395. オーガの村の男祭り 12 (合戦) ★◎
挿絵挿入(2021/5/9)
イメージ壊したくない方は画像オフ機能をご利用くださいm(_ _)m
本日戦闘シーン中心ですがワタクシ、バトル戦術皆無ですので雰囲気をお楽しみください(←逃げ)ε=(ノ゜Д゜)ノ
太陽のマークをシンボルに、燃える赤を基調とした甲冑を身に纏う、大将にリベラを据えた赤軍。
対するは 月のマークをシンボルに、澄んだ青の甲冑に身を包んだ シリュウ率いる青軍。
男祭りの最終日は、二つの軍がグラウンドの左右に別れて合戦が行われる。
「緊張、しますね」
サクラはグラウンドの脇で この両サイドに別れた二つの軍のにらみ合いを目の当たりにし、ワクワクしていた。
(やっと、肉体イケメン集団観れる~!)
今日は グラウンドがよく見える特等席の玉座にヨーコが座っており、脇には如鬼のテンコが控えている。
ゲッカとセイヤはお留守番かな。
迦寓屋もあるしね。
″ドドン、、″
緊張が高まる中、太鼓の音が鳴った。
″ドドン、ドン、ドン、ドン、ドン、、″
太鼓の音は一定のリズムから徐々に早くなっていき――
″ドドドドドドドド、、ドォ――――ン″
一際大きく鳴り響いた。
″プァ――″
″ブォ――″
それを合図に法螺貝が一斉に吹きならされ、両陣の兵士が鬨の声をあげる。
「うがあぁぁ!」
「ウオォォ!」
「「エイエイオー!」」
「「全てはヨーコ様のために!!」」
「「エイエイオー」」
「うおおぉぉ!」
「うああああ!!」
そして、もう一度大きく太鼓が鳴った。
″ドドオぉ――……ン″
開・戦!
″ヒュン、シュッ、ヒュッ″
開戦の合図と共に、両陣営から一斉に矢が放たれた。
お互い矢合わせで敵の兵士の数を一気に減らそうという目的だ。
サクラが隣で観戦するイシルに聞く。
「勝敗はどうやって決まるんですか?」
「兵士の頭上にシンボルが見えますか?」
「シンボル?」
イシルに言われて兵士を見ると、全員が頭に自軍カラーのハチマキを巻いており、そのハチマキの真ん中の額には、お互いのシンボル、月と太陽が飾られ、その上に丸い板のようなものがはりつけてあった。
(えーっと、、モナカ?)
サクラが見る限り、それは 金魚すくいのモナカとか、南部せんべいとか、ゴーフレットとか、サクラの出身地長崎の湯せんぺいのような……
「小麦粉をと卵と砂糖を練って焼いてあるものです。あれを割られた者は退場することになっています。最終的に残った人数が多い方が勝ちです」
やっぱりお菓子ですね?
あんなの、すぐ割れそうですよ?
「制限時間前に大将のシンボルが割れるか、大将が″まいった″と言った時点で、その軍の負けにもなります」
成る程、飛んでくる矢の鏃が丸いボンボンなのは、怪我しないようにではなく、頭のシンボルを狙っていたのか。
……てか、リベラさん!?
「大将なのに、先陣きって走ってますね、リベラさん」
グラウンドでは矢の雨が降る中、リベラが赤軍先頭を走り、矢を打ち落としながら突き進んでいるのが見える。
象どるは 『長蛇の陣』
リベラの後ろに 蛇行する蛇の如く兵が続く。
赤軍ははじめから突破する気満々で、リベラを盾に突き進んでいく。
(かっ、カッコイイ///)
迎え撃つ青軍は一本出遅れて『魚鱗の陣』を象どって前進を始めた。
魚の頭を思わせる三角の形に広がり、最後尾、魚の尾の部分ににシリュウがいる。
普通、そうだよね、先頭に大将はいない。
リスクが高すぎる。
しかし、大将リベラが先頭の赤軍は その分勢いがあり、士気も高い。
「「ウオォォ!!」」
矢の雨が止み、両者が接する。
″ブォ、フォ~″
法螺貝の音が響き、リベラが鬼のような勢いで 青軍兵士を蹴散らしていく。
いや、鬼だけど。
「リベラだ、リベラを潰せ!」
「くそっ、なんて強さだ、、」
「うわあぁ!」
赤軍の前進は止まらない。
リベラは次々と青軍兵士の額の煎餅を叩き割っていく。
ああ、カッコイイ!!
