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390. オーガの村の男祭り 8 (鼓舞合戦) ★★

挿絵挿入(2021/5/3)

挿絵二枚目追加(2021/5/28)


イメージ壊したくない方は画像オフ機能をご利用下さいm(_ _)m






オーガの村の広場、男祭りのグラウンドは 大喝采、沸きにわいていた。


「リベラー!!」

「よっ、大将!」

「流石だね~」


御竹山(おんたけさん)から見事一位で帰還したリベラを讃える声援だ。


リベラはグラウンドを一周して声援に応えると、サクラたちの所にやってきた。


「リベラ、カッコいい!」

「やっぱりリベラだったな~」


一緒に応援していたジルとササメが興奮状態でリベラに駆け寄る。

赤軍も青軍も関係ない。

同じオーガの仲間なのだから。

勝負の後は 勝っても負けてもその勇姿を称え会うのがこの村の祖『ハオウ』の教え。

大事なのは勝敗ではなく、その戦いの中にあるのだ。


リベラがジルとササメの頭をぽんと叩きながら笑いかけ、ヒナがその様子を 誇らしげに見つめている。


ランが″リベラは兄貴″と言っていた意味がわかる気がした。


″女″だけど″漢″なのだ。

誰よりも漢らしい。

オーガの村の男衆は、そんなリベラの中の″漢″を認めているのだ。


グラウンドでは次々との修練者達がが帰還し、声援と拍手で迎えられている。


「リベラさん、凄いですね!」


「ははっ、ありがとう、サクラ、楽しんでる?」


「はい」


「アタシの勇姿を直接サクラに見て欲しかったな」


ぷよん、と リベラがサクラの頬をなでて微笑む。

うわーん、イケメンスマイル御馳走様デス!リベラさん!

心が潤います!


「その手をどけろ」


サクラをナデナデするリベラを咎める低い声。

イシルではない、男の声。


「相変わらず節操がないな、お前は」


声の主はサクラの知らない男だった。


流れる漆黒の髪を高い位置で結び、涼しげな目元が美しい 凛とした美青年。


「相変わらずお堅いねぇ、シリュウは」


リベラが笑いながら男に返す。

誰かな?シリュウさん。

なんか、、誰かに似てる……

綺麗な黒髪と二つの小さなツノに、雄々しい体つきなのに、どことなくヒロイン感漂う清い感じが――


「ここは青軍の陣地だ。赤軍大将がウロウロしていい場所じゃない」


どうやらシリュウはリベラの事があまり好きではないようだ。


「行きましょう、リベラ」


シリュウの言葉に反応したのは、ヒナだった。

ヒナが珍しく険をおびた口調でシリュウに応え、リベラの手をひく。


「待て、ヒナたん、何処へ行く!」


ヒナ、たん!?


ヒナは名を呼ばれ、立ち止まると、鋭い視線をシリュウにぶつけた。


「私も赤軍ですから、青軍の陣地にいるのはよろしくないですわよね、()()()


お兄様!?

そうか、ヒナだ。

ヒナに似てるんだ!

ヒナのお兄さんってことは、シリュウさんは青軍大将で、ザガンさんの息子ってこと!?


ザガンさんの面影一個もないな……

ヒナもシリュウさんも お母さん似なのね、よかったね。あ、失礼。


「いや、うむ、そうではなくてだな、、ヒナたんをそそのかしただけでなく、他の女子(おなご)にも――」


「私は私の意思を以てのことです、もう私のことはほっといて!子供じゃないんだから!」


ヒナの言葉に シリュウがたじたじになる。

どうやらシリュウは、極度のシスコンのようだ。


「リベラに勝てないやっかみでしょ!みっともない」


「ひ、ヒナたん……」


「今、子供達に敵味方の枠を越えて讃える話をしたばかりなのに、器が小さすぎます!お兄様!」


「ううっ、、」


ああ、シリュウさんがヒナに打ちのめされていくのがわかる……


「ヒナ、そのくらいにしてやれよ」

「そうじゃ、シリュウはいつもはこんなじゃないんじゃ、わかってやれ」

「ヒナがかわいくて仕方ないだけなんだ、ほら、シリュウ、しっかりしな」


青い作務衣(さむえ)のようなものを着たオーガの男衆がやってきて、シリュウを囲み、守るようにフォローする。


やってきた三人の男衆。

彼らも今御竹山(おんたけさん)から帰ってきたのだろう。


「モンジさん、ラセツさん、サガラさん、いつも兄がお世話になっております」


ヒナが三人の男衆に深々と頭を下げた。


大柄で短髪、大きな一本角の『モンジ』は もみあげ、無精髭があり、もじゃもじゃが猿のようで、、筋肉がすごい!


