406. 祭りのなごり 5 (エピローグ)
2021/5/5をもちまして、お友達100人できました!
392話あたりでしたかね。
ありがとうございます!
本日記念挿絵を後書きにいれましたよ(2021/5/23)
一方こちらは、逃げ走るランに抱えられているサクラ。
野を越え、山越え、谷越えて……
「ちょ、ストップ、ストラップ、ラン!」
ランに止まる様子はない。
ここは一体どこですかー!?
「私、アスとの打ち合わせがあるから、ラ・マリエにいかないと、、」
「やだね」
ランは聞く耳持たずで走り続ける。
「やだね、って、どこむかってんの、ラン」
「アジサイ街♪」
ランの声が弾んでいる。
アジサイ街に何か楽しいことがあるの?
「何で?」
「連れ込み宿があるから」
「は?」
おいおいおいおい。ランさんや、一体急にどうしちゃったの?
「サクラが言ったんじゃん、″奪って″って」
「はぁ!?」
「嬉しいな♪サクラから誘ってくれるなんて。久しぶりだし、獣人化中だから、オレ、何回もイケるよ?」
そんな、爽やかに言われても、、
「あほかぁ――――!!!」
″スパ――――ン″
久しぶりの ランのセクハラ大魔王発言に、またしてもサクラの結界が炸裂した。
「いってぇ、抱えてンのに弾くなよ~お前が危ないだろ!」
やられてるのはランなのに心配ありがとう、いや、そうじゃなくてよ、、
「ランが変なこと言うからだよ」
「先に言ったのはサクラじゃん」
「意味が違うわ!」
まったく、都合良く解釈しおってからに。
「どうする?サクラ、俺がいないと帰れないけど?」
「か~え~れ~ま~す~」
サクラにはキラキラ銀色魔法がある。
ちょっと体力(←魔力)使って疲れちゃうけど、アスとの打ち合わせは明日にしてもらって帰って寝れば良いだけだ。
オーガの村の穴に閉じ込められた時と同じく、ドアを描いて、森のイシルさんちの自室のドアに繋げれば良い。
しかし、、
(ここ、何処?)
場所が良く分からず、イメージしにくい。
(困ったな)
何か別の魔法を考えなくては……
サクラは倒木に腰かけて頭を悩ませる。
ランもサクラの隣に腰かけた。
(ワープのイメージ、他に何かあったっけ?)
「サークラっ♪」
ランが様子を伺いながらサクラに近寄る――
(某SFドラマでは現地で体を粒子にして、転送先で再構築するというのがあったな)
「ねぇ、サクラってばぁ」
ジリジリと間合いをつめるように――
(原子レベルに体をバラバラに細かくするとかありえん、失敗して戻れなくなったらどうする!!却下。空からならドワーフの村が見えるかな?ワープよりも飛ぶ方法を考えるか……)
「諦めて、俺と逝こうよぉ」
ランがサクラに近づき、ふーっ、と耳に息を吹き掛けてきた。
「ひいっ!やめれ///ラン、ちょっと静かにしててよ、今、考えてるんだから」
サクラは耳を押さえながら更に考える。
(飛ぶとしたら重力魔法?無重力、、は息が出来ないか、え~と、風魔法で体を浮かせる?失敗したら怖いな、今日は普段着だから、服にも靴にも加護なんかついてないから 落ちたら怪我じゃ済まな――)
サクラの前にふっと影ができ、日が遮られ――
「オレ、別に外でもいいよ?」
「は?」
いつの間にかランがすぐそばまで来ていて、顔を傾げ、サクラの顔に自分の顔を寄せていた。
「ちょ///」
サクラの唇にランの唇が近く。
″ガツッ″
「うわっ!」
サクラが弾こうとした直前に、何故かランの体が宙に浮き、ランが驚いて声をあげた。
「そこまでです、色魔 戯れ猫」
「イシルさん!?」
本命登場!(怒)お父さん!!
イシルが猫の子を持ち上げるようにランの襟首をつかんで持ち上げている。
片手で凄いですね、イシルさん。
ランの体はケモノ化して いつもより一回り大きいですよ?
「なんだよ、イシル!何でここが分かったんだよ!?」
「僕には何でもわかるんです」
あー、チェーンのかわりに薔薇のネックレスにつけたイシルさんの髪で編んだ紐のせいですね?
「全く、春の発情期ですか?困ったものですね」
「生理現象だよ!動物の本能!」
「開き直らないで下さい」
「俺のこの体の滾りを、迸る劣情を、躍動する下半――」
ピキリと音がしそうな空気、わかれよ、ラン。
ランが下ネタを連発しそうになったので、イシルがそれを言葉を被せて遮った。
「そんなに元気なら 僕が手伝ってあげますよ」
えっ!手伝うって、イシルさん!?
「なっ、何すんだ、イシル!」
イシルはランを地に立たせると、その場でコマのようにぐるぐると反時計回りに回転させ――
「わ、わ、わ、わ、目が、ま、わ、る、る~」
フラフラになったランを抱えあげると――
「行ってらっしゃい、ラン。沢山走ればソレはおさまるでしょう?」
ぶんっ、と、遠くへ放り投げた。
ランはヒューンと飛ばされ、
″キラッ″
星になって見えなくなった。
「あの、ランは……」
「しばらく森をさ迷えばおさまるでしょう。方向感覚を狂わせておきましたから、良い運動になると思いますよ」
鬼ですね!イシルさん、容赦無し!!
「帰りましょうかね、サクラさん」
「いや、アスとの打合せが……」
「そんなの明日でもいいじゃないですか」
イシルがサクラをひょいっと抱える。
「折角、二人きりなんですから♪」
イシルの笑顔にサクラは一抹の不安を覚える。
狼を追い払ったのは、別の狼とかじゃないよね?イシルさん?




