は分解はされないから、雨水などによって、周りに流れ出し、周辺の畑、河川、地下水などに深刻な影響を及ぼす恐れがある。


『環境破壊ハ有害!』

『ラブアンドピース!』

『エコテロリスト!!』


『ゲ~ド~ウ!』

『ゲ~ド~ウ!』

『ゲ~ド~ウ!』


オードリーたちの大合唱!


「うっさい!一掴みくらいで塩害になるかっ!!」


サクラが塩を掴んで投げようとしたら、オードリーの蔦が素早くサクラの襟首を掴み――


″ペイッ″


もとの通路へと放り投げた。


(うわっ!?)


通路の壁にぶつかる!!


″ランっっ!″


ようやくランを()ぶことを思いだし、サクラは心でランを()んだ。


通路に頭を打ちつける前に ぽふん、と、抱き止められた。


「もっと早く()べよな」


ちょっぴり不機嫌なラン。

心配してくれたんだろう。


「ありがとう」


「サクラさん!!」


続いてイシルも駆け寄ってくる。


「大丈夫ですか!?怪我は!?」


「大丈夫、無傷です」


いやいや、イシルさんの方が死にそうなほど顔色が悪いですよ!?


「すみません、油断しました」


あの時結界を解くんじゃなかったと、イシルが口惜しく顔を歪めた。


「己の力を過信してはいけませんね」


サクラは気落ちするイシルを慰めながらボートまで戻り、三人は再び川下りを再開した。





挿絵(By みてみん)


↑カニバル・イーター

(サクラの中ではオードリー)





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