少年のような可愛い顔をしてるのに おっさんみたいなしゃべり方をする『ラセツ』は 髪の毛がフワフワと鳥の羽根のように軽やかに遊んでいる。

小柄なのに、、やっぱり筋肉がすごい。


ウルフカットに二本角『サガラ』は、目がシベリアハスキーを思い出させた。

キツイ瞳をしているのに、柔らかい雰囲気を持つ不思議なひとだ。

手が、大きいし、筋肉、うん、すごい。


シリュウも大きいけど、モンジとサガラは更に大きい。

なんというか、シリュウは雄々しいのだけれど、三人がシリュウを守っているように見える。


四人集まると、シリュウさんが犬、猿、雉をつれた 桃太郎に見えたよ?


「さ、シリュウ、鼓舞合戦の準備、しようね」


しゅんとしているシリュウの背をたたきながら、サガラがシリュウを元気づける。


鼓舞合戦とは、修練者達が応援団となり、自チームの士気を高めるパフォーマンスだ。

サクラが見たかった、集団による演技。


現世のサクラの時代には、流行りの歌の歌詞を変えて

″赤が勝つさ、そんなも~んさ、白の勝利は幻~″

(リゾラバ調)

なんてことやったりしてた。

団長が学ラン着て、ハチマキまいて、、先輩方、カッコよかったデス!ムフフ。


ザガラがシリュウを促し、四人は着替えのために、その場で着ていた作務衣(さむえ)のようなものを脱ぎだした。


(うわあああああ///)


白いサラシに白い半ダコ姿の四人。


筋肉、筋肉、やっぱり筋肉!!

ピッチリサラシは体のラインが丸見えですぞ!?


太い首から、、肩の上の三角筋は隆々で、そこから延びる二の腕部分の上腕三頭筋はくっきりもりあがっている。

隊長!大変です!力こぶ上腕二頭筋が後ろからでも確認できます!

はあぁ、曲げた腕の筋がたまらない……

腕の先の手首はしまり、その先には捕らえられたら逃げられなさそうな大きな手。

血管!血管浮き出てますよ!?


背中に視線を戻せば、がっしりしているのにどこかなまめかしい背中、肩甲骨は天使の羽根。

いや、悪魔の羽根のように狂暴、凶悪、けしからん誘惑の仕方だ!!

魅惑的な腰から下へ視線を移せば、もう、引き締まったシリが!!!


(ぐあああああ///)


シリから大地に根降ろす足は力強く、弾ける太もも、ふくらはぎはシシャモ足!


四人が素肌の上に青く、マントのように長い法被(はっぴ)を羽織り、振り向く。


(ふおおおお///)


振り向いた胸板は弾けんばかりのハリがあり、ツヤツヤと光っていてオイシソウだ。


サラシの上からでもわかる割れた腹筋。

何個ですか!?

いったい何個に割れてるんですか!!?


腹筋から下腹にかけても無駄な肉付きがない。


なんという破壊力!!

これが男祭り!

これがオーガの肉体か!!?


そして、その下に視線を落とせば、白い半ダコ姿の股間は はっきり、くっきり、もっこ――


″がばっ″


(あれ?)


サクラの視界が暗くなった。


「リベラ、これ、よろしくお願いしますね」


イシルがリベラに何かを渡している。


(あれぇ?)


イシルは片手でサクラの視界を塞ぐと、借り物競争で獲得した″朱雀庵(すざくあん)のお食事券″をリベラに託す。

ルヴァン、トトリ、カナルにご馳走してやってくれと。


そして、サクラを抱えると、一瞬にしてその場から立ち去った。





挿絵(By みてみん)





◇◆◇◆◇





「ラン様、そろそろお昼にしませんか?」


「んあ?そうだな」


ランは警備隊駐屯所の大テーブルに座って書類に向かっていたが、ハルの呼びかけに顔をあげ、ペン置いた。


「うーん……」


ぐうっ、と 背を伸ばす。


「疲れましたか?」


「まあな」


国に――

王都サン・ダウルに報告に帰っているギルロスのかわりに、ランが警備隊をまとめているのだが、正直、この()()()()が面倒くさい。


いつも座ってばかりで楽しやがってと思っていたが、これなら現場を走り回っていた方が何倍も楽だった。

副長格のリベラも 今オーガの村の祭りでここにはいないし、しっかりやっておかないと 二人が帰ってきた時に引き継ぎできずにどやされる。


「僕、買ってきますよ。お昼はバーガーでいいのかな?それとも屋台で何か別のもの買ってくるですか?」


「いや」


ランは亜空間ボックスからふろしき包みを取り出し、ハルに見せた。


「今日は弁当あるんだ。一緒に食おうぜ、ハル」


「わあ!うれしい!、、デス!!」


誰かと一緒に食べる弁当は美味しい。

ランは重を開け、ハルと一緒に イシルが作ってくれた弁当をつつく。


今頃サクラとイシルも同じ弁当を食べているのかと思いながら。


いや、ちょっと遅いかな。





その頃サクラは――


「うわーん、イシルさんのバカ――!!」


イシルに抱えられて、迦寓屋(かぐや)に強制送還されているところだった。


「バカは貴女です(怒)」





挿絵(By みてみん)










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