「赤軍はリベラさん頼りですかね」
「いえ、よく見てください、陣形を」
イシルに言われてよく見ると、いつの間にか赤軍の陣形が変わっていた。
赤軍は『長蛇の陣』から『鶴翼の陣』へ
『鶴翼の陣』は鳥が翼を広げたようなV字の陣形だ。
「リベラはやたらに倒しているわけではなく、相手の力量を一瞬で見極めて 敵を左右に振り分けています。自軍の者の力量と相手の強さを見て、強そうなものだけ自分が倒し、他は自軍の兵士に任せているんですよ」
「成る程」
先程の法螺貝の音は 陣形変更の合図だったのだ。
『I』のかたちで矢に当たる確率を下げて進み、『V』に変化し、その『V』の中心にリベラがいる。
右に、左に、後ろに敵を流し、振り分け、誘導して、控える自軍兵士に効率よく倒させているのだ。
青軍兵士の数がドンドン減っていっていく。
″ドドドン!″
青軍シリュウが 手にした采配をふると、陣太鼓が打ち鳴らされ、今度は青軍が陣形を変えた。
″ザザッ″
青軍は『魚鱗の陣』から『方円の陣』へ。
大将を守るように中心に置くと 円形になり、四方の攻撃に対応する陣形だ。
一瞬にして象を変える陣形と、兵士の俊敏な動きは 見ていて壮観!
規律ある動き!集団により作り出される迫力!熱気と男くささムンムン!!
「あれだとシリュウさんの軍はリベラさんの軍に囲まれて潰されるんじゃないですか?」
サクラの懸念通り、円陣になった青軍を赤軍が取り囲んだ。
「いえ、有効ですよ、これでリベラは力量に合わせて振り分けることが出来なくなりました」
円形に組まれた青軍の陣は 中心に向かって幾重にも兵を布陣しており、第1の組による攻撃のあと、すぐに後ろの第2の組が攻撃をする連携プレーを見せる。
その後ろには第3の組が――
外から攻撃を仕掛けてくる赤軍兵士に対し、青軍は次々に攻撃を繰り出し、休むヒマを与えずに半永久的に攻撃を継続させる戦法だ。
守りを固めた攻撃、動く要塞のようである。
1組、2組の攻撃に気を取られていると、第3の組による槍攻撃をくらい、次々と赤軍の煎餅が割られていく。
円を一回り大きく囲む赤軍は 層が薄くて対処に遅れが出ていた。
分がわるいと踏んだリベラが合図をし、軍鐘が鳴らされ、旗持ちがぐるりと回りだした。
″カンカンカン″
声の通らない戦場においては、鳴らす物や音により どう布陣するか、予め決められているのだ。
取り囲んでも無駄だとわかったリベラが取ったのは、基本的な陣で、横並びになり、三列になったものだった。
″ドドン!″
対する青軍も、陣太鼓の音と共に、同じように横並びに、三列になる。
″ブオォ~″
″フオォ~″
″ドドドドドン!″
法螺貝の音が鳴り、鼓舞の太鼓が打ちなされた。
「うおおぉぉ!」
「うああああ!!」
真っ向勝負、
肉弾戦、開始!!
小細工なし、力と力のぶつかり合いだ。
赤軍青軍入り交じっての、泥試合の中、リベラは青軍の奥を目指した。
敵将、シリュウのいる所へ。
「相変わらずの強さじゃな、リベラ」
シリュウを目指すリベラの前に小柄な兵士が攻撃を仕掛けてきた。
サクラが『雉』と言っていた、少年のような可愛い顔をしてるのに おっさんみたいなしゃべり方をする二本ツノの鬼『羅刹』
髪の毛がフワフワと鳥の羽根のように軽やかに遊んでいる。
リベラはラセツの木刀による攻撃を同じく木刀で受け止め、ラセツをぶん投げた。
「相変わらず軽いねぇ、ラセツ」
ラセツは身軽で攻撃が早い。
筋肉もあるが、小柄なせいか、オーガにしては衝撃も軽い。
刃のついた剣ならまだしも、肉弾戦ではリベラの敵ではない。
「役不足だよ」
リベラはラセツを抜こうとする、が、、
「ワシ一人ではな」
″ヒュンッ″
リベラは殺気を感じて咄嗟に身を屈めた。
リベラの頭上を刃のない槍が通過する。
「チッ、、避けたか」
大柄で短髪、大きな一本角を持ち、大猿を思わせる『紋次』の こん棒による攻撃だ。
大きな身体から繰り出される槍の一撃は こん棒と言えど 当たったらただではすまないだろう。
それは如意棒ですか!?モンジさん!
