表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
405/557

405. 祭りのなごり 4 (シリュウの試練)




「ところでラン、何でここにいるの?仕事は?」


誤解がとけて休戦状態に入ったランにサクラが聞く。


「何でって、お前が変なスカシ野郎といるから……」


「変なスカシ野郎とは、また随分な言われようだな」


ランの言いっぷりにシリュウが苦笑をみせた。


「すいません、シリュウさん」


サクラがかわりに謝る、が、別にシリュウは怒っているわけではない。


「従者としては合格であろう、主人の身を案じての事なのだから」


むしろほめられてるし。


「そうだよ、俺はサクラの身を案じて来てやったんだぜ、サクラはイケメンに弱いからな」


うーわー!余計なこと喋るな!ラン!

ほぼ初対面の人間に いらん情報を吹き込まないでくれ!


「あー!はいはい、もう大丈夫だから、仕事に戻ってね~」


サクラはランの背中をドワーフの村の方へと押しやり、退散願う。


「なんだよ、折角リベラを撒いて来たってのによ~、イシルにチクるぞ!」


「リベラさんを撒いて?」


ってことは、、


「ここにいたのか、ラン」


「ゲッ!」


ランを追って来たであろうリベラがドワーフ村の門の前に現れた。

走り回ったのか、息が少しあがっている。

お怒りですね、リベラさん。


「シリュウさん、あとは任せました」


「え?」


「健闘を祈ります!」


サクラはシリュウに声をかけると、がばっ、と ランにしがみついた。


「なっ///なんだ、サクラ!?」


「逃げよう、ラン」


「は?」


「私を奪って逃げる!」


ランはにんまりと口のはしをあげると、しがみつくサクラをひょいっと抱え、一足跳びにその場から立ち去った。


獣人化したランの足に、リベラは一歩及ばずだ。


「チッ、逃げ足が速いね、まったく」


そして その場には リベラとシリュウが残った。


「……」


「……」


沈黙の中、リベラは無言でその場を立ち去ろうとする。


″あとは任せました″


任せた?何を?


これはサクラがくれたチャンスだ。


声を、、

声をかけなければ リベラは行ってしまう。

今まで通り受け身では終わってしまう。


「リベラ!!」


シリュウはリベラの背中に呼び掛けた。

リベラがゆっくりと振り返る。


何を言えばいい?


「俺は、、その、、」


あとが続かない。

好きだとは到底言えそうにない。


「……」


「……」


言いあぐねていると、リベラが小さなため息をついた。


「飯は、食ったのか?」


「え?食っ、、」


食った。

今、バーガーを二個。


″シリュウさんには時間があります″


サクラの言葉が思い出される。


「……ってない」


リベラがクイっ、とアゴをしゃくり、ドワーフの村を示す。


「この後ランと飯を食うはずだったんだ。一緒にどうだ」


「……いいのか」


「後を任されたんだろう?」


リベラがニヤリと笑い、ドワーフの村へと歩きだした。

シリュウはリベラの後を追う。


″これから、時間をかけて、今度はシリュウさんがリベラさんを追いかければいいんじゃないですか″


サクラの言葉に後押しされ、シリュウはリベラに話しかけようと試みた。

言いたかったこと、シリュウの気持ち。


リベラの隣に並び、声をかける。


「リベラ」


リベラの切れ長の目が″なんだ?″と シリュウを見る。


「うっ///」


しかし、いざリベラを前にすると やはり″好き″の言葉はまだ敷居が高い。


「……この前の決着は仕切り直しだ、リベラ。俺はあんな勝利 納得していない」


「そうか」


「だから、、約束は無効だ」


「……」


「その、俺の前に 二度と現れないなど、、」


「それを言いにわざわざ来たのか?」


「ち、違うぞ、俺は、その、コロッケの店に()()()()()()来ただけだ!」


「……それは、、」


リベラがクスリと笑う


「ヒナは怒るだろうな」


「は?」


シリュウの顔をみて、更にクククッ、と リベラが笑った。


「あ!いや、違う!ヒナの店にコロッケを買いに来たのだ///紋次(もんじ)達にも食わせてやろうと、、」


わかった、わかった、と、リベラが笑っている。

リベラの笑顔がシリュウの心にしみる。


「ところで、昼は何を食うんだ?」


シリュウは己の気持ちを悟られないように、話しをかえた。


「ああ、今、この村では()()()()()()というのが流行っていてな、野菜たっぷりのスパイシーな()()を 麦飯の上にかけて食うんだが、、」


「ほぅ」


「お手軽だからと、サンミが作り方を教えてくれたんだ」


「……は?」


リベラは警備隊中屯所へと入っていく。


「……まさか、お前が作ったのか?」


「ああ、材料いれて煮込むだけだからな、、早く来いよ」


リベラは料理が出来なかったはず。

しかも、致命的に……


シリュウはリベラに招かれ、恐る恐る中屯所の中へと入った。


中へ入ったとたん、強烈なスパイスの匂いと、何かが焦げた匂い、同時に甘くて、、酸っぱくて、、何だこれは!?


「あれ?おかしいな、誰もいないな、いつもは内勤者も、外回りの者も帰ってくるものがいて、5、6人は一緒に食うんだけどな」


逃げた、逃げたんだよリベラ。

もしや、サクラの従者のランも、サクラの事が心配だった訳じゃなく、一緒に食いたくないから逃げたのでは!?


リベラがキッチンでカレーを温める。

温められたカレーは更なる刺激臭を放ち、シリュウを攻撃してくる。


「……リベラ、俺は冷たいままでも、、」


冷たい方が味がわかりにくかろう


「客人にそんなものは出せないよ」


リベラが温まったカレーライスを シリュウの前に置いた。


″コトン″


「これが、、カレーライス、、」


確かに、スパイシーな香りのするソースがかかっていて、ジャガイモが沢山入っている。

うん、ドワーフ村のジャガイモは美味しいのは先程のコロッケバーガーで立証済みだ。


しかし、、カレーとはこんなに黒い食い物なのか?


「隠し味にコーヒーやチョコを入れるとコクが出ると サンミが言っていたからな」


シリュウは恐る恐るスプーンを差し込む。


″ジャリッ″


ジャリッて、、リベラ、コーヒーの豆を()にしたものを入れたな、お前。

この場合、抽出したものを入れるのではないのか?

しかし、この甘い匂いは何だ?チョコレートではなさそうだが、、


″ふにゃっ″


えっ!?パイナップル??


「ああ、フルーツとハチミツでフレッシュな酸味が出るらしい。しかも、パイナップルは肉を柔らかく、旨くしてくれるからな」


いや、それにしてはデカすぎるだろう、パイナップル。

ジャガイモかと思ったぞ!?


「リベラは、、食わんのか?」


「ああ、アタシは巡回中に色々もらって食ったからね」


「そうか、、」


シリュウの前に大きな壁が立ち塞がった。


(俺は、、俺はもう逃げるわけにはいかんのだ!)


シリュウは覚悟を決め、カレーライスをすくい上げ――


(俺の骨は拾ってくれよ!サクラ!!)


口にいれた――








評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