しゃがんで避けたリベラに足蹴りが飛んでくる。
リベラは片手を地につくと、宙を返ってそれをよけた。
「俺もいるよ~、リベラ」
シベリアハスキーを思わせる相楽だ。
サガラの強みは その長い足から繰り出されるれる蹴り。
「ははっ、女一人に三人がかりとはね」
「こんな時だけ女を出すなリベラ、お主自信、そげなこと露とも思うとらんじゃろうが」
スピードによるラセツの攻撃――
「バレた?」
鋭い雉の嘴のごとく刺すようなラセツの突きの応酬、そこにサガラの蹴りが加わる。
「挑発には乗らん、個人戦じゃないんだ、悪く思うなよ」
ラセツで翻弄しながら、サガラによる蹴り攻撃をくわえる 犬と雉の連携プレー。
「あははっ、ダメか」
リベラは木刀でラセツの剣撃を受け止め、弾きながら サガラの足蹴りをもかわしていく。
「口の割には楽しそうだな、リベラ」
隙をついてのモンジの槍による攻撃。
犬、猿、雉の舞うような息の合った総攻撃。
「ふふ、お前らの連携はやっぱり凄いな、だが――」
″ガツッ″
リベラは 跳んできたサガラの足蹴りを 同じく足蹴りでもってサガラの力にそって救い上げ、頭を押さえてスッ転ばせた。
「重心が傾いてるな。頭を下げる癖が直ってない」
「サガラ!」
リベラが倒れたサガラの額のシンボルを踏み割ろうとするのをモンジが止めに入る。
″ガシッ″
リベラはモンジの奮う 槍の反対はしを掴んだ。
「ふんぬっ、、」
「ぬうっ!!」
リベラとモンジの力比べ。
両者互いに譲らず、こん棒がメキメキと軋みはじめる。
「お前は力に頼りすぎだ、モンジ」
ふっ、とリベラが力を緩め、モンジの懐に一瞬で入り込み、懐から上へ伸び、モンジのアゴにむけてのアッパーカット。
「駄目だと思ったら武器は捨てな、折角体格に恵まれてるんだから」
「ぐふっ、、」
グラリとモンジはよろめくが、太い首のおかげで脳震盪には至らなかったようだ。
リベラがフラフラするモンジの額のシンボルを狙う。
「このっ、、」
ラセツが加勢に入ろうとしたところで、鋭い一声がそれを制した。
「引け!モンジ、ラセツ、サガラ!」
スパン、と 一閃ひらめき、シリュウがラセツとリベラの間に割って入ってきた。
リベラがシリュウの木刀をかわし、後ろへ飛び退く。
「安全圏にいなくていいのか、シリュウ」
「……」
リベラの言葉にシリュウが顔を歪める。
「シリュウ、リベラの挑発に乗るな、お前は――」
「わかっている、サガラ。リベラの思惑は 主力のお前らをここに引き留めて 自軍の兵の負担を減らしたいだけだ」
成る程、周りを見ると青軍はやや劣勢に見える。
「ここは俺に任せてお前らは赤軍兵を減らせ」
「……わかった」
サガラ、ラセツ、モンジ、の三人は シリュウの指示通り自軍の兵の援護に向かった。
リベラの前にシリュウが対峙する。
「ようやく真打ち登場だね」
リベラの瞳がシリュウを見つめて 肉食の獣が獲物を捉えるようにギラリと光った。
「御託は沢山だ、参るぞ!リベラ、覚悟しろ!」
主将同士の一騎討ち。
シリュウが構え、リベラに襲いかかった――




